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2006.12.13

東京都現代美術館の大竹伸朗展

585現代アーティスト、大竹伸朗(1955年、東京都生まれ)の大回顧展(東京都現代美術館、12/24まで)をみた。

作家の名前だけは頭の隅っこにあったが、作品については11月末の新日曜美術館をみるまで全く知らなかった。番組で大竹作品をみて、俄然興味がわき、強い磁力に吸い込まれるようにMOTへ足を運んだ。

展覧会タイトルにある“全景”の意味は膨大な作品群をみると納得する。なにしろ2000点の作品が3つの展示場にびっちり飾られているのだからすごい。現代アーティストに詳しくないのでわからないが、これほどのビックな作家なのに、これがはじめての大回顧展らしい。29年間毎日つくり続けてきたという64冊のスクラップブック、小さい頃描いた絵、北海道の別海にいた時の写真、ドローイング、本格的な創作活動に入ってから現代までに制作されたコラージュ、立体、大作絵画など多彩な作品を見ていくうちに、これはすごいアーティストに遭遇したなとだんだん興奮してきた。

作域が広いのに驚かされる。ヨーロッパやアメリカの作家、10人くらいの作風を全部吸収して、自分独自のスタイルをつくりあげているという感じである。道端に落ちていた広告や新聞、雑誌の写真、CD、などなどを画材にしたコラージュ作品が一番多い(右の画像の下はその一つ)。大竹はロックバンドのつくっていたのでコラージュと音楽が合体になった面白いのもある。“ゴミ男”の前ではスピーカーから中東や北アフリカの匂いのするメロディーが繰り返し流れてくる。

デュシャンの作品に大きな刺激をうけた大竹にとってコラージュは創造の源かもしれない。日本人作家がつくるコラージュだなと思うのは、貼る材料の量が多くて、しつこくかつ精緻に造形していること。これほど大量の情報、記号を消化し、操作できるからには、大竹の脳は規格外の大きなキャパシティをもっているのだろう。

絵画ではいろんな画家のイメージが重なってくる。しかも、なんでも高いレベルで描けるのがすごい。“網膜”シリーズのようなムラがあったり周辺がぼけた抽象的なフォルムを特徴とする作品が多いが、アフリカの男女をきりりと骨太に表現した人物画もある。大竹が旅したヨーロッパ、アフリカ、アメリカの土地々の風景や空気が作品を通してストレートに伝わってくる。

黒白や緑一色の静寂感の漂うモノトーンの作品にグッと惹きつけられる一方、堂本尚郎のように色とフォルムが魅力的な抽象美を見せる絵や明るい赤、黄色といった色の組み合わせが素晴らしい“日本景”(右の画像の上左)にも心を揺さぶられる。東京、新潟、厳島、岡山など日本の町がでてくる“日本景”の色使いはジム・ダインやエルズワース・ケリーの絵とそっくり。

偶然できた形やムラ、にじみを多用する大竹だが、色彩感覚にも天賦の才能がある。カラリスト、大竹伸朗を強く感じさせる作品が地下2Fの大フロアに飾ってある。それはとてもハイな気持ちにさせてくれる縦10m、横17mの緞帳“北の空に浮かぶカタチ”(右の上右)。2000点もの作品をみると、普通なら最後は疲れて飽きてくるのだが、今回はインパクトのあるフォルム、日本画にような美しい線描、晴れやかな気分になる明るい色調など魅力溢れる作品の連続だったので疲れる暇がなかった。

大竹伸朗にすっかり嵌ってしまった。My好きな作家に即登録した。

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コメント

これまた僕は招待券で行きました。
いやー、すごいアーティストがいるものですね。
宇和島から自由の女神まであれこれ。
カタログは膨大な量になるのでまだできていませんでしたが、もって帰るだけでも大変なんじゃないかと。
ナイロビにもいった人ですね、桂田さんを思い出しました。
ところで新聞販売店にせっついて「松田権六の世界」チケットを入手。
いづつやさん、ご入用ならメールください!

投稿: oki | 2006.12.13 22:28

to okiさん
大竹伸朗に完璧にKOされました。隣の方も一緒だった
のですが、二人で“すごい、すごい!”を連発してました。
一枚アンリ・ルソー風の真ん中に鹿を描いたのがありまし
たね。描こうと思えばこんな絵まで描いちゃうのですから、
もうびっくりです。抽象よし、色彩感覚も抜群、素描もさら
さらですから、すごい才能です。

分厚い図録(送料込みで7500円)でしたが、一生の思
い出に注文しました。チケットはお気持ちだけ頂きます。
有難うございます。

投稿: いづつや | 2006.12.14 00:14

いづつやさん、こんばんは。
昨日行ってきました。
とんでもないアーティストにKOは、私も同じでした。
今も圧倒的数量の作品群にうなされている気がしています。
図録予約されたんですね。すごい!
ショップがとても混雑していたので、あっさり諦めました。
美術業界がきっとこれから彼をビッチリマークすることでしょうね。
クールダウンして、ゆっくり彼と付き合おうと思っています。
TBさせて頂きました。

投稿: あべまつ | 2006.12.24 22:04

to あべまつさん
作品の数の多さに驚きましたが、色彩感覚にも非凡なもの
を感じました。作品だけをみると外国人アーティストの
イメージですね。

でも、外国人はコラージュをあれほどびっちり丁寧につく
らないなと思いました。彼らのつくるのはもっと大雑把
にどんどんという感じですから、大竹のコラージュのしつ
こさが際立ちます。精緻な日本美術のエッセンスが充分
吸収されてるなという気がします

投稿: いづつや | 2006.12.25 13:29

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金曜日に行く予定だった、「全景」を、今日、何とか滑り込んできた。 がつ〜〜んとやられててしまった。こんなアーティストが日本にいたこと、今も精力的に創作活動を続けていること、あまりにも圧倒的な量とパワーに小さなこだわりに生きているのがばかばかしくなるのだった。... [続きを読む]

受信: 2006.12.24 21:58

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