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2006.11.02

夏珪・牧谿の山水画

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定期的に通っている畠山記念館に待望の中国山水画が登場した。10/3からはじまった“中国宋元画の精華展”(12/10まで)は展示期間が作品によって異なるので、観たい絵の展示がうまく重なる日をみつけて日程を調整しなくてはいけない。一番都合のいい10/31、満を持して出かけた。

首を長くして待っていた牧谿(もっけい)が描いた瀟湘八景(しょうしょう)のひとつ、下の国宝“煙寺晩鐘図”が展示されるのは10/31~11/12。わずか2週間しか飾られないのはこの絵の描かれたのが700年くらい前なので、コンデションの維持に神経をつかっているから。この絵と同様、鑑賞を待ち望んでいた夏珪(かけい)作、上の“山水図”(重文)の展示期間は開幕日から11/5まで。

04年、根津美術館で開かれた“南宋絵画展”には国内にある代表的な南宋画がほとんど集結したのに、この美術館が所蔵する“煙寺晩鐘図”はでてこなかった。これまで縁にめぐまれなかったがやっとお目にかかれた。ここで煙はけむりではなく、霧や霞のこと。掛軸に描かれているのは二つの横にのびる光の帯の間に浮かび上がる寺の屋根と木々、そして霞だけ。画面のほとんどはうすい墨が塗られているだけなので、ガラスケースからすこし離れると何が描いてあるかわからなくなる。

根津美が所蔵する“漁村夕照図”(国宝)も自然界の大気や光の変化を表現している点では同じだが、山々を背にした漁村の夕暮れのひとときがもうすこしはっきりと描かれていた。これと較べると、この“煙寺晩鐘”は対象を少なく描いて大気の微妙な変化を感じさせ、鐘の音まで聴き取らせようとするのだから、観る者は心を鎮め、感性を真空状態にしてないと絵の真髄には迫れない。この絵をもっと感じるため、洞庭湖の南にあるという瀟湘か、あるいは似たような景勝地を訪ねてみたくなった。

上の夏珪の“山水図”は雪舟が“山水長巻”(国宝)を描くとき、手本にした絵。また、狩野探幽もこの絵を模写している(大倉集古館蔵の“探幽縮図”)。夏珪は南宋末から元時代初期に絵を描いた牧谿よりはすこし前の南宋の中頃(1194~1224)、活躍した宮廷画家。長らく追っかけていた“山水図”は予想以上の名品だった。真ん中に屋根のある橋を描き、左右に木々と切り立った岩を配する安定感のある構図がしみじみいい。そして、家屋の屋根から掲げられた酒旗が風になびく様、松や柳の枝の細かい描写に魅了される。

念願だった中国山水画の名品に会えて、天にも昇る気持ち。出展数は少ないが大きな満足が得られた中国絵画展だった。

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