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2006.12.01

英一蝶の布晒舞図

569埼玉県の桶川市と川越市の中間あたりにある遠山記念館を訪問した。

現在ここで行われている“江戸絵画へのいざない展”(12/20まで)に出品されている右の“布晒舞図”(英一蝶)を見るためである。追っかけていた絵なので、HPを定点観測してきたが、やっと見る機会に恵まれた。

はじめての美術館だから、最初は勝手がつかめなかったが、一階のあまり広くない左右二つの部屋に全部で25点展示してあった。お目当ての絵以外はどうかな?という気持ちが心の隅にあったが、すぐにこれが過小評価だったことに気がついた。ビッグネームの絵がいくつもある。で、目に力を入れなおしてこれらと向き合った。

琳派は3点ある。宗達の大きな虎が描かれた“大蟲図”、光琳の“虎渓三笑図”、そして画集で見たことのある鈴木其一の“業平東下り図”。掛け軸“業平東下り図”が素晴らしい。本画の回りにも楓やつくし、蕨といった季節の草花が装飾性豊かに描かれている。以前、子供の守一が模写した絵(細見美)をみたことがあるが、本物が目の前にあった。業平が乗る馬の頭を右にひねったポーズが画面に立体感を与え、業平と横のいる子供が着ている衣装の色や綺麗な柄や上に描かれた富士の山は平安王朝の雅な雰囲気をたっぷり表現している。

江戸狩野派の絵師、狩野晴川院養信の“源氏物語子の日図”にも魅せられる。江戸後期の制作なので、色がよく残っていて、金地に描かれる源氏雲や松の濃い緑が貴族や宮、女房が集う典雅な宮廷内をいっそう引立てている。

英一蝶の“布晒舞図”(重文)は中くらいの大きさの掛け軸。拙ブログ05/7/15で紹介した“雨宿図屏風”とは対照的に華やかな踊りの場面が描かれている。見所は長い晒布が空中でリズミカルにくねくね曲がっているところ。これをみると蛇が急いで逃げるとき、胴体をくねくね曲げるのを思い出す。新体操でリボンを操る選手の体は筋肉質だが、この踊り子は手は細いが体形はぽちゃぽちゃ系。

右手にもった扇子を高くあげ、左手で白い布を後ろのお囃子の掛け声と三味線や鼓の音にあわせて、調子よく振り廻している。鼓を叩く男は身を前にのり出さんばかりで、すぐ後ろの男も口を大きく開けて、声を出している。この絵は一蝶が三宅島に流されているときに描かれた。芸は身を助けるとはよく言ったもので、江戸で一蝶の風俗画を好んだ支援者たちが画材を送り、絵を注文したようだ。

ここの江戸絵画コレクションのレベルは相当高い。横浜から電車やバスを乗り継いで3時間弱かかったが、念願の絵に会え、またほかにもいい絵があったから、大満足の美術館訪問だった。

なお、英一蝶が島流し中に制作した絵、“四季日待図巻”(重文)が出光美所蔵名品展Ⅱの後期(12/8~12/24)に登場するのでお見逃しなく。これは一度見たことがあるが、楽しい絵。そして、来年3/30にオープンする新サントリー美術館の開館記念展には所蔵する“吉原風俗図巻”(これも島で制作)が展示されるような気がする。こちらはまだなので、期待したい。

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コメント

横浜から遠山美術館、あそこは駅からも不便ですから遠かったでしょうね 
私はお庭やお雛様しか観たことありませんでしたが、車で1時間ほどの距離ですから、勿体ない何ことしていたのかしら・・ 行ってみようと思います 

投稿: えみ丸 | 2006.12.02 09:00

to えみ丸さん
この美術館の所蔵品で本によく載ってる有名な作品は、
今回展示されている“布晒舞図”、“業平東下り図”
と喜多川歌麿の肉筆画、“夏姿美人図”です。

英一蝶の“布晒舞図”は昨年4月、“美の巨人たち”
に取り上げられました。歌麿の“夏姿美人図”も期待
して事前に電話したのですが、今回は出展しないと
の返事でした。

これは日本にある歌麿の肉筆画では出光美の“更衣美
人図”(重文、現在開催中の名品展に12/3まで展示)、
千葉市美の“納涼美人図”、“立姿美人図”ととも
に優品として名高い絵です。

展示数は25と少ないですが、円山応挙、呉春、渡辺
崋山などもあり、見ごたえがあります。車で1時間
なら、是非ご覧になって下さい。きっと満足されると
思います。

投稿: いづつや | 2006.12.02 18:15

今日行って来ました
いづつやさんの記事がなければ行かなかった展覧会ですが、観られて嬉しいものでした ありがとうございます
近場の美術館をもっと大切にして、ここももっとマメに訪問したいと思います
桐生の大川美術館も1時間チョットで行けるのになかなか行かないので、来週にでも行こうと思っています

投稿: えみ丸 | 2006.12.12 18:37

to えみ丸さん
満足のいく絵があってよかったですね。自分の生活圏
のなかで身近に感じられる美術館があるというのは
嬉しいことですよね。

私の場合、鎌倉へはクルマで30分くらいで行けるも
のですから、棟方志功板画館、山口蓬春記念館、鏑木
清方記念館へ出かけるのが大きな楽しみになってます。

歌麿の“夏姿美人図”が展示されたとき、また遠山
記念館を訪問しようと思います。そのときは隣の方も
連れてクルマで行きます。

投稿: いづつや | 2006.12.12 22:48

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受信: 2006.12.12 17:21

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