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2007.01.25

菱田春草の雀に鴉

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東近美の企画展は当分パスするつもりなので、楽しみはもっぱらお馴染みの平常展。昨年末から、ここも平常展は何度でも無料となる1000円のパスポート券を売り出したので、これからは格安で名品を楽しむことが出来る。これは有難い。

今回(3/4まで)の目玉は40mもある横山大観の“生々流転”が全部みられること。人気の絵なので例年でてくるが、いつも前期と後期に分けて展示されていた。そして、プラスαが豪華。“或る日の太平洋”や“南溟の夜”などここが所蔵する大観の名品をずらっと揃えたという感じである。が、“生々流転”(拙ブログ05/11/26)をはじめこれらの絵はこれまで何度もみたので、最後にさっとみるだけにした。

時間をかけてみたのは小林古径の大作、“機織”、岸田劉生の“五福祥集”、松岡映丘の“屋島の義経”、川端龍子の“金閣炎上”(06/1/13)、中村正義の“源平海戦絵巻・第一図”、そして上の菱田春草の“雀に鴉”など。このなかで、はじめての絵は“屋島の義経”。この義経と安田靫彦が“黄瀬川陣”で描いた義経とは随分感じがちがう。頼朝の前でひざまずく顔がきりりと引き締まった凛々しい義経に対し、屋島の義経は顔がふっくらしており、その立ち姿は美少年のイメージというよりは百戦練磨の実力武士といった風。顔の描写には違和感があるものの、松岡映丘の兜や鎧の鮮やかな色使いや精緻な紋様描写は見事である。

春草の“雀に鴉”を観るのは二度目。04年10月、はじめて対面したときの感動が蘇ってくる。鴉が一羽、雀が5羽しか出てこない右隻より、上の沢山の雀が枝にとまっている左隻のほうが観てて楽しい。今はこういう光景をみる機会はほとんどないが、小さい頃みた雀の大群はこんな風に小枝にとまってしばし体を休めていた。春草は小さい生きものに対する愛情が細やかで、枝と枝の間の余白を充分とり、一羽々の雀が美しく映るように描いている。

この絵を見るたびに思い出す絵がある。それは下の長澤芦雪が描いた“花鳥虫獣図”(千葉市美術館)。4mちかくある巻物で、その中に雀が沢山出てくる。昨年、京都と奈良で2回みたが、奈良県美の“応挙と芦雪展”に出てたのは子犬が描かれた場面で、残念ながら雀には会えなかった。こちらの雀はまるまるしてとても可愛らしい。花鳥画を得意とする画家はごまんといるが、雀描きの名手は芦雪と春草。芦雪が描く雀は元気がよく可愛い。そして、春草の絵に登場する雀は美しく、ときには寂寥感を漂わせている。

雀は鳥の中では最も身近な存在で羽の色も綺麗ではないのに、これほど観る者をいい気持ちにさせてくれるのは芦雪と春草の心根が優しく、愛情に満ちているからだろう。今回の平常展も○だった。

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コメント

おや、いづつやさん、3/30からの「愛光」もパスですか?
僕的には池袋モンパルナスという切り口もうれしいです。
練馬区立美術館に愛光の図録を売っていていつぞやそれを求めたこともありました。
愛光の愛がうまく変換できません、ご容赦を。

投稿: oki | 2007.01.26 22:16

to okiさん
靉光の作品は代表作をここでいつもみていますし、
昔広島で回顧展をみましたから、今回はパスです。
で、まだ発表してませんが、後半の企画展に期待
してます。

投稿: いづつや | 2007.01.27 07:49

私も金曜日に常設展を観たので、春草のこの屏風も観ました
いいですね~
スズメも可愛いけれど、「そうそう、柳の芽の出る前の感じってこう感じできれいなんだよな~」ってうっとりしました

他に徳岡神泉の絵が2点観られて幸せでした 
ここの所蔵品は、本当に良いものいっぱいですね 

投稿: えみ丸 | 2007.01.28 14:36

to えみ丸さん
春草の雀の絵はしみじみいいなと思います。1羽だけとか
2、3羽で描かれることが多いですが、この絵は例外的
に賑やかな雀になってます。

投稿: いづつや | 2007.01.28 20:45

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