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2006.12.15

ビル・ヴィオラ はつゆめ展

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現在、森美術館で行われている“ビル・ヴィオラ はつゆめ展”(07/1/8まで)は大変刺激的で面白かった。10/14に開幕したのだから、もっと早めに見とけばよかったと後悔している。この展覧会を1年くらい前に知り、今年後半の鑑賞リストに入れているのに、現代アートなので、“本当に心に響く作品だろうか?”といつもの心配が頭のなかを支配し、ずるずると鑑賞のタイミングが延びてしまった。

ビル・ヴィオラ(1951、NY生まれ)はヴィデオ・アートの第一人者だという。ヴィデオ・インスタレーションを見た体験が少なく、基準作の情報がないが、今回の作品がトップレベルのものであることは直感できる。目の前の映像、サウンドから作家の主張するメッセージや深い精神性が割合スムーズに理解でき、作品の中にすっと入っていけるところがいい。出品作は15点。スーパー衝撃度の作品が3点あり、作家の高い才能があますところなく発揮されている。“クロッシング”(1996、上と下の画像)、“ミレニアムの5天使”(2001)、“ラフト/漂流”(2004)。

会場入ってすぐのところにある“クロッシンブ”はなかなかよくできた作品。中央に大きな両面スクリーンがあり、正面には男が炎につつまれる場面(上下画像の左)、裏面では男の頭上から水が落ち、次第に滝に打たれるような感じになる場面(右)が映しだされる。映像時間は16分くらい。火が燃えひろがり、オレンジ色の炎がだんだん大きくなるのと、水がゴーゴーと音を立てて落ちる滝に変化するタイミングをシンクロさせているところが作品の完成度の高さを表している。最後には男がいなくなり、すざましい大音響の洪水になるのを見てると、千住博の“ウォーターフォール”(山種美術館、拙ブログ12/3)がダブってきた。二つの作品が美しくコラボレーションしているようである。

“ミレニアムの5天使”にも深く感動する。ここでは、5人の天使(実は服を着たままの男)が水面から上昇する場面をみるのにちょっと工夫がいる。暗い展示空間では、全部のスクリーンが見渡せる中央にポジションをとるのがいい。というのも、よく画面を見ていないと天使の中には水中から突然現れ、そのまますぐ消えてしまうのがいるからである。これを見逃すとまた10分くらい待つことになる。はじめ、入って一番近くにある、頭を下にして足のほうから上昇していく天使のところばかりを見ていたら、後ろのほうで大きな音がし、振り返ってみるともう天使は足だけで体の大部分は画面から消えていた。効率的に天使を見るには、例えていうなら、“モグラたたき”ゲームの身のこなしが必要。

天使が飛び出すときの格好が皆異なるのが面白い。水面に泡ができて飛び出しの予兆があったり、いきなり爆発音とともに浮かび上がってきたりする。ハッとするのがダリ作、“サン・ファン・デ・ラ・クルスのキリスト”(1951、グラスゴー美術館)の変わった角度で描かれたキリストを連想させる天使。神秘的な美しさが漂う映像空間はこれぞヴィデオ・アートの真髄といった感じである。見てのお楽しみ。

2000年以降に制作された“悲しみ”、“驚き”、“喜び”、“怒り”、“怖さ”といった人間の感情をテーマにした映像が興味深い。複数の男女をモデルに使い、感情の変化が現れる顔の表情や体の動きを高速度撮影し、これを低速度で映し出している。一見すると肖像画ではないかと間違えそうになる。よくみると顔の皮膚が微妙に動いたり、まばたきが見える。よく生き物の生態観察やスポーツ競技の再現シーンでこういう映像をみることはあるがアートとしてみるのははじめて。とても新鮮である。が、辛抱強く見続けなければならないから、見終わるのに時間がかかる。

気に入ったのは、“オブザーヴァンス/見つめる”(02年)。列の前には悲惨な死に方をした人が横たわっているのだろうか?立ち止まっては悲しい顔をし、隣の人と視線を交わしたりしてまた、後ろの方へ戻っていく。自分もこの列の中に入るときっと同じような感情になるのではないかと思わせる作品である。

ビル・ヴィオラのヴィデオ・インスタレーションに200%KOされた。今年は束芋に続き、現代アートのいい作家に遭遇した。今後のヴィオラ作品に注目したい。

ヴィオラが1980年代、日本に1年半いたときに制作した“はつゆめ”(1981、56分)は会場では見られなかったが、東京オペラシティタワー4階のNTTインターコミュニケーションセンターでも12/17、12/24に上映されるというから、行ってみたくなった。

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コメント

こんにちは。

これいいですよね!
二度観に行きました。

唯一のモノクロの「手」が映された映像が
今回はなぜだか惹かれるものありました。

投稿: Tak | 2006.12.24 14:52

to Takさん
こんばんは。こんなヴィデオアートなら新作が出るたびに,
見たくなりますね。感動の展覧会ベスト10!にも選び
ました。私ももう一回いくつもりです。

投稿: いづつや | 2006.12.24 19:41

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