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2006.11.25

応挙と芦雪展 その二 応挙

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後期にでている応挙の作品も見所いっぱい。中でも、上の“牡丹孔雀図”(重文)、真ん中の“雲龍図”(重文)、下の“大瀑布図”が一緒に見られるのだから、これほど幸せなことはない。すでに見ている絵であるが、応挙の代表作として画集に必ず収録されている傑作なので、観ててワクワクする。

今年は応挙の孔雀図に縁がある。ブリジストン美(拙ブログ4/10)、三の丸尚蔵館でもみた。今回出ている相国寺蔵の“牡丹孔雀図”は応挙の写生画を象徴する文化記号。3年前大阪で見たとき同様、大変感動した。応挙は“写形純熟ののち、気韻生ず”と言っている。つまり、形を正確に写し取る(写形)ことが出来れば、対象の本質(気韻)がおのずと出てくるという。

緑色の首に魚の鱗のような紋様が金泥の細い線で精緻に表現されているところや、ゴージャスな黄金の丸文様がいくつも連続する雄の尾羽を観ていると、確かに目の前にいる孔雀からはつよい生命力が伝わってくる。そして、絵として目を楽しませてくれるのは真ん中の羽にみられる美しい青のグラデーション。装飾的な色彩表現は本物の孔雀をこえている。

03年にあった大回顧展で龍の迫力に圧倒された“雲龍図”は今年1月、京博の平常展でもみた。そのとき時間をかけてじっくりみたので、今回も同じように目を動かした。真ん中は右隻(部分)で上空に昇る龍が、左隻には玉を持つ龍が描かれている。応挙は龍図をいくつも制作しているが、この龍の絵はとびぬけていい。他の絵師が描いた龍でこの絵に見劣りしないのは国内では海北友松の“雲龍図”(重文、建仁寺、ここで12/3まで開催している“大桃山展”に展示中)しかない。ちなみに、雲龍図屏風のビッグ4は国内にある応挙と友松の絵、そしてアメリカにある宗達作(ワシントンフリーア美)と曽我蕭白作(ボストン美、辻氏が“ギョッとする江戸絵画”で紹介していた)。

応挙の龍がほかの3点と違うのは墨に金泥で彩色されていること。頭の上や口のまわりの髭、胴体、足からはえる毛はキラキラと光り、そしてゴールドの鱗文。これほど見栄えのする龍は見たことがない。さらに驚くのは龍の体や渦巻く雲、波濤の量感表現。しなやかな筋肉を思わせる龍の胴、むくむくとした白い雲の塊、激しく飛び散る波頭や岩の立体感が観る者を圧倒する。この感じは絵の前に立たないとわからない。

下の“大瀑布図”は4m近くある大きな掛け軸。制作の由来が面白い。これは応挙の支援者、円満院の祐常門主の依頼で描かれた。円満院の庭には滝がなく、祐常門主が日頃からそれを残念がっていたので、応挙は絵に滝を描いて贈ったという。で、門主はそれを庭の木につるして大喜び。これは今で言うとインスタレーション。現代アーティストと同じ発想の作品を応挙は18世紀後半すでにつくっていた。あまりに大きな掛け軸なので滝つぼあたりで手前に折れている。じっとみていると下の岩にかかる水しぶきがこちらにもとんでくるのではと錯覚を覚える。水の落下するゴーという音を聞きながら、時間がたつのも忘れて眺めていた。

ほかの作品で魅了されたのはこれまで見たことない大きな布袋図。しかも体中毛だらけ。口、顎、鼻、胸の毛だけでなく腹、足の甲、腕まで毛がはえている。布袋さんはこんなに毛深かった!?“墨は五彩を兼ねる(墨だけで多彩な色を表現できる)”というのを実感するのが“破墨山水図”。濃い墨が輝いている。また、“朝顔図”の目の覚めるような青い花に感動した。

03年の回顧展で展示替えのため観れなかった作品はこの展覧会で相当数リカバリーできたから、応挙は済みマークがつけられる。奈良県美に感謝。

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コメント

いづつやさん、こんにちは。

僕も先日『応挙と芦雪』展を見に行ったので、こちらと芦雪の記事のほうにトラックバックさせていただきました。

僕のような美術館巡りを始めて1,2年のものには、今回の『応挙と芦雪』展はまさに応挙と芦雪の代表作を一気に見ることができて非常に満足度の高い展覧会でした。

投稿: いぬまゆ | 2006.11.26 11:16

こんにちは☆いづつやさん。
大瀑布図。あまりに大きいから、下の部分が、地面に折れ曲がってるのかどうか?折れ曲がらせることを前提にあの長い絵を描いたようですね☆千住博氏のウォーター・フォールは、絵の下の床に本当の水を張って展示した。ということを伺って、いづつやさんがおっしゃる18世紀の応挙の斬新な感覚のインスタレーションに☆驚きと感動をとても強く感じます☆すごいですね。。。応挙☆

投稿: rossa | 2006.11.26 11:28

to いぬまゆさん
応挙と芦雪の代表作が沢山でてましたので、200%
満足のいく回顧展でしたね。プライスコレクションの
“象と牛図”に続き、後期にはお目当ての芦雪の
“群猿図”もみれましたので、芦雪もほぼ済みマーク
がつきました。

残るはメトロポリタン美の“海浜奇勝図”です。この
絵になんとしても会いたいですね。

投稿: いづつや | 2006.11.26 15:51

to rossaさん
こんにちは。4mもある”大瀑布図”は庭で見るときは
まっすぐにし、屋敷では下を曲げてみることを想定して
制作したのでしょうね。

襖絵でも部屋の角で二つの襖が接する場合、この直角を
意識して画面を構成してますから、応挙の頭は相当緻密
ですね。インスタレーションをつくったり、マグリッドを先取り
するようなシュールな鯉の滝登りの絵を描いたり、まった
くすごい画家です。

投稿: いづつや | 2006.11.26 16:09

いづつやさん、こんばんは
私は応挙についてはまだまだ「済」マークはつきませんが、今回多くの作品を見ることができて満足です。
「雲龍図」は物凄い迫力でした。特に黒雲の表現は本物に見えるくらいの迫力で、隣の蘆雪の「龍図」と相まって足がすくむような思いでした。
以前、応挙が滝の絵を依頼された時、何日か本物の滝を観察し、見事にそれをものにしたという話を聞いたことがありますが、その絵が「大瀑布図」なのかな?と思いました。
それくらい迫力もありましたし、水しぶきや轟音すら聞こえるような絵でした。絵の依頼主が庭の木にこの絵をかけて楽しんだのもわかるような気がします。

投稿: アイレ | 2006.12.03 22:56

to アイレさん
“大瀑布図”は完璧なインスタレーションですね。
現代アーティストのアイデアを先取りする作品を
つくるのですから、応挙の知力と感性はすごいです。

リキテンスタインの絵と本質的に同じ絵画空間の
花鳥画を描く若冲(拙ブログ8/21、若冲のここが
好き!その五)、インスタレーションもつくってし
まう応挙、世界に誇れるスーパー絵師ですね。

投稿: いづつや | 2006.12.03 23:58

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天才と奇才の師弟 応挙と芦雪11月23日 奈良県立美術館(〜12月3日・後期展示)  「応挙と芦雪」展(後期)の円山応挙の作品について、簡単なレポをば。 《人物》 「楚蓮香図」楊貴妃と同じくらい有名な、唐代を代表する美女だそうです。顔立ちの艶やかさなら...... [続きを読む]

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