« カラヴァッジョ vs レンブラント | トップページ | オルセー美術館展 そのニ »

2007.01.29

オルセー美術館展 その一

674
675
待望の“オルセー美術館展”(1/27~4/8、東京都美術館)をみてきた。初日の10時なのにもう作品の前はゆっくりでないと進めない。日本には印象派の好きな人が沢山いるから、これくらいの入場者は当たり前かもしれないが、今回はとくにいい絵が揃っていることもあり、混雑しているのだろう。

99年横浜美術館であった“セザンヌ展”にはオルセーから超一級の“カード遊びをする人々”や“りんごとオレンジ”がやってきてわれわれを楽しませてくれたが、今回のオルセー展はこれを上回る質の高さ。セザンヌの“サンク=ヴィクトワール山”をはじめ、マネ、モネ、ゴッホ、ゴーギャン、スーラらの美術本や館の図録に載っている代表的名画がずらっとあるのだからたまらない。05年10月の“プーシキン美術館展”のときと同じくらい感動した。

一番のお目当てはマネの“すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ”と上のゴッホの“アルルのゴッホの寝室”。近代の女性画で誰の絵が好きかと問われると、“ルノワール!”とすぐ答えるが、そのあと間をおかず“マネも同じくらい好き!”をつけ加えることにしている。この美人のモリゾを描いた作品はサン・ラザール駅を背景に女性と女の子を描いた“鉄道”(ワシントンナショナルギャラリー)、パリの有名なナイトクラブで働く女給を画面真ん中にどんと配する“フォリー=ベルジェールの酒場”(ロンドン、コートールドコレクション)とともにMyマネ女性画ベスト3の絵。色は顔の肌色と帽子と服の黒だけだが、その黒が左から光があたる美形の顔をより引きたてている。パリに行かなくてこの名画が観られるのだから、最高に嬉しい。

そして、大好きなゴッホの“アルルの寝室”も目の前にある。この絵は思い出深い。絵自体に大感激したが、購入した図録の画像の色が実際の色をよく写していたので、それこそ紙に穴があくくらい見続けた。ベッドや椅子には影が無く、平面的に描かれている。この絵で目を奪われるのはなんといってもベッドや壁の明るい黄色や青色。床の手前から窓際にむかって引かれたうす紫の細長い色面はところどころ塗料がはげて地が見える。この質感が実にいい。

アルルで最初に描いた“寝室”は現在、アムステルダムのゴッホ美術館にある。オルセーにあるのはこの絵のレプリカ。画家が自分の描いた絵を模写したのをレプリカという。ゴッホはこれを2点制作し、シカゴ美術館とオルセーが所蔵している。オルセーの“寝室”はもともと日本の松方コレクションの一枚だった。第二次世界大戦で日本は負けたので、フランスがパリにあったこの絵を手に入れた。戦後の交渉でルノワールの“アルジェリア風のパリの女たち”とゴッホの“寝室”はセットで返還を要求したが、“寝室”はゴッホの作品が少ないという理由で却下されてしまった。フランスはこの“寝室”は絶対手放したくなかったのだろう。

下の絵ははじめて見るポン・タヴァン派の旗手、ベルナールの“日傘を持つブルターニュの女たち”。モザイク画みたいに画面を水平あるいは垂直に分割したり、緩やかな丸い面に分け、女や木々、地面を明るい緑、青、黄色で彩色している。自然を忠実に模写しようとする印象派に対抗して、ゴーギャンやベルナールたちが唱えた新しい表現方法が総合主義。自分が感じたものを単純かつ平板な形にし、輪郭線をとり強烈な色で装飾的に描いた。先駆的な表現主義による絵画制作である。

ゴッホの“寝室”の隣にある総合主義の手法で描いた“アルルのダンスホール”は一瞬、ベルナールの絵ではないかと錯覚する。ゴッホ、ベルナールの作品に大満足であった。

|

« カラヴァッジョ vs レンブラント | トップページ | オルセー美術館展 そのニ »

コメント

こんにちは。
ゴッホの寝室、ひょっとしたら西洋美術館の所蔵だったかも
しれないのですね。
美術品の運命って不思議です。
それにしても、名画中の名画ばかりで、充実した展覧会ですね。

投稿: 一村雨 | 2007.01.31 07:23

to 一村雨さん
ゴッホの“寝室”が日本に戻ってこなかったのはかえす
がえすも残念ですね。ぞっこん惚れてるこの絵が東京で
見られるのですから、最高の気分です。

ゴッホ美術館にある最初に描いたのと比較すると、こち
らの方が色がすこし明るいですね。そして、床の質感が
よくでてるのに驚きます。

ルノワールのいい女性画、“ムーラン・ド・ラ・ギャレ
ットの舞踏会”や“ブランコ”、“都会のダンス、田舎
のダンス”はなかなか出てきませんね。次回のオルセー展
ではどれかひとつでも持ってきてくれると嬉しいのですが。

投稿: いづつや | 2007.01.31 17:25

いづつやさん、ご無沙汰しております。
以前オルセー美術館で買った日本語版カタログを
ほぼ網羅しているような内容で大変満足しました。
モロー好きとしましては「ガラテア」が見れたことが
大変印象深く残っています。

ゴッホの作品は自分の記事ではあまり良いことを書けませんでした。
(すみません。)多分、その時の精神状態と上手くシンクロしないと
鑑賞できないのかもしれません。
難しいものです…

投稿: アイレ | 2007.02.11 22:14

to アイレさん
ご無沙汰してます。お元気でしょうか。オルセーは印象派、
象徴派の殿堂ですね。マネ、ゴッホ、ゴーギャン、モリゾ
らの代表作をポンポンとだしてくれるのですから有難い
です。

そして、モローの“ガラテア”も絵の中に吸い込まれそう
になりますね。長い金髪、きらきら輝く装飾飾りにうっ
とりです。ゴッホの“アルルの寝室”はゴッホ美術館の
より明るいです。どちらか差し上げると言われたら躊躇なく、
オルセーのほうをいただきます。

投稿: いづつや | 2007.02.11 23:46

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: オルセー美術館展 その一:

» オルセー美術館展−1 [青色通信]
オルセー美術館展 19世紀 芸術家たちの楽園2月3日 東京都美術館(〜4月8日)  オルセー美術館展に行ってきました。東京展が開催して一週間しか経っていなかったのに、既に混雑しておりました。(果たして会期末にはどうなることやら…) 今回は展覧....... [続きを読む]

受信: 2007.02.11 22:05

« カラヴァッジョ vs レンブラント | トップページ | オルセー美術館展 そのニ »