アルフォンス・ミュシャ展
日本橋高島屋で行われている“アルフォンス・ミュシャ展”(1/23まで)をみた。
ミュシャの絵はリトグラフやポスターなので、浮世絵のように同じ作品が何点もある。
05年1月、東京都美術館であった大規模なミュシャ展を観たから、同じものがあることが予想される今回の展覧会はパスしてもいいのだが、ファンの心の中というのは特殊で少しでもまだ観てない作品が含まれていれば、それだけでも観たくなるのである。
今回はチェコのモラヴィアギャラリーとプラハ工芸美術館(ともに国立)が所蔵する作品が165点でている(プラハ国立美術館にあるミュシャ作品は拙ブログ04/12/5)。東京都美のとき飾ってあった金メッキのブロンズ胸像やペンダントなどの宝飾品はなく、絵画のみ。予想した通り、前回見た劇場ポスターや工業製品ポスターが次から次とでてくる。でも、はじめてみるのも結構あるので、満足の高さは変わらない。
女優ベルナールが主演した舞台のポスターが全部ある。出世作の“ジスモンダ”、“椿姫”、“ロレンザッチオ”、“サマリアの女”,“トスカ”、“メディア”、“ハムレット”。縦2mもある細長ポスターは豪華に描かれた人物とそのまわりの様式的な紋様や花々で装飾性豊かに構成されている。“トスカ”の背景に埋め尽くされた蛇を思わせる鶴の首がとても印象的だった。ミュシャがアール・ヌーヴォーの寵児としてパリで一気にブレイクしたことはこれらの華のあるポスターをみると容易に理解できる。
ミュシャが描く女性は正面向きより横顔の方がより美しさを感じる。“黄道十二宮”(拙ブログ05/1/29)とともに大のお気に入りは右の“羽根を持つ女性”。異常に長くアラベスクのように様式化された髪をもつ女性が多いなか、この女性は普通の髪形をしており、横顔の美しさに見蕩れてしまう。
製品やイベントのポスターもいろいろある。自転車、シャンペン、リキュール、ビール、ビスケット、前回もあった煙草(銘柄JOB)。イベントではパリ万博のオーストリア館とかセントルイス万博のポスターにもミュシャ様式(拙ブログ05/2/12)が使われている。
今回の収穫の一つはミュシャが関わった装飾芸術に使われたデザインをまとめた“装飾資料集”。いわゆるデザイン帖だが、とくに興味深かったのが植物や花の文様。連続するフォルムと淡い色調の色使いが素晴らしく、夢中になってみた。祖国モラヴィアへ帰って以降制作された作品で魅せられたのは花の鮮やかな赤と女性の眼が忘れられない“モラヴィア教師合唱団”。また、“ロシア復興”や“南西モラヴィア挙国一致宝くじ”も胸にズキンとくる。
2回も回顧展をみたから、ミュシャは当分お休みできる。
<展覧会プレビューの更新>
下記の展覧会を追加した。“パリへー洋画家たちの夢展”は東芸大の創立120周年を記念する特別展。
2/17~3/25 加山又造展 茨城県近代美術館
4/19~6/10 パリへー洋画家たちの夢展 東芸大美
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