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2006.12.02

戸方庵井上コレクション名品展

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板橋区立美術館で行われている“戸方庵井上コレクション名品展”(07/1/14まで)は期待値をはるかに上回る良質の展覧会だった。群馬県立近代美術館にはコレクター、井上房一郎氏(1898~1993)の蒐集した中国絵画、日本絵画の質の高い作品が230点(寄贈)があり、今回そのなかから69点が展示されている。

数年前、ある美術本に掲載されていた応挙の上の“青鸚哥図”(あおいんこず、部分)で、戸方庵コレクションの存在を知った。奈良であった“応挙・芦雪”でこの絵が見られるかなと期待していたが、これはなかった。後知恵だが、出品されなかったのは11/25からはじまった板橋区立美の展覧会と重なったためではないかと思う。この展覧会の作品についての情報がまったく無かったのだが、応挙の絵は出てくるものだと信じ、遠山美術館のあと、ここに立ち寄った。

果たして、お目当ての“青鸚哥図”はあった。有難い。口ばしと足の鮮やかな朱色、緑の羽根の細かい描写を夢中でみた。が、驚いたことにこの絵は目玉の一つに過ぎなかった!ほかにもいい絵が沢山ある。構成は中国画が11点、日本画が58点。入ってすぐの中国画のコーナーでは、牧谿の“芦雁図”や因陀羅の“芦葉達磨図”がある。“ええー、牧谿まで集めているの!” のっけからコレクションのすごさを見せつけられた感じである。その隣に銭永の“墨梅図”といういい絵があった。大阪の正木美術館に如拙の同名の名画があるが、画面中央、下から上にまっすぐのびる若枝や横に曲がる枝が梅という木の特徴とよくとらえているこの絵にも魅せられる。

日本画も名品ぞろい。唸ってしまうのが蛇足、雪村、海北友松の水墨山水画。墨の濃淡で雲海や霞のなかに浮かんでいるように一部しか描かれない山や木々、海はまさに中国山水画の世界。あれもこれもいいなと興奮状態でガラスケースの前を進んでいたとき、わあー!と思わず声が出そうになったのが真ん中の尾形乾山の“富士山図”と下の葛飾北斎の肉筆画、“鯉図”(部分)。大収穫の絵である。

乾山にこんな明快に美しい絵があったとは。頂上の白と裾野の緑の対比が素晴しい。右のほうに大きな松が3本立っているが、これがシュールな感じに見えないのは、多分この絵を茶碗の色絵装飾のように受け止めるからだろう。北斎の“鯉図”にも息を呑む。昨年あった北斎展にも同じように描かれた鯉の絵(拙ブログ05/11/17)があったから、鯉自体は新鮮ではないが、一匹の鯉が上にほうに向かって泳いでいるという構図にびっくりする。美術館もこの絵がお気に入りのようで、展覧会のポスターにこれを使っている。

ほかで足が止まるのは中村芳中の“梅図”、谷文晁のスケールの大きな風景画、“隅田川両岸図”、一度みたことのある白隠の“座頭渡橋図”、ユーモラスな仙厓の“万才図”。応挙の絵をみるために行ったのに、プラスαが二乗でついていた。こんなに腹の底から嬉しくなる展覧会も久しぶり。今、その余韻に浸っている。

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コメント

この絵図を拝見し、なんとか板橋まで行きたくなりました。
乾山は、陶器の絵付けじゃなく、普通に絵師としてもなかなかいい感じだったのでは?と画像を拝見する限りですが、そう思ってしまいました。乾山の絵付けは、定評がありますが、まだピンとこないのです。
板橋区立美術館、なかなかの凄腕学芸員がいらっしゃるのでしょうか?
企画力ありそうです。

投稿: あべまつ | 2006.12.07 22:12

to あべまつさん
板橋区立美術館には安村敏信という大物のキュレーター
(現館長)がおられます。江戸絵画、江戸狩野派の目利き
で、東博の狩野一信の“五百羅漢図”展示の仕掛け人です。

今回もいい企画展ですね。驚かれますよ。観てのお楽し
みです。

投稿: いづつや | 2006.12.09 01:06

狩野一信の五百羅漢に今年は本当に驚きました。
あの、一信を展示された館長さんなのですね。
しっかり板橋マークします。
お宝情報をありがとうございます。

投稿: あべまつ | 2006.12.09 21:55

to あべまつさん
04年10月に刊行された“別冊太陽 狩野派決定版”
(平凡社)のなかで、狩野一信のギョッとする絵を
紹介したのが安村館長です。私もこの本で狩野一信と
いう絵師を知りました。おそらく、安村さんが東博に
所蔵する“五百羅漢図”の公開を働きかけたのではな
いかと思ってます。

板橋区立美にも一信の“源平合戦図屏風”があり、
“これが板橋の狩野派だ展”に出たのですが、展示替え
で見逃しました(拙ブログ6/23)。いつか見てみたい
です。

投稿: いづつや | 2006.12.09 23:33

素晴らしいコレクションでした。
ここの館長のセンスは抜群ですね。
お気に入りは、白隠の《座頭渡橋図》でした。
人世はすべて盲目の橋渡り?

投稿: とら | 2006.12.18 21:45

to とらさん
こんばんは。群馬県近美へ足を運ばなくてこれほど質の
高い中国画、日本画が見れるのですから本当に有難い
ですね。お目当ては応挙の絵だったのですが、この絵の
印象が薄くなるくらい他の絵が輝いてました。

白隠の“座頭渡橋図”は私もはじめてみたとき、唸り
ました。凄い絵ですね。

投稿: いづつや | 2006.12.18 22:15

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 こちらは遠い。都営三田線の「高島平駅」よりバスということだが、至って不案内な土地。タクシーに乗った。でもこれが正解。結構な山坂がある。10分ぐらいで美術館に着く。こちらも立派といいたいが、まあ中ぐらいの建物。  しかし今回の展示品は凄い。コレクターの井上房一郎は群馬の経済界の重鎮で、集めた画をすべて創立時の群馬県立近代美術館に寄贈したり、群馬交響楽団をバックアップしたりした傑物である。  日本と中国の水墨画のコレクションとしては全国でも指折りの質の高い有名なもの。聞くところによると23... [続きを読む]

受信: 2006.12.18 20:51

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