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2006.12.31

美術館の企画展と平常展

612今年も多くの展覧会を見た。大回顧展、特別展示、海外の美術館からの里帰り展など美術館が行う展覧会もいろいろである。

今日は今年最後の記事なので、展覧会への思いや楽しみ方について、少し書いてみたい。

展覧会鑑賞の楽しみは旅行の楽しみと似ている。旅行には三つの楽しみがある。旅行する前に生ずる目的地に対する浮き浮き感、実際に旅行しているときの感動、そして旅行から帰ったあと、写真を眺めたり、撮影したビデオを再生して思い出に浸る楽しいひと時。

展覧会にも同じように開幕前のワクワクするような気持ちの高まり、名品の前に立ったときの喜び、そして図録の頁をめくり感動を再生産する時間と三つの楽しみがある。この心のムーブメントは質の高い絵が次から次と出てくる大展覧会のときも、東博や東近美、ブリジストン美などの平常展で定番の名品を観たときも同じように起こる。だから、感動をグロスでみると差はでてくるが、マージナルには企画展も平常展もさほど変わりない。

美術館が名品を沢山所蔵しておれば、それだけで多くの入場者を集められるが、日本の美術館でそのくらいのコレクションがあるところは数えるほどしかないから、どうしても企画展のほうに目がいってしまう。これはこれで仕方の無いことだが、時々“大きな美術館の平常展にもっと足を運べばいいのになあー、あの企画展よりこちらの方がいい絵が揃っているのに!”と思うことがある。例えば、東博の平常展に“写楽の大首絵”(全28点)が20点も展示されたのに、PRが足りないのか、沢山のひとが作品の前に群がっているということもなかった。

大きくない美術館の企画展では昨年あたりから、練馬区立美と板橋区立美に注目している。料金が安い割りに質のいい作品を展示してくれるのが有難い。練馬区立美は“佐伯祐三展”(05年9月)、“山本丘人展”(05年11月)がよかったし、板橋区立美は今年4月の“これが板橋の江戸狩野派だ!展”に続き、現在は“戸方庵井上コレクション展”(来年1/14まで)といういい企画展をやっている。右の絵はこの展覧会にでていた仙厓作、“万才図”。一年の終わりの絵としてこれがいいかなと思って、この日のためにとっておいた。

一年間、拙ブログにお付き合いいただきまして誠に有難うございます。美術鑑賞の楽しみを皆様と共有できたことを心から喜んでおります。来年もよろしくお願いいたします。良いお年をお迎え下さい。

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2006.12.30

スーパーエッシャー展

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渋谷のBunkamuraで開催中の“スーパーエッシャー展”(07/1/13まで)は事前にえがいていたイメージと全然異なった。展覧会に関する情報は美術館へ入るまではチラシくらいしか読まないことにしているので、“だまし絵”のエッシャーというイメージがこびりつき、作品はマンテーニャが短縮画法で描いた宮殿の天井画のような絵を想像していた。頭上の空間にプットー(童子)が浮かんでいるように錯覚する絵をさらに複雑に進化させたようなイメージである。だが、こういうタイプのだまし絵ではなかった。

実際はアナモルフォーズ(歪んだ画像)、一つの図像が別の見方をすると違ったものに見えるという、おなじみのあれである。平面の正則分割の絵はそれほど複雑なデザインではない。遠近法と組み合わせた立体的にみえる作品は対象をいくつもの視点からとらえて画面を構成しているので、かなり重層的で入り組んでくる。だが、最新の技術を駆使したサイケ調の滑らかな曲面が連続するCG作品ほどは進んでない。

一番魅せられたのは上の“昼と夜”。じっくりみると面白い要素がいくつもある。それは“ダブルイメージ”への時間軸の導入である。空を飛ぶ左右対称の白い鳥と黒い鳥は下の畑から生まれる。四角に区分けされた畑は魔法の絨毯のように宙を舞い、その形を変容させながら徐々に羽根が生え一羽の鳥になる。右に進む白い鳥は夜の、左へ向かう黒い鳥は昼間の光景として描かれている。白と黒の対比は一日の時間にもちゃんと合っているのである。単なる俯瞰の構図ではなく、畑が浮揚し鳥へと変わるので、鳥がいる高さが地面からイメージできるところが面白い。ダリやマグリッドが得意とするダブルイメージの作品にはこういう時間の推移はでてこない。これは大きな発見。

下の絵“滝”も不思議な絵。これは注意して観ないとどこが変なのかわからない。画面下で石の壁によっかかっている男のように、上から落ちてくる水をただ眺めているだけではダメ。滝のように流れ落ちた水は下からどういうわけか上へ上へと流れていき、いつのまにか元のところへ戻っている。絵本作家,安野光雅の展覧会(10月、日本橋高島屋)でピエロがへんてこな形をした陸橋を渡っている不思議な絵をみたとき、この画家の頭の柔らかさにびっくりした。絵の感じがエッシャーとあまりに似ているので、家に帰り、安野の図録をひっくり返してみたら、エッシャーにヒントを得たと書いてあった。アイデアの元はエッシャーだった!美術評論家たちがエッシャーを高く評価する意味合いがだんだんわかってきた。

もう一点、“相対性”という名前のついた作品にも唸った。人が階段を登り降りする様子を、階段を横から斜めに組み込んだり、あるいは逆さ状態にして人を登らせたり降らせたりしている。階段がこういうふうに色々な角度から描かれていこと自体、不思議なのだが、ほかの階段との接合部分がスムーズで絵としては違和感がそれほど無い。ピカソは多視点から平面的に“アヴィニョンの娘”を描いたが、エッシャーはいくつかの階段を同じく複数の視点で立体的に表現し、観る者をあっと驚かせる。“版画の画廊”もこの絵と似たような感じ。

会場はかなりの混雑で、全作品(153点)を観終わるのに2時間近くかかったが、作品が予想以上に刺激的だったので、疲れより満足感のほうが大きかった。最後に小さな発見をひとつ。1章のコーナーにあった版画、“24の寓意画・14 カエル”と伊藤若冲の“動植綵絵・池辺群虫図”に登場するカエルはポーズがそっくり。

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2006.12.29

川崎小虎と東山魁夷展

609日本橋三越で12/27からはじまった“川崎小虎と東山魁夷展”(07/1/
14まで)を観てきた。

東山魁夷は国民的な画家なので、絵画の好きな方なら大体知っていると思われるが、川崎小虎(しょうこ)については、“誰だっけ?”という感じではなかろうか。

この日本画家の作品はまだ片手くらいしか見たことがない。山種美に通ってるので前々から大和絵の伝統をひきついだ代表作、“春の訪れ”は何回か観た。だから、川崎小虎のイメージはこの絵で出来上がっている。が、この天女の絵と画風がどうしてもむすびつかない作品をこの画家は描いた。それは今回も展示されている“うどんげの花を植える女”という洋画風の絵。絵の感じは12/24に終了した“揺れる近代展”(東近美)にでていた秦テルオの作品と似ている。13年前、この絵を見たとき、大きなパッチリ目、鼻や顔の赤い輪郭線から醸し出される退廃的なイメージに強い衝撃を受けた。

今回、川崎小虎の作品は生誕120年を記念し、古典画の“春の訪れ”、“伝説中将姫”、“囲碁”などの大作屏風とともに、洋画の香りがする静物画、風景画が沢山出ている。東山魁夷の夫人が川崎小虎の娘なので、小虎は東山魁夷の岳父にあたる。二人は親戚関係だが、作品の上でのつながりは感じられない。足を運んだのはまだ観てない東山魁夷の絵と会うためだったので、川崎小虎よりは東山魁夷作品の鑑賞に多くの時間を割いた。

果たして、初見の絵は6点あった。が、これまで見た名画を上回るというほどではなかった。今回は山種美からいいのが出品されている。年末になると見たくなる“年暮る”(拙ブログ05/12/11)、山の重なりと緑と青のコントラストが胸を打つ“月出づ”、俯瞰の構図と緑のグラデーションに息を飲む“緑潤う”。また、長野の東山魁夷館が所蔵する“桂林月夜”、“緑の窓”も名作。

右の“スオミ”をみるのは2回目。昨年9月、所蔵する泉屋博古館であった“近代日本画展”で見て、大変感動した。東近美にもこれとほぼ同じ絵、“白夜光”があるが、こちらは“スオミ”の2年後に描かれている。フィンランドのスオミはまだこの目で見ていない。横に細長く広がるスオミが画面上のはるかかなたにまで見える。この絵に唸るのは広い大自然を小型飛行機から眺めているような気分にさせてくれるから。本当に絵に力がある。

東山魁夷が好きなものだから、今年はこれで5回も取り上げたことになる。1/173/266/711/27。来年もまたいい絵にめぐり会えるようミューズに祈っておこう。

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2006.12.28

06年思い出の国内・海外旅行!

608美術品を鑑賞すると、作品の質が平均値を大きく下回らない限り、拙ブログに感想を書くことにしている。美術館へ足を運ぶ回数も多いので、美術関連の文化記号が連日続く。

美術鑑賞とともに大きな楽しみの一つである旅行についても、その都度旅行記をしたためるといいのだが、今年は感動した美術品を優先するあまり、イタリア旅行以外はテンションがぐっと上がった国内の観光名所のことを逐一書く機会がなかった。で、今年行った国内外の観光地のなかでどこが一番感動したかを振り返りながら、国内旅行のことについて少しふれてみたい。

4月に行ったイタリアは本当に楽しかった。美術館鑑賞ではラファエロ、ベルニーニ、カラヴァッジョの作品を沢山鑑賞できたのが一番の収穫であった。名所観光でよかったのは“シエナのカンポ広場”(拙ブログ5/13)と“カプリ島の青の洞窟”(5/16)。美術品の場合、人それぞれ好き嫌いがあるので、自分が大感激したからといって、これは観るべきだとかは口にしないようにしているが、人気の観光地は大体同じように心に響くことが多いので、“シエナはいいよ!青の洞窟の中に入ると神秘的な青に感動するよ!”と帰国してからは会う人ごとに言っていた。これからもこのフレーズを言い続けるような気がする。

国内旅行は5回した。“長野・草津”(5月)、“東北”(8月)。“青森”(9月)、“白川郷・北陸”(10月)、“北海道・道南”(11月)。“東北旅行”は拙ブログに“中尊寺・金堂”、“瑞巌寺”、“奥入瀬渓”のことを書いた。奥入瀬渓流は右の“阿修羅ノ流れ”や滝の数々に感動の連続だった。ここもイタリアの二つ同様、“渓流では奥入瀬が日本一だね!”を連発している。何年か経ったら、また訪ねてみたい所である。青森美術旅行(シャガール展と奈良智美の回顧展)の収穫は青森県立美術館の隣にあった“三内丸山遺跡”、弘前の“岩木山”と東北自動車道を走っていると前方に見える雄大な“岩手山”。

10月は長年の夢であった“世界遺産 白川郷”訪問を実現させた。“長瀬家”は昔、NHKで放映していた村中総出で行う屋根の葺き替えをやっていた家なので、“これがあの家か!”と感慨深かった。でも、白川郷より翌日バスで通った“白山スーパー林道”のほうが数倍感動した。圧巻だったのが“ふくべの大滝”。前の日に雨が降ったため、国見谷の断崖より86m直下する豪壮な大滝は水量が増し、道路にまでしぶきがかかるくらいほどだった。秋の紅葉のころ、ここを走るとさぞかし気持ちがいいだろう。

というわけで、06年感動の観光地ベスト5!(順位無し)は
“シエナのカンポ広場”、“カプリ島の青の洞窟”、“奥入瀬渓流”、“白山スーパー林道”、“旭山動物園”。

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2006.12.27

06年感動の展覧会・ベスト10! Ⅱ 日本美術

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美術品、展覧会の振り返りの締めは日本美術関連の展覧会。Ⅰの西洋美術・現代アート編では海外の美術館を除く60あまりの展覧会の中からベスト10を決めたが、日本美術関連ではこれより多い、80くらいから感動の展覧会10を絞り込んだ。今年は絵巻、書、屏風の名品の展示、ビックネーム画家の回顧展、大規模なやきもの・漆芸展、浮世絵名品の里帰りなど見ごたえのある展覧会が年初から切れ目無く続いた。

で、ベスト10の決定には色々迷ったが、Ⅰでも採用した感動させる展覧会の要件(下記)に照らして、なんとか選出した。
 A とびっきりの名品、目玉がある(一点豪華型)
 B 好きな作家の作品が沢山ある(回顧展型)
 C 作品の質が高い(○○コレクション型)
 D はじめての作品が多い(初公開、はじめての作家型)
 E 展示空間の演出に秀れている(博覧会型)

A~Dのなかでは、まだ観ていない名品の追っかけに鑑賞エネルギーの大半を費やしているので、DやBのウェートが高くなる。京博であった“大絵巻展”(4月)や“京焼展”(10月)、現在開催中の“松田権六展”(東近美)などはこれほど贅沢な展示はこの先当分はないだろうというくらいの大展覧会だったが、名作の多くはすでに観ているため、選からもれた。上にある“花鳥・若冲展”(三の丸尚蔵館)のチラシはⅠのときと同様、これがベスト1ということではない。展覧会は上から開催された順に並んでおり、美術館の前のアルファベットは要件を表している。

 Ⅱ 感動の展覧会ベスト10! ~日本美術編~

★“バーク・コレクション展”(1/28):C,D 東京都美術館(1/24~3/5)

★“大いなる遺産 美の伝統展”(2/82/92/162/19):C,D東京美術倶楽部(2/5~2/26)

★“加山又造”(3/11):B 大丸神戸店(3/8~3/20)

★“花鳥・若冲展”(3/286/176/187/88/16):B,C三の丸尚蔵館(3/25~9/10)

★“プライス・コレクション展”(7/77/29):C,D,E 東博(7/4~8/27)

★“前田青邨展”(9/28):B 岐阜県美術館(9/5~10/9)

★“仏像展”(10/1110/1211/20):A,D 東博(10/3~12/3)

★“応挙と芦雪展”(10/2410/2511/2411/25):B奈良県立美術館(10/7~12/3)

★“ボストン美蔵 肉筆浮世絵展”(11/611/7):C,D 江戸東京博物館(10/21~12/10)

★“鍋島展”(12/7):B MOA(12/2~07/1/23)

ベスト10に入らなかったが心に響く展覧会がいくつかある。回顧展では浦上玉堂、神坂雪佳、小堀鞆音、伊東深水、陳進、山本丘人、山口蓬春。出光美術館で公開された国宝の“伴大納言絵巻”、“風神雷神図屏風”。そして、東博で開催された“書の至宝展”や五島美術館の“書の国宝 墨蹟展”も一生の思い出になる展覧会であった。

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2006.12.26

06年感動の美術品・ベスト10! その五 工芸

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感動の美術品ベスト10!の最後は工芸。今年は長年追っかけていたやきものや漆芸が観れたり、図録に収録されてない富本憲吉のとびっきりの名品に遭遇したりと収穫の多い年であった。また、京焼、鍋島焼、楽茶碗の大規模な展覧会やいい中国陶磁展、三輪壽雪、松田権六の回顧展とワクワクするような展覧会が目白押しであった。その中で目を楽しませてくれた名品10点は次の通り。作品はつくられた時代順に並んでいる。

 その五 工芸ベスト10!

★“玳玻天目茶碗”(2/18):吉州窯、大いなる遺産 美の伝統展(2/5~26、東京美術倶楽部)

★“黒楽茶碗 銘大黒”(10/31):長次郎、楽茶碗展(9/16~11/12、三井記念美術館)

★“高台寺蒔絵”(1/28):幸阿弥派、京都・非公開文化財特別公開(1/14~3/19、高台寺)

★“赤楽茶碗 銘雪峯”(1/11):本阿弥光悦、茶道具取り合わせ展(1/10~3/12、畠山記念館)

★“薄瑠璃釉色絵竜胆文小皿”(上):鍋島藩窯、鍋島展(12/2~07/1/23、MOA)

★“色絵山寺図茶壺”(下):野々村仁清、京焼展(10/17~11/26、京博)

★“青花黄釉雲龍文盤”(11/1):景徳鎮官窯、清朝磁器展(9/30~11/26、静嘉堂文庫)

★“色絵飾箱”(2/9):富本憲吉、大いなる遺産 美の伝統展(2/5~26、東京美術倶楽部)

★“赤とんぼ蒔絵箱”(12/19):松田権六、松田権六の世界展(12/19~07/2/25、東近美工芸館)

★“鬼萩割高台茶碗”(7/18):三輪壽雪、三輪壽雪の世界展(7/15~9/24、東近美工芸館)

“薄瑠璃釉色絵竜胆文小皿”は鍋島焼の草創期にやかれた優品。小品だが、地の瑠璃色と竜胆文(りんどうもん)の紫、緑のコントラストが実に美しい。しばし見蕩れていた。

仁清の色絵茶壺では最後に残った“色絵山寺図茶壺”は根津美術館が所蔵していることが知っていたが、図版の情報は全く無し。どんな茶壺なのか興味深々だったが、期待値以上の名品に大変感動した。この茶壺の絵付けは代表的茶壺のなかでは絵画性が一番強く、掛け軸の山水を観ているような気分になる。黄金で彩色された山寺の周りの山や木々がケバケバシクなく、茶壺の丸い形に融合し、柔らかく品がよく感じられるのがなんともいい。

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2006.12.25

06年感動の美術品・ベスト10! その四 風景・山水

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今回はベスト10点を絞り込むのに苦労した。西洋画はすんなりいったが、中国・日本画は名作がありすぎて、ちょっと時間がかかった。で、最後は過去みた一番の名作と較べてどっちがこれに近いか?とか、もし“さしあげる!”と言われたらどっちをいただくかとかを考えて、決定した。

 その四 風景・山水ベスト10!

★“アルプスの真昼”(3/4):セガンティーニ、スイス・スピリッツ展(3/4~4/9、Bunkamura)

★“夜のメクラグモ”(9/30):ダリ、ダリ回顧展(9/23~07/1/4、上野の森美術館)

★“バレエ・アレコ”(9/23):シャガール、シャガール展(7/13~10/22、青森県美)

★“煙寺晩鐘図”(11/2):牧谿、中国宋元画展(10/3~12/10、畠山記念館)

★“雪汀水禽図屏風”(1/27):狩野山雪、京博平常展(1/2~1/29)

★“富嶽列松図”(4/8):与謝蕪村、江戸絵画展(3/10~5/21、愛知県美術館)

★“石橋図”(1/29):曽我蕭白、バーク・コレクション展(1/24~3/5、東京都美術館)

★“雪月花”(3/11):加山又造、加山又造展(3/8~3/20、大丸神戸店)

★“清雪富士”(上):横山操、美の伝統展(2/5~26、東京美術倶楽部)

★“ウォーターフォール”(12/3):千住博、千住博展(12/2~07/3/4、山種美術館)

横山操の“清雪富士”には心底揺すぶられた。東芸大美で開催された“日曜美術館30年展(9月)にも“雪富士”が展示してあったが、こちらの方が気に入っている。

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2006.12.24

06年感動の展覧会・ベスト10! Ⅰ 西洋美術・現代アート

602
感動の美術品・ベスト10!はあと2回続くが、これらの作品が展示された展覧会についても、西洋美術・現代アートと日本美術の2回にわけてベスト10を選んでみた。

美術品鑑賞は専ら追っかけている名品と遭遇するのが最大の楽しみなので、展覧会のテーマとかコンセプトにはあまり興味が無く、お目当ての作品がどのくらい含まれているかに注目している。ここに選んだ展覧会は美術史家の選択基準とは異なる視点で選んだMy感動の展覧会である。で、ベスト10をみていただく前に、感動するあるいは大満足の展覧会はどんな要件をクリアした展覧会かを説明しておきたい。観てて楽しくなる要件とは、

A とびっきりの名品、目玉がある(一点豪華型)
 例えば、ダビンチの“モナリザ”とかトプカプ宮殿の“エメラルドの短剣”とか
B 好きな作家の作品が沢山ある(回顧展型)
 作家の初期の頃から晩年までの創作活動がその作品群で理解できる
C 作品の質が高い(○○コレクション型)
 昨年のフィリップスコレクションとか、今年のプライスコレクション
D はじめての作品が多い(初公開型)
 日本ではじめて展示されるとか、自分にとってもはじめての作家
E 展示空間の演出が秀れている(博覧会型)
 展示の仕方が面白く、アートエンターテイメントが感じられる

展覧会のあとの()は拙ブログの日付、開催された美術館の前にあるアルファベットは上の要件を示している。美術品同様、順位は無しで、展覧会が開催された順番に並んでいる。上の“奈良智美A to Z展”の会場風景はタイトルにちなんで使っただけで、これが一番よかったという意味ではない。

 Ⅰ感動の展覧会・ベスト10!~西洋美術・現代アート編~

★“スイス・スピリッツ展”(3/43/5):A,C Bunkamura(3/4~4/9)

★“プラド美術館展”(2/264/2):A,C 東京都美術館(3/25~6/30)

★“藤田嗣治展”(4/4):B 東京国立近代美術館(3/28~5/21)

★“絹谷幸二展”(5/29):D 日本橋三越(4/18~4/30)

★“シャガール展”(9/23):B 青森県立美術館(7/13~9/24)

★“奈良智美A to Z展”(9/24):B,E弘前市吉井酒造煉瓦倉庫(7/29~10/22)

★“ペルシャ文明展”(8/8):A,D 東京都美術館(8/1~10/1)

★“ダリ回顧展”(9/3010/110/2):B 上野の森美術館(9/23~07/1/4)

★“大竹伸朗 全景展”(12/13):D,E 東京都現代美術館(10/14~12/24)

★“ビル・ヴィオラ はつゆめ展”(12/15):D,E 森美術館(10/14~07/1/8)

ベスト10にしたため漏れてしまったが、はじめての作家の“パウラ・モーダーゾーン・ベッカー展”(神奈川県近美葉山館、1/7~3/26)、“エルンスト・バルラハ展”(東芸大美、4/12~5/28)、“ニキ・ド・サンファル展”(大丸東京店、5/11~5/22)、“束芋・ヨロヨロン展”(原美術館、6/3~8/27)ではその素晴らしい作品に大変感動した。

今年はベスト10に入った大竹伸朗、ビル・ヴィオラをはじめ、これまで知らなかった作家の作品に接する機会が多くあった。才能豊かな画家やアーティストに会わせてくれたミューズに感謝々である。

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2006.12.23

06年感動の美術品・ベスト10! その三 静物・花鳥

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3回目のモティーフは静物と花鳥。花鳥画は広く解釈し、龍や獅子の絵も入っている。選ばれた作品は前と同様、今年はじめて鑑賞した絵で、過去観たことがありいつ見ても感動する、例えば、酒井抱一の“花鳥十二ヶ月図”(三の丸尚蔵館の花鳥画展)などは含まれていない。女性画とともに目を楽しませてくれた10点の画像をクリックし、拡大版でご覧いただきたい。

 その三 静物・花鳥ベスト10!

★“果物籠”(5/3):カラヴァッジョ、アンブロジアーナ絵画館(4月)

★“パン籠”(10/2):ダリ、ダリ回顧展(9/23~07/1/4、上野の森美術館)

★“華厳宗祖師絵伝”(6/12):高山寺、大絵巻展(4/22~6/4、京博)

★“動植綵絵・菊花流水図”(6/178/21):伊藤若冲、花鳥・若冲展(3/25~9/10、三の丸尚蔵館)

★“菜蟲譜”(4/78/19):伊藤若冲、18世紀京都画壇展(3/25~4/9、京博)

★“百鳥図”(10/24):長澤芦雪、応挙と芦雪展(10/7~12/3、奈良県立美術館)

★“刺繍・花鳥図”(上):日本民藝館、朝鮮民画展(10/3~12/20、日本民藝館)

★“山鳥”(下):小林古径、大いなる遺産 美の伝統展(2/5~26、東京美術倶楽部)

★“唐獅子”(9/28):前田青邨、前田青邨展(9/5~10/9、岐阜県美術館)

★“鶴舞”(1/16):加山又造、川村記念美術館平常展(1月)

“朝鮮民画展”でみた“刺繍・花鳥画”にびっくりした。鳳凰や左の鳥の赤、木々のうす青、岩の濃い紫がなんとも鮮やか。これをつくったのは名も無い職人であるが、色彩感覚は尋常ではない。どこの国にも天性のカラリストはいるものだ。朝鮮の美を発見した柳宗悦の慧眼に頭が下がる思いである。

小林古径が描いた“山鳥”も衝撃の一枚。これは昨年開催された大回顧展(6月、東近美)にも登場しなかったので、まさに知られざる名作である。1939年、ニューヨーク万国博覧会に出展されて以来、これまで一度も展覧会に出品されなかったいう。会場の最初に飾ってあった大作なので、覚えておられる方も多いはず。雪の中を飛ぶ山鳥の姿が画面の中央にどんと描かれている。圧倒的な存在感をもつ山鳥を唖然としてみていた。

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2006.12.22

06年感動の美術品・ベスト10! その二 人物

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1回目で女性を単独で描いた絵画や彫刻および日本の美人画や観音様を取り上げたので、2回目はこれ以外の人物画や彫像のベスト10。宗教画や神話や歴史を主題にした作品をひとくくりにした。今年最も熱くなった作品は以下の通り。

 その二 人物ベスト10!

★“ポンペイの秘儀荘”(5/15):ポンペイ遺跡(4月)

★“死せるキリスト”(5/2):マンテーニャ、ブレラ美術館(4月)

★“聖愛と俗愛”(5/22):ティツィアーノ、ボルゲーゼ美術館(4月)

★“聖マタイの召命”(5/21):カラヴァッジョ、サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会(4月)

★“プロセルピナの略奪”(5/17):ベルニーニ、ボルゲーゼ美術館(4月)

★“山越阿弥陀図”(上):禅林寺、東博平常展(9/26~10/22)

★“五百羅漢図”(2/21):狩野一信、東博特集陳列(2/14~3/26)

★“仁王捉鬼図”(11/19):狩野芳崖、揺らぐ近代展(11/7~12/24、東近美)

★“武士”(11/18):小堀鞆音、小堀鞆音展(10/21~12/3、明治神宮文化館)

★“原爆の図”(6/11):丸木位里・俊、丸木美術館(5月)

追っかけている仏画のなかで、昨年の“阿弥陀二十五菩薩来迎図”(国宝、知恩院)に続き、東博国宝室で“山越阿弥陀図”を観れたのは大きな喜びである。東京でこの絵にお目にかかれるとは思ってもいなかった。臨終間際の者が阿弥陀図から実際にたらされた五色の糸を手にしっかり握り締め、極楽浄土行きを祈ったのかと思うと感慨深かった。慈悲深い阿弥陀如来の姿と白い雲に乗った観音菩薩と勢至菩薩の綺麗な顔に心を打たれる。

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2006.12.21

06年感動の美術品・ベスト10! その一 女性

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今月の展覧会鑑賞が残すところわずかとなったので、今年、国内外の美術館、寺院、教会で見た絵画や彫刻などの美術品のうち、とりわけ感動の大きかったものをモティーフ毎に選んでみた。題して、“06年感動の美術品・ベスト10!”。

選出の基準ははじめて見た作品に限っている。で、感動した作品であっても過去にお目にかかったものは除いた。こういう基準にしたのは手元に西洋、日本美術の追っかけリストがあり、これらと遭遇することに大きな喜びを感じており、またはじめての作品のほうが新鮮であり、感動の総量も大きいからである。選んだ10点に順位はなし。年間にするとかなりの数の中から絞り込んだ10点はどれも思い出に残るものばかりなので、差はつけようがない。

では、まず女性画や女性の彫像から。西洋、日本の年代順に並んでいる。作品の後の()は拙ブログで取り上げた日付で、ここをクリックすると画像が見られるので、お楽しみいただきたい。大半は過去に出た画像を使っているが、他の作品との兼ね合いで割愛したものは今回新たに載せている。作品とあわせて、作家の名前、これをみた展覧会、場所を記した。

 その一 女性ベスト10!
 
★“フォルナリーナ”(5/23):ラファエロ、ローマ国立絵画館(4月)
 
★“福女ルドヴィカ・アルベルトーニ”(5/18):ベルニーニ、サン・フランチェスコ・ア・リ  ーパ教会(4月)

★“女の肖像”(10/3):モディリアーニ、クリーブランド美術館展(9/9~11/26、森アーツセンター)

★“十一面観音菩薩立像”(11/20):向源寺、仏像展(10/3~12/3、東博)

★“佐竹本三十六歌仙絵・小野小町”(上):東博特集陳列(9/5~10/1)

★“雪月花”(1/20):勝川春章、MOA平常展(1月)

★“いでゆの春雨”(2/16):鏑木清方、大いなる遺産 美の伝統展(2/5~2/26、東京美術倶楽部)

★“五月の朝”(6/8):竹久夢二、春期展示(5~6月、竹久夢二伊香保記念館)

★“姿見”(4/6):伊東深水、伊東深水展(4/1~4/23、美術館「えき」KYOTO)

★“目をつむる女の子”(9/24):奈良智美、A to Z展(7/29~10/22、弘前市吉井酒造煉瓦倉庫)

9月、東博でみた“佐竹本三十六歌仙絵・小野小町”には出光美術館に展示された“小大君”や“斎宮女御”(1月)を上回る衝撃を受けた。上は本物ではなく、日本画家の山口蓬春が模写したもの(神奈川県近美葉山館の回顧展で12/24まで展示)。

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2006.12.20

岡本太郎の絵画展

596川崎の生田緑地にある岡本太郎美術館を1年ぶりに訪問した。

現在、ここで“岡本太郎の絵画展”(07/1/8まで)が行われている。今回は小田急線の向ヶ丘遊園駅で下車して、20分くらい歩いた。

ここの企画展を常時チェックしているわけではないが、たまたまこの展覧会が目にとまったので出かける気になった。前回のとき購入した館の図録に載っていた右の“夜”にとても惹きつけられ、いつか見てみたいと思っていたので、この展覧会が背中を押してくれた格好だ。

館内の導線はユニークで、企画展の作品と常設の絵画や彫刻、陶板を一緒に観るようになっている。常設コーナーに展示してあったのは一部前と違っていたから、定期的に作品を替えているのかもしれない。“樹人”(拙ブログ05/12/25)の隣に、“天に舞う”というしなやかに体の曲がった人体フォルムと川の流れのような色彩の帯が美しい陶板壁画があった。図録を読むと1974年、渋谷のNHK放送センターロビーのために制作されたものだった。彫刻作品では、バッファローの大きな角が両手の指を第一と二の関節をまげてくっつけたような青い塊から出ている“樹霊Ⅰ”や河童の頭をして横に広げた口にはサメのような鋭い歯がはえている“ノン”にドキッとした。

サブタイトルに“衝動から実現まで”とついた企画展は所蔵の絵画をデッサン、エスキースと並べて展示し、岡本太郎が最終的に絵画をどういう風に完成させていったかを見てもらおうというもの。青山にある岡本太郎記念館(05/12/26)とここにあるものが補完しあう形で、28点の作品の制作過程を見せている。これは岡本太郎の画業を知る上で貴重な機会なので、しっかり見た。

当たり前のことであるがこういうのをみると、観る者をあっといわせる作品がいきなり誕生したのではないことがよくわかる。イメージがだいぶ明確になってきた段階でつくるエスキースが本作品ではさらにフォルムがすっきりし、シャープな色に変わっていく。お気に入りの絵は“夜”、“森の掟”(拙ブログ05/8/3)、丹下健三設計による旧東京都庁舎内の陶板壁画、“建設”、“赤”、今年7月、汐留の日本テレビ特設会場でみた“明日の神話”(拙ブログ7/16)。

“森”では真ん中に描かれた横向きの少女に釘付けになる。岡本太郎の絵でちゃんと描かれた人物が登場するのはこの絵だけ。髪の毛や白いスカートの裾は風で後ろに流されている。ギョッとするのは背中に隠し持っている刃の長いナイフ。前にいる大きな足をした髑髏の怪人が襲いかかってきたらこれでやっつけるつもりであろうか?

念願だったこの絵を含めて、この美術館が所蔵する作品は9割方鑑賞したので、岡本太郎はこれでひとまずお休み。

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2006.12.19

松田権六の世界展

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東近美工芸館で本日から“人間国宝 松田権六の世界展”がはじまった(来年2/25まで)。今年は松田権六の生誕110年にあたるため、大回顧展が出身地の石川県(金沢の県立美)、東近美、熱海のMOAで開催されることになった。

松田権六(1896~1986)は近代漆芸の大巨匠である。権六(ごんろく)という名前からして、貫禄があり、人間としてすごく大きな作家という印象をあたえる。今回、主要な代表作はほとんど出品されている。過去あった工芸関連の展覧会などで本や美術館の図録に載っている作品は大方鑑賞したので、目の前の作品一つ々に仰天ということがないが、最高の技と感性によって生み出された名品の数々に囲まれるとさすがに体がほてってくる。究極の漆芸美ともいえる“松田権六の世界”に酔いしれた。

感じ入った点がいくつかある。その一つは琳派風の紋様。その代表的な作品が上の“蓬莱之棚”。8年前、所蔵する石川県立美術館で観て以来、3度目の対面である。03年、東芸大美で行われた“工芸の世紀展”にもでていた。棚の扉を全開した状態で展示してあるので、竹の網代編の地に蒔絵で描かれた鶴を何羽も一度に見ることができる。口ばしや羽の金を蒔きつけたところと目の周りの赤、そして首の白にぐっと惹きつけられる。そして背景の光琳模様をヒントにしながら、さらに繊細かつ流動的に描写した流水文が見事。この流水文は“流水桜文蒔絵神代欅棗”や“漆の花生”でも観られる。

松田権六の作品に魅力を感じるのは蒔絵や平文の神業的な技術だけでなく、モティーフの表現に動感があるから。東芸大の卒業制作である“草花鳥獣文小手箱”(東芸大美)では、鹿やうさぎは獅子から大慌てで逃げようとして、前足と後ろ足が水平になるくらいに跳びはねている。飛ぶことに慣れている雉だって体をそり返して上昇中。丸い手箱にこのダイナミックなフォルムがぴたっと合っているのが素晴らしい。真ん中の“赤とんぼ蒔絵箱”(京近美)でも水辺に自生する葦の花は風に揺ら揺らうごいてる感じで、その立体的な空間のなかを赤とんぼが軽快に飛んでいる。玉虫貝で表された水面の幻想的な雰囲気に誘われて、しばし見蕩れていた。

螺鈿のうすピンクやうす青の輝きに魅了されるのが下の“蒔絵螺鈿有識文飾箱”(東近美)。赤とんぼの羽根の螺鈿装飾もいいが、螺鈿がある作品の中で、輝きの総量が一番大きいのがこの飾箱。正倉院宝物にある有識文を参考にして描かれた花模様はライティングの演出で美しく輝いている。松田権六は中尊寺金色堂(拙ブログ8/13)の保存修理で螺鈿の指導をしたらしい。それであんな立派な螺鈿装飾が出来上がったのだろう。会場には金色堂のパネルが飾ってあった。

今回の収穫は日本にある漆芸の名品が沢山観れたこと。松田権六の作品だけでなく、師匠や後継者などの作品が一緒に展示してるのだから有難い。MOAで観たことのある尾形光琳の螺鈿硯箱まである。見所いっぱいの展覧会に200%満足した。

なお、東近美での展示が終了すると、MOA(07/3/10~4/9)に巡回する。

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2006.12.18

智美術館の我が心の陶芸展

591ホテルオークラのすぐ近くに陶芸専門の智美術館というのがある。

昨年10月、15代楽吉左衛門の個展を観るため訪問して以来ご無沙汰していたが、朝日新聞の展覧会情報に板谷波山らビッグネームの陶芸家の作品を展示する“我が心の陶芸展”(07/2/25まで)が載っていた。

まったくNOマークの展覧会で、HPで出展作をみると、大好きな楽15代の作品が11点もある。これは迂闊だっと、早速足を運んだ。ここは開館時間はAM11~PM6。オープンが普通より遅いので注意が必要。早く着きすぎて、オークラのロビーで時間調整するはめになるといけないので念のため。

ここは作品の展示のし方が他とは一味ちがう。作品はガラスケースなしで手にとるような感じで鑑賞できるので非常に気持ちがいい。ちょうど宿泊料金が高めの老舗旅館とかホテルのロビーで陶芸品を鑑賞している感覚である。目の前の名品にあまり近づくと赤外線に触れ、警告のアナウンスが流れてくる。作品に前のめりになりすぎ、2回もブザーがなってしまった。

今回はコレクター菊池智氏が蒐集した珠玉の陶芸品から50点が出ている。期待値以上の質の高い作品が並ぶ。数が最も多いのが15代楽吉左衛門の1986年から1990年にかけてやかれた黒茶碗。昨年みた茶碗(拙ブログ05/10/2)と較べると器体は少し小さめだが、赤や黒、緑の色調はこちらの方が強い。15代の代名詞となったこの黒茶碗にいつもながら声がでない。

河井寛次郎の大きめサイズの“灰釉筒描魚文喰籠”、“花扁壺”、光沢があり黒、赤、緑の対比が素晴らしい“鉄薬赤青扁壺”も目を楽しませてくれる。そして、思わず見蕩れてしまうのが板谷波山の“葆光彩磁葡萄唐草文花瓶”。出光美術館の名品展Ⅱに出品されていたのと同じ形をした花瓶。形のよさにしびれる。菊池氏もこの花瓶を所蔵していたとは!流石というほかない。

右は入り口のところに展示してある富本憲吉の“白磁八角共蓋飾壺”。彫刻を思わせるような美しい造形にグッとくる。これは富本が祖師谷にいたときにつくられた優品のひとつで、東近美にも蓋がすこし大きい同ヴァージョンの花瓶がある。ほかでは、加藤唐九郎の“紅志野大皿”、北大路魯山人の飛び跳ねる海老の形が面白い“赤絵貝形向付”、縄文様式のような曲線彫文が目を惹く加守田章二の“壷”に魅了された。

レベルの高い作品と宝飾品を見せるような展示方法に大変満足した。ここのHPを定点観測してたほうがいいかもしれない。

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2006.12.17

美の巨人たち 印象派のパラダイス

590来年の1/27から東京都美術館ではじまる“オルセー美術館展”へのワクワク感が少しづつ大きくなっている中、昨日ちょうどいいタイミングで人気番組“美の巨人たち”が“印象派のパラダイス”という特別番組を放映してくれた。

“アートエンターテイメント”を売りとするこの番組は最後2分間くらいの締めのナレーションがいつも決まっている。バックに流れる音楽がまたいい。芸術に対する感度のいい人たちが集まって番組をつくっているのだなといつも感心する。

今回、ナレーション役の俳優小林薫が旅するのはモネ、ゴッホ、セザンヌ、ルノワールの名画が生まれたゆかりの地。モネの大作“睡蓮”のあるパリ、オランジュリー美術館、ゴッホが名画を沢山描いたアルル、セザンヌの故郷、エクス・アン・プロヴァンス、そしてルノワールが晩年リューマチの治療のため移り住んだニース近郊のカーニュ。

今年5月リニューアルを終えてオープンしたオランジュリーは前は地下にあった“睡蓮”の楕円形の展示室が1階に変更されたそうだ。ここを訪問したのは15年前だから、この絵の記憶もだいぶ薄れてきている。来年4月から国立新美術館で“モネ展”があるので、モネ2ラウンド目のつもりでここで目を慣らし、08年春また新鮮な気持ちで“睡蓮”と向かい合おうと思う。

ゴッホがアルルで描いた“アルルの寝室”がパリに行かずに東京都美術館で鑑賞できる。これは大好きな絵なので、嬉しくてたまらない。ゴッホの“イエローパワー”に魅せられるのはこの絵と同じく、オルセーにある“昼寝”、そしてアムステルダムのゴッホ美術館が所蔵する“黄色い家”、“ひまわり”、“収穫”(拙ブログ05/4/12)。

右は現在、神奈川県立近代美術館葉山館で開催中の“山口蓬春展”(12/24まで)にでている“陽に展く”(部分)。山口蓬春がこれを描いたのは亡くなる3年前の75歳のとき。ひまわりの生き生きとした姿を単純化されたフォルムと濁りのない黄色と緑で力強く描いている。西洋的な写実と日本画の装飾性が見事に溶け合った素晴らしい作品である。洋画、日本画と問わず、日本人画家が描いた静物画としてはトップクラスの絵の一枚に数えられるのではなかろうか。

エクス・アン・プロヴァンスでは、小林薫のレポートが面白い。小林はセザンヌが60枚近く描いたという“サント・ヴィクトワール山”の近くまで行ったりまた、別の場所から山を眺めたりして、光の当たり方やまわりの風景のなかで色々変わる山の表情をしっかり感じてる様子。セザンヌも制作にあたっては、同じような体験をし、サント・ヴィクトワール山の存在感をもっとも引き出せるポイントを見つけたのであろうか。

“オルセー美展”には番組で紹介された絵が出展される。ゴッホの“アルルの寝室”同様、セザンヌのこの名画もやってくるのだからたまらない。オルセーはいい絵をよく出展してくれる。99年9月、横浜美術館であった“セザンヌ展”でも西洋画の静物画では一番好きな“りんごとオレンジ”をはじめ、“首吊りの家”や輝く緑が美しい“マンシーの橋”があった。日本人は印象派が好きなことをよく知っているから、セザンヌの超一級の絵をどーんと見せてくれるのだろう。

最後に出てきたルノワールが絵筆を手にくくりつけて描いた“浴女たち”は展覧会には出品されない。チラシをみるかぎり、今回のルノワール作品は脇役といったところか。1時間のスペシャル番組で印象派絵画への鑑賞欲がまた、むくむくと涌いてきた。来年開かれる印象派関連の展覧会に期待したい。

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2006.12.16

大リーガー松坂 岩村の誕生

589米大リーグにまた、日本人選手が誕生した。レッドソックスの松坂とデビルレイズの岩村。

ヤンキースが交渉権をとった阪神井川の契約も間近だろうから、野球界のストーブリーグはNEW大リーガーの話題でもちきりである。

松坂の契約交渉は決着するまでなにかと注目を集めた。野球のことを知ってる人も知らない人も多くの日本人は、やり手代理人ボラス氏がレッドソックスに要求した年棒17億円に唖然としたのではなかろうか。最終的には6年総額74億8800万円(出来高契約も含む)、年棒平均12億5000万円で契約したが、これでも新人投手としては破格の年棒である。春のWBCでMVPを獲得したことが松坂に対する評価を一気に上げたことは間違いない!後から振り返ると、MBCで日本が優勝したことと日本ハムが終盤、勝ち続けたことが今年のプロ野球では一番のハイライトだった。

レッドソックスの球団社長は“松坂、岡島投手(日本ハム)との契約は日本との長い付き合いのはじまり”と日本人ファンのボストン訪問を大いに期待する発言をし、さらに近い将来、ヤンキース同様、レッドソックスが日本で開幕戦を行う可能性についても言及している。気の早いスポーツ誌の観測記事のように、08年にも松坂の凱旋試合が実現するかもしれない。まずは来年における松坂の快投を見るのが先だが、年棒の高さからみて、契約期間の6年で100勝くらいするのでないかと先々の予想だけは勝手に膨らんでいく。

元ヤクルトの岩村(左の写真)はデビルレイズと3年総額9億円で契約した。背番号1のユニフォームを着て、来シーズンは同じ東地区の松井のいるヤンキース、松坂、岡島のレッドソックスと戦うことになる。大リーガーの夢が叶い、さぞかし嬉しいだろう。岩村のバッティングは昔から高く評価してきた。小柄だが、この選手はリストが強いのでボールをものすごく遠くに飛ばす。3,4年前あまり強振しすぎて手首を痛め、成績がふるはなかったことがあったが、ここ2年はまた主軸として充分な働きをし、WBCでも活躍した。

三塁のグラブさばきもうまい。守備は大リーグでもAクラスだから、問題は打撃力。パンチ力はあるのだが、大リーグにはいい投手が沢山いるから3割を打つのは簡単なことでない。岩村は1年目の松井のホームラン16本、今年城島が打った18本を目標とするだろうが、ホームランにあまりこだわらず、中距離ヒッターを目指すほうがいいと思う。上背のあるピッチャーがごろごろいるから、小柄な岩村が角度のある速球や揺れる変化球を大きく打ち返すには相当高い技術がいる。あせらず、打撃のレベルアップに精進してもらいたい。

愛媛県宇和島市には大物現代アーティスト、大竹伸朗のアトリエがあり、来年からはここ出身の岩村が大リーグでプレーする。地元の支援者も元気がでることだろう。

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2006.12.15

ビル・ヴィオラ はつゆめ展

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現在、森美術館で行われている“ビル・ヴィオラ はつゆめ展”(07/1/8まで)は大変刺激的で面白かった。10/14に開幕したのだから、もっと早めに見とけばよかったと後悔している。この展覧会を1年くらい前に知り、今年後半の鑑賞リストに入れているのに、現代アートなので、“本当に心に響く作品だろうか?”といつもの心配が頭のなかを支配し、ずるずると鑑賞のタイミングが延びてしまった。

ビル・ヴィオラ(1951、NY生まれ)はヴィデオ・アートの第一人者だという。ヴィデオ・インスタレーションを見た体験が少なく、基準作の情報がないが、今回の作品がトップレベルのものであることは直感できる。目の前の映像、サウンドから作家の主張するメッセージや深い精神性が割合スムーズに理解でき、作品の中にすっと入っていけるところがいい。出品作は15点。スーパー衝撃度の作品が3点あり、作家の高い才能があますところなく発揮されている。“クロッシング”(1996、上と下の画像)、“ミレニアムの5天使”(2001)、“ラフト/漂流”(2004)。

会場入ってすぐのところにある“クロッシンブ”はなかなかよくできた作品。中央に大きな両面スクリーンがあり、正面には男が炎につつまれる場面(上下画像の左)、裏面では男の頭上から水が落ち、次第に滝に打たれるような感じになる場面(右)が映しだされる。映像時間は16分くらい。火が燃えひろがり、オレンジ色の炎がだんだん大きくなるのと、水がゴーゴーと音を立てて落ちる滝に変化するタイミングをシンクロさせているところが作品の完成度の高さを表している。最後には男がいなくなり、すざましい大音響の洪水になるのを見てると、千住博の“ウォーターフォール”(山種美術館、拙ブログ12/3)がダブってきた。二つの作品が美しくコラボレーションしているようである。

“ミレニアムの5天使”にも深く感動する。ここでは、5人の天使(実は服を着たままの男)が水面から上昇する場面をみるのにちょっと工夫がいる。暗い展示空間では、全部のスクリーンが見渡せる中央にポジションをとるのがいい。というのも、よく画面を見ていないと天使の中には水中から突然現れ、そのまますぐ消えてしまうのがいるからである。これを見逃すとまた10分くらい待つことになる。はじめ、入って一番近くにある、頭を下にして足のほうから上昇していく天使のところばかりを見ていたら、後ろのほうで大きな音がし、振り返ってみるともう天使は足だけで体の大部分は画面から消えていた。効率的に天使を見るには、例えていうなら、“モグラたたき”ゲームの身のこなしが必要。

天使が飛び出すときの格好が皆異なるのが面白い。水面に泡ができて飛び出しの予兆があったり、いきなり爆発音とともに浮かび上がってきたりする。ハッとするのがダリ作、“サン・ファン・デ・ラ・クルスのキリスト”(1951、グラスゴー美術館)の変わった角度で描かれたキリストを連想させる天使。神秘的な美しさが漂う映像空間はこれぞヴィデオ・アートの真髄といった感じである。見てのお楽しみ。

2000年以降に制作された“悲しみ”、“驚き”、“喜び”、“怒り”、“怖さ”といった人間の感情をテーマにした映像が興味深い。複数の男女をモデルに使い、感情の変化が現れる顔の表情や体の動きを高速度撮影し、これを低速度で映し出している。一見すると肖像画ではないかと間違えそうになる。よくみると顔の皮膚が微妙に動いたり、まばたきが見える。よく生き物の生態観察やスポーツ競技の再現シーンでこういう映像をみることはあるがアートとしてみるのははじめて。とても新鮮である。が、辛抱強く見続けなければならないから、見終わるのに時間がかかる。

気に入ったのは、“オブザーヴァンス/見つめる”(02年)。列の前には悲惨な死に方をした人が横たわっているのだろうか?立ち止まっては悲しい顔をし、隣の人と視線を交わしたりしてまた、後ろの方へ戻っていく。自分もこの列の中に入るときっと同じような感情になるのではないかと思わせる作品である。

ビル・ヴィオラのヴィデオ・インスタレーションに200%KOされた。今年は束芋に続き、現代アートのいい作家に遭遇した。今後のヴィオラ作品に注目したい。

ヴィオラが1980年代、日本に1年半いたときに制作した“はつゆめ”(1981、56分)は会場では見られなかったが、東京オペラシティタワー4階のNTTインターコミュニケーションセンターでも12/17、12/24に上映されるというから、行ってみたくなった。

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2006.12.14

伊東豊雄 建築/新しいリアル展

586新日曜美術館が2週連続でこれまで知らなかった作家を発見するきっかけをつくってくれた。

最初が現代アーティスト、大竹伸朗、次が建築家、伊東豊雄。その作品はいずれも目を釘付けにさせ、番組が終了した後、すぐ展覧会へ行くことを決断させるほど大きな力をもっていた。

“伊東豊雄 建築/新しいリアル展”は現在、東京オペラシティアートギャラリーで開催されている(12/24まで)。番組で伊東豊雄をみたとき、“この建築家は世界中から設計依頼が来るトップランナーの一人だろうな!年齢は40代後半~50代前半かな”と思った。活躍ぶりは予想通り、世界各地に斬新な建築物がつくられていた。

が、歳についてはふさふさした髪の毛に惑わされ、大ハズレ。実際は現在、65歳だった(1941、韓国京城市、現ソウル生まれ)。顔の表情、しゃべり方からはとても65歳には見えない。流動体の形態をもつ建築物同様、頭の中と体は柔らかいのだろう。

展示室には現在進行中の建築プロジェクトやすでに完成している建築物の模型が展示してあり、最新のCG技術を駆使して制作された三次元画像で建物の概観や内部の構造をより詳しく解説している。“台中メトロポリタン・オペラハウス”は曲面体のオペラホールやその周りの部屋が連続してつながる開放感溢れる建物。なんだか珊瑚礁をいくつもくっつけたようにみえる。

コンピューターの発達と最新の構造技術により、現在では流れるような形態の建築が可能になった。伊東豊雄が目指すのはこれまでの均質なグリッド(格子)に基づく建築とはちがう、複雑で流動的な連続体を生み出すエマージング(生成する)・グリッドをコンセプトとした建築である。これにより建築が周りの自然環境へ近づき、自然と一体になるような建築物をつくることが可能になる。

靴を脱いで入る展示コーナーでは、床はフラットでなく緩やかな曲面になっているので、慎重に歩かないと転んでしまう。これは岐阜県各務原市営斎場(06年完成)の屋根を再現したもの。斎場の屋根を横からみるとUFOが森の中を飛んでるイメージ。ここに展示してある巻貝の形をした“リラクゼーション・パーク”(建設中、スペイン)の模型に目を奪われる。自然界に存在するものとそっくりの建物が現実につくられているのだから驚く。

大型プロジェクターに“せんだいメディアテーク”(01年)、右の“MIKIMOTO Ginza2ビル”(05年)、“TOD’S表参道ビル”(04年)が映し出されるので熱心にみた。鉄のチューブが目を惹く“せんだいメディアテーク”を訪れる市民は年間100万人いるという。広々とした開放的な空間のなかで本が読める仙台の方が羨ましい。宮城県立美術館を訪問する機会があったら、是非寄ってみたい。“MIKIMOTOビル”はときたま見ることがあるが、てっきり海外の売れっ子建築家の設計によるものだと思っていた。伊東豊雄が設計してたとは。へえー!である。

来年春一般に公開される“福岡アイランドシティ、ぐりんぐりん”は屋根に緑の草木が生えているので、遠くからは丘のように見える。まさに地形と建築が一体化している。先行例として思いつくのは、フンデルトヴァッサー(拙ブログ04/12/24)が“人間と自然の調和”という思想のもとにオーストリアのブルーマウにつくった“保養村”(1997)。日本版の“建築と自然の調和”をいつか見てみたい。

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2006.12.13

東京都現代美術館の大竹伸朗展

585現代アーティスト、大竹伸朗(1955年、東京都生まれ)の大回顧展(東京都現代美術館、12/24まで)をみた。

作家の名前だけは頭の隅っこにあったが、作品については11月末の新日曜美術館をみるまで全く知らなかった。番組で大竹作品をみて、俄然興味がわき、強い磁力に吸い込まれるようにMOTへ足を運んだ。

展覧会タイトルにある“全景”の意味は膨大な作品群をみると納得する。なにしろ2000点の作品が3つの展示場にびっちり飾られているのだからすごい。現代アーティストに詳しくないのでわからないが、これほどのビックな作家なのに、これがはじめての大回顧展らしい。29年間毎日つくり続けてきたという64冊のスクラップブック、小さい頃描いた絵、北海道の別海にいた時の写真、ドローイング、本格的な創作活動に入ってから現代までに制作されたコラージュ、立体、大作絵画など多彩な作品を見ていくうちに、これはすごいアーティストに遭遇したなとだんだん興奮してきた。

作域が広いのに驚かされる。ヨーロッパやアメリカの作家、10人くらいの作風を全部吸収して、自分独自のスタイルをつくりあげているという感じである。道端に落ちていた広告や新聞、雑誌の写真、CD、などなどを画材にしたコラージュ作品が一番多い(右の画像の下はその一つ)。大竹はロックバンドのつくっていたのでコラージュと音楽が合体になった面白いのもある。“ゴミ男”の前ではスピーカーから中東や北アフリカの匂いのするメロディーが繰り返し流れてくる。

デュシャンの作品に大きな刺激をうけた大竹にとってコラージュは創造の源かもしれない。日本人作家がつくるコラージュだなと思うのは、貼る材料の量が多くて、しつこくかつ精緻に造形していること。これほど大量の情報、記号を消化し、操作できるからには、大竹の脳は規格外の大きなキャパシティをもっているのだろう。

絵画ではいろんな画家のイメージが重なってくる。しかも、なんでも高いレベルで描けるのがすごい。“網膜”シリーズのようなムラがあったり周辺がぼけた抽象的なフォルムを特徴とする作品が多いが、アフリカの男女をきりりと骨太に表現した人物画もある。大竹が旅したヨーロッパ、アフリカ、アメリカの土地々の風景や空気が作品を通してストレートに伝わってくる。

黒白や緑一色の静寂感の漂うモノトーンの作品にグッと惹きつけられる一方、堂本尚郎のように色とフォルムが魅力的な抽象美を見せる絵や明るい赤、黄色といった色の組み合わせが素晴らしい“日本景”(右の画像の上左)にも心を揺さぶられる。東京、新潟、厳島、岡山など日本の町がでてくる“日本景”の色使いはジム・ダインやエルズワース・ケリーの絵とそっくり。

偶然できた形やムラ、にじみを多用する大竹だが、色彩感覚にも天賦の才能がある。カラリスト、大竹伸朗を強く感じさせる作品が地下2Fの大フロアに飾ってある。それはとてもハイな気持ちにさせてくれる縦10m、横17mの緞帳“北の空に浮かぶカタチ”(右の上右)。2000点もの作品をみると、普通なら最後は疲れて飽きてくるのだが、今回はインパクトのあるフォルム、日本画にような美しい線描、晴れやかな気分になる明るい色調など魅力溢れる作品の連続だったので疲れる暇がなかった。

大竹伸朗にすっかり嵌ってしまった。My好きな作家に即登録した。

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2006.12.12

狩野永徳の松鷹図屏風

584東京芸大美術館では今、ユニークな展覧会が開かれている。大学の美術館ならではの“ユニヴァーシティ・ミュージアム合同展 ザ・ワンダーボックス”(12/17まで)。

展覧会自体は知っていたが、当初はパスするつもりだった。少し前、各美術館の来年の展覧会スケジュールをHPでチェックしていたとき、なんとはなしにみたこの展覧会の出品リストに嬉しい作品があった。右の狩野永徳作、“松鷹図屏風”である。これは永徳の絵では“唐獅子図”とともに、長らく追っかけている作品なので、喜び勇んで出かけた。

全国25の大学や機関から出品された資料は学術的に価値のあるものばかり。で、まずこちらのほうから。大学はその地域の自然、文化遺産や歴史的に重要な資料を保存し、研究に使っている。動物関連では、島根大学ミュージアムには“ニホンアシカ剥製標本”があり、琉球大学資料館からは“イリオモテヤマネコの生後間もない幼獣標本”、北海道大学博物館からは1879年に生息していた“ヤマゲラ標本”がでている。

古代人の骸骨の展示(九州大学総合研究博物館)も興味深い。8年くらい前、山口県の豊北町にある“土井ヶ浜遺跡”を訪問し、弥生人の頭蓋骨を学習したので、ちょうどいいおさらいになった。縄文人と弥生人の頭蓋骨を並べ、左半分が骨格から想像した実際の顔になってるのがおもしろい。石膏でできた顔は明らかに違う。縄文人の顔は眼窩、鼻が低く幅広で、彫りの深い精悍な感じがするのに対し、弥生人は眼窩、鼻が高く、幅狭で、凹凸の少ないのっぺらした顔立ちである。

今回の収穫は国立科学博物館が所蔵する“田上隕石”。重量は174㎏あり、日本に落下した一番重い隕石だそうだ。明治18年(1885)頃、滋賀県大津市にある田上山の山中で発見されたという。また、大きな“樹齢950年の木曾檜輪切り標本”(名古屋大学博物館)、“屋久杉の円盤”(宮崎大学農業博物館)をみれたのも貴重な経験である。

絵画は2点ある。椿貞雄の“菊子遊戯之図”(山形大学博物館)と狩野永徳の“松鷹図屏風”(東芸大美)。“菊子遊戯之図”はぱっとみると岸田劉生の絵かと錯覚する。椿は銀座で劉生の個展をみて感銘を受け、その後弟子として、また友人として劉生と交流したから、自然と画風が似てくる。

“松鷹図屏風”は大きな松の枝に羽を休める鷹を向かい合わせに配したスケール感のある屏風。右は右隻。左隻では白い鷹はとまった枝から金雲や峻厳な三角岩のある下のほうを眺めるように描かれている。これと較べると右の鷹は眼が鋭く、前方を凝視する姿が雄々しい。幹を誇張して太く斜めにドンと描かれた松、枝には堂々とした鷹、そしてリズミカルに横に流れる松の緑の葉とふわふわとした金雲。桃山時代の武将たちを鼓舞するにはうってつけの画面構成である。

狩野永徳も残りは“唐獅子図”だけとなった。これは来年秋、京博である回顧展で見られるだろう。

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2006.12.11

旭山動物園

583TVのニュースで旭川市旭山動物園における冬の最大のイベントであるペンギンの行進をみた。

昨年もペンギンの歩く姿をみてニコニコ顔になったが、今年は一ヶ月くらい前ここを訪問したので、ペンギンたちにより一層親しみを覚える。

ガイドさんの話しだと、散歩の先頭にいるのがリーダー格のペンギンで、全部のペンギンが散歩するのではなく、行きたいものだけが行進しているらしい。3日前、旭川の気温は-22℃。夏の暑さは苦にならないのに、冬の寒さにはからっきし弱いので、冬の北海道を旅行することはまずない。だから、ペンギンの行進はこれからもTVで楽しむことにしたい。プールで泳ぎまわるペンギンを水中トンネルから間近に見て、毛のようにみえるふさふさした羽根などを実感したのでTVでも十分楽しめる。

動物園に入ったのは中学校1,2年の頃以来。随分昔のことだが、園のなかにいた動物で記憶に強く残っているのは、大きな顔に鮮やかな緑や赤の縦筋があるマントヒヒ、緑の羽を大きく広げた孔雀、うすピンクの羽根が美しいフラミンゴ、硬そうで鎧のような皮膚をもつアルマジロ、檻の中を絶えず動き回っているチーター?豹?などなど。動きがあったり、体の色が目立つ生き物をよく覚えている。

では、旭山動物園へはどうして全国各地から大勢の人が押し寄せるのか?入館して人気の秘密がわかった。ここには可愛いパンダや立ち歩きの出来るレッサーパンダ風太など珍しい、また変わった動物がいるわけではない。ニホンザル、チンパンジー、オランウータン、ライオン、アザラシ、ペンギン、ホッキョクグマなどほかの動物園でもみられる馴染みの動物ばかりである。

でも、ここでは動物を間近に見られるので、その動きや体の毛や皮膚の状態をみて素直に感動する!映像や写真で見た動物ではない、生のペンギンやアザラシ、ホッキョクグマが最接近してくるのである。これに子供たちはキャーキャー言って大喜びだが、隣にいる大人だって声こそ出しはしないが、興奮度は子供と変わりはしない。あざらし館では左のように太さ1.5mの円柱水槽をアザラシが行き交う姿を360度から見られる。スピーディにこの筒の中に入ったり出たりし、弾力的な皮膚を見せてくれるアザラシはカッコいいジャパンポップス歌手や歌舞伎の人気役者のようにみえる。

こういう動物の行動や生活を見せるやり方を“行動展示”というそうだ。従来型の遠くから絵や彫刻をみるように動物を眺めるのと較べると、たしかにこちらのほうが数倍楽しい。馴染みの動物なのに見せ方によりこうも楽しさがちがうものかと感心する。新たな施設をつくったり、動物の習性や行動をあの手この手で見せようと絶えず工夫しているところがエライ。

オランウータンが餌を食べる“モグモグタイム”で高さ17m、長さ13mのロープを綱渡りするのを見たかったのだが、時間が合わずみれなかった。残念!でも、ホッキョクグマをはじめてみたのでちょっと嬉しい気持ち。ほかの動物園もここのやり方をどんどん真似たらいいと思う。動物と戯むれるのもいいものである。

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2006.12.10

映画「歌麿をめぐる五人の女」

582先月末、BS2で溝口健二監督の「歌麿をめぐる五人の女」(1946)を放映していた。

古い映画(白黒)なのでフィルムのコンディションが良好とはいえず、台詞がよく聞き取れない箇所がでてくるが、当代一の美人画絵師として人気を誇った喜多川歌麿のことを扱った映画なので興味深くみた。

歌麿がかかわる五人の女の物語は娯楽時代小説としてつくられたフィクションなので、とくに心が動かされるということはない。関心があるのは歌麿がどんな絵師だったかという点。溝口健二が解釈する歌麿像だから、実際の歌麿とは当然ギャップはある。でも、映画化にあたっては、それまでにつくられた歌麿のイメージや事実を参考にしているだろうから、歌麿の実像と大きくズレているとも思えない。

なるほど!歌麿だったらこれはありかもという場面が出てくる。これが収穫だった。難波屋おきたの恋敵である吉原の花魁、おまんの背中に刺青の下絵を描くシーンがある。ここで歌麿がはく台詞と行動に固唾を呑んだ。“俺は大勢の女の肌をみてきたが、お前さんの肌ほど美しいものはない。お願げえだから、絵を描く前に背中に触らせてくれ!”このとき、瞬時に先頃見た映画「クリムト」(拙ブログ11/5)のことを思い出した。クリムトは“モデルに触れないと描けない”画家といわれている。クリムトが描くエロスの香りがするなまめかしい美女を見るとそのことが腹にストンと落ちる。

歌麿もクリムト同様、観る者をうっとりさせる女性を描いた。歌麿の描く美人像はクリムトの細身で官能的な女とはちがい、ふっくらとした顔、切れ長の眼、肉付きのいい体をしたとびっきりの美人タイプ。右の絵のモデルとなった女は寛政5年(1793)ごろ、江戸で一番の美人といわれた難波屋おきた。超美人はおきただけではない。容貌を競った高島おひさ、富本豊ひなも一緒にして描いてしまう。ビッグ3の美人が一枚の絵に描かれているのだから、これはもう跳ぶように売れる。

映画では、もうひとつ面白い場面がある。これは明らかに鮑取りの海女を描いた“鮑取り”にヒントを得ている。海岸ちかくにある別邸で、大名が上半身裸の大勢の腰元が浜で魚とりをするのを満足げに眺めている。周りは下々の者には観られないように幕が張られているが、死角があり、その家の座敷から蔦屋重三郎や歌麿らが覗き見し、この光景を楽しんでいる。歌麿は一人の腰元を食い入るように眺め、“蔦三、あの女を描きたいから、なんとかして連れてきてくれ!”と懇願する。で、蔦屋重三郎のコネで連れてきたその腰元を歌麿は眼を輝かせて描く。それが“鮑取り”である。この映画で贔屓の歌麿にまた少し近づけたような気がする。

盛況だった江戸東博の“ボストン美蔵肉筆浮世絵名品展”は12/10に終了したが、次のビックな浮世絵展が迫っている。来年1/3から太田記念美術館ではじまる“ギメ美術館蔵浮世絵名品展”(前期:1/3~26、後期:2/1~25)。出展数190点のうち、歌麿の絵が19点あるという。手元にある歌麿の画集にはギメ美所蔵の名品がいくつも掲載されている。そのなかのどれがやってくるか、開幕が待ち遠しい。

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2006.12.09

揺れる近代展の岸田劉生

581東近美の“揺れる近代展~日本画と洋画のはざまに”は12/5から後期になり(12/24まで)、一部作品が替わったので、また出かけた。

お目当ては狩野芳崖の“不動明王”(重文、東芸大美蔵)。ド派手な色彩に圧倒された“仁王捉鬼”(拙ブログ
11/19)と較べ、1年あとに制作された“不動明王”は伝統的な仏画の基準作と見た目はあまりかわらない。

大きな目をつりあげ、牙をみせ口をつむぐ面構えをじっとみていると、強烈な威厳を感じ、容易には近づけない。が、画面構成や体の細部の表現には洋画の影響もみられる。不動明王が発する光に強弱をつけているため、暗いはずの洞窟が立体的に見え、渦巻状に逆立っているうす青の頭の髪には細い白線が細密に引かれている。また、右手にもっている剣がサーベルみたいなところも面白い。

念願の絵を目の中に入れたので、あとは後期にでてきた絵を中心に気楽にみていった。そのなかで感激度が一時的に大きく上がったのをいくつかあげると。小茂田青樹の“出雲江角港”、萬鉄五郎の水墨画“橋下遠望図”、岸田劉生の右の日本画“裸の麗子”、小杉放菴の“椿”、川端龍子の“佳人好在”。“出雲江角港”と“椿”はここの平常展によく登場する人気の高い作品で、“椿”は館の図録にも掲載されている。

一時松江に住んでいた小茂田の描いた“出雲江角港”はいつも感じ入る。広島にいたころ、松江や出雲へは何度も行ったのでこの絵が描く情景を実感できる。感心するのが静かな港町の雰囲気がしみじみ伝わってくる画面構成。小茂田の細密描写の技術は卓越しており、家々の赤茶色の屋根瓦のリアルな質感にも驚かされる。そして、赤茶色の瓦と山に接する海の細い緑面の対比が見事。

岸田劉生の“裸の麗子”(画像の右)に心が和む。この絵は3年前にも見た。岸田劉生はデュラーら北方ルネサンス画家の影響をうけて、最初の麗子像を描いたあと、今度は中国画の“寒山捨得図”や初期肉筆浮世絵に霊感を得て、ちょっと不気味な笑いを見せる麗子像を描く。画風をガラッと変えるのは才能豊かな画家の証。通期で展示されている笑う“野童女”同様、日本画の“裸の麗子”でも、ひょこっと立つ子犬と対話している麗子の口元は緩んでいる。麗子の頭は胸から下と較べると異常に大きいが、顔立ちは大人びて観音さまのように美しい。

ギョッとする展覧会のネーミングに引寄せられるのか、会場には結構人がいる。日本画家、洋画家のビッグネームの作品も粒が揃っているので、じっくり鑑賞すると収穫の多い展覧会ではなかろうか。

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2006.12.08

出光美名品展の勝川春章

580出光美術館の開館40周年を記念した所蔵名品展も今日からはじまるパートⅡの後期(12/8~24)で終了する。今回もお目当ての作品が沢山でてくるので、早速出かけた。前期の記事は拙ブログ11/22

入ってすぐのところに展示してある“韃靼人狩猟図屏風”(狩野光信)にいきなり足がとまる。目を奪われるのは鹿や猪、虎を追いかけて疾走する馬の躍動感あふれるポーズ。前期の“西王母・東方朔図”とともに光信の優品をみれたのは大きな収穫。昨年はじめにあった“源氏絵展”にでてた狩野探幽の“源氏物語賢木・澪標図”をまたじっくりみた。左隻(澪標)の明石の君と再会した源氏のまわりに控える従者たちの人物表現、衣装の柄、そして一部の者をおおい隠すように描かれた緑の松原に魅せられる。

琳派では宗達の猫のような虎(拙ブログ05/9/8)にまた会った。芦雪の虎同様、この絵をみてると楽しくなる。お目当ての鈴木其一の“四季花木図屏風”もある。左の紅葉より右の紅白梅のほうがぐっとくる。9/30の朝日新聞に、国立劇場の新しくつくられた緞帳はこの屏風ということが書かれていた。前期に其一の“蔬菜群虫図”といういい絵がでていたが、今回は同じ調子の酒井抱一作、“糸桜・萩図”があった。萩の絵にはいつも惹きつけられる。

後期の肉筆浮世絵は勝川春章が描いた上の“美人鑑賞図”、英一蝶の“四季日待図巻”(重文)、岩佐又兵衛の“伊勢物語図”、宮川長春の“立姿美人図”、鳥文斎英之の“二美人図”、そして葛飾北斎の“鍾馗騎獅図”。“四季日待図巻”は一蝶が島流しされた三宅島で描いた風俗画。右には座敷で弓矢遊びや囲碁に興じたり、女に酒を注いでもらう男たちが斜めの構図で、左には夜、月とホトトギスの下で踊る女が描かれている。

春章の“美人鑑賞図”の見所は女たちが着ている衣装の色と紋様。深い青の着物の足元部分は金泥で細い線が丁寧に引かれている。右の紫には蝶の柄、帯には鶴がみえる。二人いる女の子が身に着けている赤の着物の柄は洒落た感じのする金泥の流水文。この絵をみているといつもとろけそうになる。MOAが所蔵する“雪月花図”(重文、拙ブログ06/1/20)、“婦女風俗十二ヶ月図”(重文)とともに惚れ抜いている絵である。

文人画には、千葉市美術館から帰ったばかりの浦上玉堂の山水画が2点(ともに重文)でている。富岡鉄斎の“口出蓬莱図”は面白い絵。陶磁器は通期出ずっぱりの作品が多いが、後期には鍋島焼の名品“色絵栗樹文皿”、色が鮮やかな柿右衛門様式の“色絵鸚鵡置物”が華を添えている。見てのお楽しみ。質の高い出光コレクションにただただ感服するばかり。

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2006.12.07

MOAの鍋島展

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熱海にあるMOAで“鍋島展”がはじまった(来年1/23まで)。やきものでは今年一番期待してた展覧会である。佐賀県立九州陶磁文化館(9/30~11/12)のあと、ここへ巡回してきた。

総出品数は230点と期待通り、国内にある代表的な鍋島がほとんどある。図録には載っているサントリー美の所蔵する3点と出光美の1点がないのは残念だが(九州会場のみの展示)、これらは過去見たのでパスでもいい。染付、青磁、色絵の技巧を駆使してつくられた鍋島の名品をこれほど沢山見られる機会はめったにないことだから、目に力をこめてみた。

作品はやかれた時期により、1.草創期~家光と鍋島焼の草創、2.成長期~藩窯の移転と生産体制の確立、3.隆盛期~綱吉と元禄・鍋島様式の完成、4.成熟期~吉宗と鍋島焼の成熟、5.衰退期~“家治好み”の新鍋島様式の5つのパートでくくられている。草創期でググッと惹きつけられるのは色合いが素晴らしい“薄瑠璃釉竜胆文変形小皿”。小皿だが、こんな洒落たやきものは観たことがない。成長期のところにあった“色絵鸚鵡文変形猪口”の鸚鵡のポーズと緑の羽にも言葉を失う。

鍋島の大半は深くなだらかな曲面と高い高台をもった木盃形と呼ばれる円形皿。そして、見込みに描かれる文様に中国の影響を受けた伊万里とは異なるモティーフが使われている。面白いのが青磁染付の小皿に描かれた大根。そして、赤唐辛子や豆などがでてくる“色絵野菜尽文皿”(出光美)もある。

隆盛期の元禄時代にやかれた作品には鍋島を代表する名品がずらっとある。MOA自慢の“色絵桃文大皿”(拙ブログ06/2/28)、“色絵宝尽壽字文八角皿”(05/7/3)、佐賀県立九州陶磁文化館が所蔵する上の“色絵三瓢文皿”、真ん中の“染付鷺文三足大皿”(重文)、そして下の“色絵牡丹唐草文水注”(静嘉堂文庫)など。

桃や大根、そして瓢箪の皿にすごく魅了されるのはそのまるい形がこの木盃皿とよくあっているからだと思う。“三瓢文皿”でハットするのは青海波文を背景に皿の外にはみ出すように瓢箪を配置する大胆な構成。モティーフを自在に散らしている感じが実にいい。染付大皿、“鷺文”は“桃文”とともに鍋島焼の定番。96年の“文明とやきもの展”(九州陶磁文化館)以来、久しぶりにみた。白鷺の描写、背景のムラのない濃みの技が見事。“色絵牡丹唐草文水注”は形のよさ、白地に映える赤や緑などの鮮やかな色合いに目を奪われる。

ほかにも格調の高い名品がいくつもある。会場ではワクワク、ドキドキの連続だった。目が癒され、体が熱くなる感激度200%の展覧会であった。なお、この大鍋島展はこのあと次の美術館を巡回する。
 ・大阪市立東洋陶磁美術館:07/2/10~3/25
 ・福島県立美術館:4/7~5/20

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2006.12.04

泉屋博古館の中国陶磁展

263泉屋博古館の“中国陶磁展”(12/10まで)にはびっくりするほどの名品が集まっている。

足を運んだのはこの展覧会への期待が高かったわけでなく、ひとえに中国磁器という引き出しにいれる数を増やすため。今回の展示は所蔵品だろうから、いくら住友財閥のコレクションとはいえ、最近見た静嘉堂文庫級の優品(拙ブログ11/1)はないだろうと思っていた。が、これが大間違いだった。

なんと、ここの所蔵品ではなく、国内にあるAクラスの中国のやきものが展示してあった。これは嬉しい誤算。出品数は展示室のスペースの関係で67点と多くないが、過去開催され、評判のよかった中国磁器の展覧会に出品されたものがいくつもある。“ええーこの優品が出ているの!”とおおげさにいうと放心状態でみた。

99年、内外の美術館から超一級品を集めた“神品といわれたやきもの 宋磁展”というすごいやきもの展があったが、ここに出てたのが5点ある。右の“青白磁牡丹唐草文瓶”(景徳鎮窯 北宋)、“青磁輪花鉢”(南宋官窯 東博 重文)、“青磁管耳瓶”(南宋官窯)、“青磁瓶(米色青磁)”(南宋官窯)、“白地黒掻落し牡丹唐草文瓶”(磁州窯 北宋 イセ文化基金)。

また、国内と中国北京故宮博物院、韓国中央博物館から代表的なやきものが総結集した“東洋陶磁名品展”(94年、リニューアル愛知県陶磁資料館完成記念展)で展示された“三彩貼花文鳳首水注”(唐 重美)、“青花龍濤文盤”(景徳鎮窯 明)、“五彩龍鳳唐草文合子”(景徳鎮窯 明 重美)、“緑釉瓶”(景徳鎮窯 清)、“琺瑯彩西洋人物文連瓶”(景徳鎮窯 清 永青文庫 重美)もある。

こうしたやきもの展の定番となっている代表作がずらっと出ているのだからすごい。久しぶりにみた右の“青白磁牡丹唐草文瓶”の美しい色合いに声がでない。大好きな青磁の名品にまた出会えたのは大きな喜び。“青花龍濤文盤”は小さい器だが、見込みの龍と波濤のフォルムが見事。

鮮やかな色に魅了されるのは、“法花蓮池水禽文瓶”(景徳鎮窯 明 イセ文化基金 重美)の青、赤地に黄色の龍が映える“紅地黄彩雲龍文壷”(景徳鎮窯 明 大阪市立東洋陶磁美)、黄色のまばゆい“黄釉輪花盤”(景徳鎮窯 清 イセ文化基金)、形と緑の色がえも言われぬ美しさを醸し出している“緑釉瓶”。

“これぞ中国のやきもの!”という気がする本当にいい展覧会だった。ミューズに感謝。

なお、12/5,6はココログのシステムメンテナンスのため、お休みします。

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2006.12.03

山種美術館の千住博展

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待望の“千住博展”(12/2~3/4)が山種美術館ではじまったので、初日に見てきた。今回は館のHPをみず、目の前に現われる新作“ウォーターフォール”と真っ白な気持ちで向き合おうと思っていた。

入館してもらったチラシをみると、今年制作された“ウォーターフォール”はフィラデルフィアにある純和風の日本建築、“松風荘”に来年の4月おさめられるという。フィラデルフィアの在住日本人や千住博のファン、ジャーナリストにとって注目の作品なのである。日本ではここでしか公開されない。いまや世界的にその才能が評価されている千住博の襖絵を多くの人にみてもらおうという思いなのか、会期は来年の3/4までと一人の作家の展示としては異例の長さ。HPでこの特別展の情報を得たとき、なぜこんなロングラン興行なのかわからなかったが、こういうことだった。

千住博の“ウォーターフォール”は過去、ここで95年に制作されたもの(山種美蔵)と大徳寺聚光院伊東別院の襖絵(02年5月完成)をみた。今回は松風荘の襖絵6点が全部飾られているのだから、これは貴重な鑑賞空間である。聚光院別院のときでも、2点しかなかった。ここに紹介するのはそのうちの3点。午前中でまだ混んでなかったのでじっくり見た。心を静め、松風荘のなかの畳に座っているような気持ちで眺めると、じわじわと大きな感動が沸き起こってきた。α波が相当出ている感じ。

ここに描かれた滝は実景ではない。絵の具による滝であり、千住博の心象風景としての滝である。薄い茶色の地に上から幾筋も流れ落ちる水は色々なフォルムを見せる。目を横にゆっくり移動させると、2,3の形がイメージされた。古代人が狩猟のとき使う先が鋭利に尖ったモリのような流れ、蜘蛛の巣の一部破れたところのように細い線がまっすぐでなく斜めに引かれているもの、そして水が次から次と重なり落ちるため濃い白になっているところ。。

流れの間隔のとり方で造形美のヴァージョンが生まれる。上は横長の襖いっぱいに多くの水がいっせいに流れ落ちているのに対し、真ん中は水が中央にかたまり、日光の華厳の滝のようにどどどーっと落下している。また、下は右半分のほうが水の密度が濃く、左へいくにつれ間隔が大きくなっている。下の襖の向かい側に展示してあったのは左のほうに流れが集まり、右が疎なものだった。これは自分だけの好みなのか、皆も同じように感じるのかわからないが、下の襖のほうがしっくりする。何かの美術本に“人間の目は対象を左から右へ見ていく”というようなことが書いてあったから、このためかもしれない。

3枚の襖絵とも、沢山の水は一見すると同じ平面状を水しぶきをあげて流れ落ちているように見える。が、上と下の襖絵の滝つぼをよくみると、横にのびる線が数本平行に引かれている。これで奥行きをつくり、重層的な滝の風景を感じさせている。これとは対照的に、真ん中の横線は一本しかなく、上から勢いよく落ちた水は左右に超細長の楕円形のように広がるイメージを与えている。

幻想的で荘厳な滝に200%感動した。千住博の“ウォーターフォール”にますますのめり込んでいく。

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2006.12.02

戸方庵井上コレクション名品展

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板橋区立美術館で行われている“戸方庵井上コレクション名品展”(07/1/14まで)は期待値をはるかに上回る良質の展覧会だった。群馬県立近代美術館にはコレクター、井上房一郎氏(1898~1993)の蒐集した中国絵画、日本絵画の質の高い作品が230点(寄贈)があり、今回そのなかから69点が展示されている。

数年前、ある美術本に掲載されていた応挙の上の“青鸚哥図”(あおいんこず、部分)で、戸方庵コレクションの存在を知った。奈良であった“応挙・芦雪”でこの絵が見られるかなと期待していたが、これはなかった。後知恵だが、出品されなかったのは11/25からはじまった板橋区立美の展覧会と重なったためではないかと思う。この展覧会の作品についての情報がまったく無かったのだが、応挙の絵は出てくるものだと信じ、遠山美術館のあと、ここに立ち寄った。

果たして、お目当ての“青鸚哥図”はあった。有難い。口ばしと足の鮮やかな朱色、緑の羽根の細かい描写を夢中でみた。が、驚いたことにこの絵は目玉の一つに過ぎなかった!ほかにもいい絵が沢山ある。構成は中国画が11点、日本画が58点。入ってすぐの中国画のコーナーでは、牧谿の“芦雁図”や因陀羅の“芦葉達磨図”がある。“ええー、牧谿まで集めているの!” のっけからコレクションのすごさを見せつけられた感じである。その隣に銭永の“墨梅図”といういい絵があった。大阪の正木美術館に如拙の同名の名画があるが、画面中央、下から上にまっすぐのびる若枝や横に曲がる枝が梅という木の特徴とよくとらえているこの絵にも魅せられる。

日本画も名品ぞろい。唸ってしまうのが蛇足、雪村、海北友松の水墨山水画。墨の濃淡で雲海や霞のなかに浮かんでいるように一部しか描かれない山や木々、海はまさに中国山水画の世界。あれもこれもいいなと興奮状態でガラスケースの前を進んでいたとき、わあー!と思わず声が出そうになったのが真ん中の尾形乾山の“富士山図”と下の葛飾北斎の肉筆画、“鯉図”(部分)。大収穫の絵である。

乾山にこんな明快に美しい絵があったとは。頂上の白と裾野の緑の対比が素晴しい。右のほうに大きな松が3本立っているが、これがシュールな感じに見えないのは、多分この絵を茶碗の色絵装飾のように受け止めるからだろう。北斎の“鯉図”にも息を呑む。昨年あった北斎展にも同じように描かれた鯉の絵(拙ブログ05/11/17)があったから、鯉自体は新鮮ではないが、一匹の鯉が上にほうに向かって泳いでいるという構図にびっくりする。美術館もこの絵がお気に入りのようで、展覧会のポスターにこれを使っている。

ほかで足が止まるのは中村芳中の“梅図”、谷文晁のスケールの大きな風景画、“隅田川両岸図”、一度みたことのある白隠の“座頭渡橋図”、ユーモラスな仙厓の“万才図”。応挙の絵をみるために行ったのに、プラスαが二乗でついていた。こんなに腹の底から嬉しくなる展覧会も久しぶり。今、その余韻に浸っている。

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2006.12.01

英一蝶の布晒舞図

569埼玉県の桶川市と川越市の中間あたりにある遠山記念館を訪問した。

現在ここで行われている“江戸絵画へのいざない展”(12/20まで)に出品されている右の“布晒舞図”(英一蝶)を見るためである。追っかけていた絵なので、HPを定点観測してきたが、やっと見る機会に恵まれた。

はじめての美術館だから、最初は勝手がつかめなかったが、一階のあまり広くない左右二つの部屋に全部で25点展示してあった。お目当ての絵以外はどうかな?という気持ちが心の隅にあったが、すぐにこれが過小評価だったことに気がついた。ビッグネームの絵がいくつもある。で、目に力を入れなおしてこれらと向き合った。

琳派は3点ある。宗達の大きな虎が描かれた“大蟲図”、光琳の“虎渓三笑図”、そして画集で見たことのある鈴木其一の“業平東下り図”。掛け軸“業平東下り図”が素晴らしい。本画の回りにも楓やつくし、蕨といった季節の草花が装飾性豊かに描かれている。以前、子供の守一が模写した絵(細見美)をみたことがあるが、本物が目の前にあった。業平が乗る馬の頭を右にひねったポーズが画面に立体感を与え、業平と横のいる子供が着ている衣装の色や綺麗な柄や上に描かれた富士の山は平安王朝の雅な雰囲気をたっぷり表現している。

江戸狩野派の絵師、狩野晴川院養信の“源氏物語子の日図”にも魅せられる。江戸後期の制作なので、色がよく残っていて、金地に描かれる源氏雲や松の濃い緑が貴族や宮、女房が集う典雅な宮廷内をいっそう引立てている。

英一蝶の“布晒舞図”(重文)は中くらいの大きさの掛け軸。拙ブログ05/7/15で紹介した“雨宿図屏風”とは対照的に華やかな踊りの場面が描かれている。見所は長い晒布が空中でリズミカルにくねくね曲がっているところ。これをみると蛇が急いで逃げるとき、胴体をくねくね曲げるのを思い出す。新体操でリボンを操る選手の体は筋肉質だが、この踊り子は手は細いが体形はぽちゃぽちゃ系。

右手にもった扇子を高くあげ、左手で白い布を後ろのお囃子の掛け声と三味線や鼓の音にあわせて、調子よく振り廻している。鼓を叩く男は身を前にのり出さんばかりで、すぐ後ろの男も口を大きく開けて、声を出している。この絵は一蝶が三宅島に流されているときに描かれた。芸は身を助けるとはよく言ったもので、江戸で一蝶の風俗画を好んだ支援者たちが画材を送り、絵を注文したようだ。

ここの江戸絵画コレクションのレベルは相当高い。横浜から電車やバスを乗り継いで3時間弱かかったが、念願の絵に会え、またほかにもいい絵があったから、大満足の美術館訪問だった。

なお、英一蝶が島流し中に制作した絵、“四季日待図巻”(重文)が出光美所蔵名品展Ⅱの後期(12/8~12/24)に登場するのでお見逃しなく。これは一度見たことがあるが、楽しい絵。そして、来年3/30にオープンする新サントリー美術館の開館記念展には所蔵する“吉原風俗図巻”(これも島で制作)が展示されるような気がする。こちらはまだなので、期待したい。

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