宮川長春の風俗図巻
1/16からいくつかのコーナーで展示替えがあった東博の平常展にいい作品がでている。
更新したパスポート券で平常展を昨年以上にフルにみようと意気込んでいるが、2階と1階にある絵画はセクション毎に展示の期間が異なるため、HPでしっかり展示期間をみていないと貴重な名画をうっかり見逃すことにもなる。
正面向かって右側の展示室にある仏画や水墨画、絵巻などは1/16から2/25まで、そして左側の浮世絵は回転が速く、展示は1/16から2/12まで。
室町時代に制作された“浜松図屏風”(重文)は2年ぶりの登場。この屏風には見所が一杯ある。名前を“四季花鳥図”と変えてもいいほど画面の下半分に小鳥が沢山描かれている。数えてはいないが50羽以上いるかもしれない。しかも羽根を広げて飛んでいる鳥が多く、また首のあたりが真っ赤な鳥がいるのでとても賑やかで動感がある。なんだか動物園の大きな鳥かごのなかにいるよう。上の方には洲浜で網を引く漁師や狩装束の武士がいるが、ここでの主役は四季折々の草花や緑の松の木、水辺に遊ぶ鳥たち。日本画のなかでは一番惹かれる鳥の絵である。
この屏風の隣が狩野元信の大作、“太公望・文王図”(重文)。これはもと大仙院方丈の障壁画の一部で、いくつかある障壁画を断続的に展示している。比較的色は良く残っているのに、この絵のコンディションはあまり良くない。
浮世絵のコーナーは名作が多い。目を惹くのが北斎の“富嶽三十六景・尾州不二見原”にみられる大きな桶枠がでてくる“新版大道図案 本所”と焼けた鉄棒を鍛造している“同 佃島”。広重も2点いいのがある。大胆な構図が魅力の“名所江戸百景・亀戸梅屋敷”と梅の木と鳥の配置が絶妙な“梅に小鳥”。
今回夢中になって観たのがある。それは肉筆画専門の絵師、宮川長春が描いた右の“風俗図巻”。2年くらい前にでた。色が鮮やかなのと、衣装の紋様が実に精緻に描かれているので画面に釘付けになる。また、黒髪や着物の輪郭線に金泥を使い、女性を一層華やかにしている。右は大名屋敷に呼ばれた女舞の一行が御簾の中から見物する奥方の前で“傘踊り”を披露しているところ。
うぐいす色の傘をぐるぐる回す芸人の肘にみえる飾りの赤い布が小刻みに揺れ、芸人のリズミカルな動作が伝わってくる。後ろで三味線を弾いてる女たちと前の踊り手の配置は英一蝶の“布晒舞図”(遠山記念館、拙ブログ06/12/1)とそっくり。“布晒舞図”とともにMy好きな風俗画に入れているこの絵と再会できたのは無上の喜び。今回の浮世絵コーナーは特別良かったような気がする。
| 固定リンク | コメント (2) | トラックバック (0)
最近のコメント