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2006.12.09

揺れる近代展の岸田劉生

581東近美の“揺れる近代展~日本画と洋画のはざまに”は12/5から後期になり(12/24まで)、一部作品が替わったので、また出かけた。

お目当ては狩野芳崖の“不動明王”(重文、東芸大美蔵)。ド派手な色彩に圧倒された“仁王捉鬼”(拙ブログ
11/19)と較べ、1年あとに制作された“不動明王”は伝統的な仏画の基準作と見た目はあまりかわらない。

大きな目をつりあげ、牙をみせ口をつむぐ面構えをじっとみていると、強烈な威厳を感じ、容易には近づけない。が、画面構成や体の細部の表現には洋画の影響もみられる。不動明王が発する光に強弱をつけているため、暗いはずの洞窟が立体的に見え、渦巻状に逆立っているうす青の頭の髪には細い白線が細密に引かれている。また、右手にもっている剣がサーベルみたいなところも面白い。

念願の絵を目の中に入れたので、あとは後期にでてきた絵を中心に気楽にみていった。そのなかで感激度が一時的に大きく上がったのをいくつかあげると。小茂田青樹の“出雲江角港”、萬鉄五郎の水墨画“橋下遠望図”、岸田劉生の右の日本画“裸の麗子”、小杉放菴の“椿”、川端龍子の“佳人好在”。“出雲江角港”と“椿”はここの平常展によく登場する人気の高い作品で、“椿”は館の図録にも掲載されている。

一時松江に住んでいた小茂田の描いた“出雲江角港”はいつも感じ入る。広島にいたころ、松江や出雲へは何度も行ったのでこの絵が描く情景を実感できる。感心するのが静かな港町の雰囲気がしみじみ伝わってくる画面構成。小茂田の細密描写の技術は卓越しており、家々の赤茶色の屋根瓦のリアルな質感にも驚かされる。そして、赤茶色の瓦と山に接する海の細い緑面の対比が見事。

岸田劉生の“裸の麗子”(画像の右)に心が和む。この絵は3年前にも見た。岸田劉生はデュラーら北方ルネサンス画家の影響をうけて、最初の麗子像を描いたあと、今度は中国画の“寒山捨得図”や初期肉筆浮世絵に霊感を得て、ちょっと不気味な笑いを見せる麗子像を描く。画風をガラッと変えるのは才能豊かな画家の証。通期で展示されている笑う“野童女”同様、日本画の“裸の麗子”でも、ひょこっと立つ子犬と対話している麗子の口元は緩んでいる。麗子の頭は胸から下と較べると異常に大きいが、顔立ちは大人びて観音さまのように美しい。

ギョッとする展覧会のネーミングに引寄せられるのか、会場には結構人がいる。日本画家、洋画家のビッグネームの作品も粒が揃っているので、じっくり鑑賞すると収穫の多い展覧会ではなかろうか。

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