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2006.12.19

松田権六の世界展

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東近美工芸館で本日から“人間国宝 松田権六の世界展”がはじまった(来年2/25まで)。今年は松田権六の生誕110年にあたるため、大回顧展が出身地の石川県(金沢の県立美)、東近美、熱海のMOAで開催されることになった。

松田権六(1896~1986)は近代漆芸の大巨匠である。権六(ごんろく)という名前からして、貫禄があり、人間としてすごく大きな作家という印象をあたえる。今回、主要な代表作はほとんど出品されている。過去あった工芸関連の展覧会などで本や美術館の図録に載っている作品は大方鑑賞したので、目の前の作品一つ々に仰天ということがないが、最高の技と感性によって生み出された名品の数々に囲まれるとさすがに体がほてってくる。究極の漆芸美ともいえる“松田権六の世界”に酔いしれた。

感じ入った点がいくつかある。その一つは琳派風の紋様。その代表的な作品が上の“蓬莱之棚”。8年前、所蔵する石川県立美術館で観て以来、3度目の対面である。03年、東芸大美で行われた“工芸の世紀展”にもでていた。棚の扉を全開した状態で展示してあるので、竹の網代編の地に蒔絵で描かれた鶴を何羽も一度に見ることができる。口ばしや羽の金を蒔きつけたところと目の周りの赤、そして首の白にぐっと惹きつけられる。そして背景の光琳模様をヒントにしながら、さらに繊細かつ流動的に描写した流水文が見事。この流水文は“流水桜文蒔絵神代欅棗”や“漆の花生”でも観られる。

松田権六の作品に魅力を感じるのは蒔絵や平文の神業的な技術だけでなく、モティーフの表現に動感があるから。東芸大の卒業制作である“草花鳥獣文小手箱”(東芸大美)では、鹿やうさぎは獅子から大慌てで逃げようとして、前足と後ろ足が水平になるくらいに跳びはねている。飛ぶことに慣れている雉だって体をそり返して上昇中。丸い手箱にこのダイナミックなフォルムがぴたっと合っているのが素晴らしい。真ん中の“赤とんぼ蒔絵箱”(京近美)でも水辺に自生する葦の花は風に揺ら揺らうごいてる感じで、その立体的な空間のなかを赤とんぼが軽快に飛んでいる。玉虫貝で表された水面の幻想的な雰囲気に誘われて、しばし見蕩れていた。

螺鈿のうすピンクやうす青の輝きに魅了されるのが下の“蒔絵螺鈿有識文飾箱”(東近美)。赤とんぼの羽根の螺鈿装飾もいいが、螺鈿がある作品の中で、輝きの総量が一番大きいのがこの飾箱。正倉院宝物にある有識文を参考にして描かれた花模様はライティングの演出で美しく輝いている。松田権六は中尊寺金色堂(拙ブログ8/13)の保存修理で螺鈿の指導をしたらしい。それであんな立派な螺鈿装飾が出来上がったのだろう。会場には金色堂のパネルが飾ってあった。

今回の収穫は日本にある漆芸の名品が沢山観れたこと。松田権六の作品だけでなく、師匠や後継者などの作品が一緒に展示してるのだから有難い。MOAで観たことのある尾形光琳の螺鈿硯箱まである。見所いっぱいの展覧会に200%満足した。

なお、東近美での展示が終了すると、MOA(07/3/10~4/9)に巡回する。

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コメント

素晴らしいですね。
特に私は2枚目物がすきかもしれません。
いつもながらのコメントですが、実物を見てみたいです。

投稿: seedsbook | 2006.12.20 02:50

to seedsbookさん
真ん中の“赤とんぼ蒔絵箱”は松田権六の代表作と
して工芸展によく登場する名品です。対象の動きの
ある表現、うすピンクが美しいとんぼの羽の螺鈿装飾、
そして青粉の散らしと見所満載です。

漆芸というのはミクロに美が宿ってます。今回の回顧
展でこれを再認識しました。

投稿: いづつや | 2006.12.20 14:58

初日に行かれたのですか、ニアミスですね。
おっしゃられるように琳派的装飾が面白く、MOAの尾形光琳の作品も展示されていましたね。
僕は蒔絵の世界に五十嵐派なんてものが存在すると知らなかったので目からうろこでした。
悔しいのは普通にチケットを求めた人は近代美術館の常設も観られるのに招待券だと観られないこと。
悔しいから会場ビデオをずっと見ていましたが、この人が鶉の卵を使ったり、自宅の庭に鳥獣を飼育して観察していたとか面白かったです。

投稿: oki | 2006.12.20 21:52

to okiさん
私は午前中、一時間半くらい見てました。松田権六の
魅力は図柄が花にしろ、鳥などの生き物にしろ生き
生きとして動きがあることですね。その造形がまた、
直方体の飾箱とか棚とかの形にうまく合ってるのです
から、すごいです。

漆芸界では神様のような人ですね。今、余韻に浸って
ます。

投稿: いづつや | 2006.12.20 23:17

NHKの夢の美術館で蓬莱之棚がとりあげられていて
あわてて見に行きました。
戦時中にこんなすばらしい工芸品が作られていたなんて
驚きです。
おっしゃられるとおり、美がミクロに宿っていますね。
感激しました。

投稿: 一村雨 | 2007.02.23 08:22

to 一村雨さん
名品の数々に感動しますね。と同時に松田権六の底知
れぬ才能と漆芸に対する熱い思いに心打たれます。こう
いう大回顧展にめぐり会えたことが嬉しくてたまりません。
これから螺鈿などの漆芸作品がぐっと近くなりそうです。

投稿: いづつや | 2007.02.23 17:52

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