浦上玉堂展
玉という字のついた日本画家が3人いる。古い順から浦上玉堂、川端玉章、川合玉堂。川合が浦上を慕って玉堂と名乗ったのかどうかは知らない。
最初の玉堂、浦上玉堂の回顧展(千葉市美術館、12/3まで)を見た。出展数230点の大回顧展である。
相当数の作品が会期中、展示替えになる。4期に区分されているが、11/3~19と11/21~12/3の2回足を運べば、ほぼ全点鑑賞できるようになっている。11/21からは代表作中の代表作、国宝“東雲篩雪図”(とううんしせつず)がでてくる。
浦上玉堂(1745~1820)の絵を見る機会はあまりないが、今年は愛知県美で開かれた“江戸絵画展ー木村定三コレクション”(3月)で右の“山紅於染図”(さんこうおせんず、重文)ほか9点にお目にかかった。この回顧展にも同じ8点が出品されている。木村定三というコレクターは重文クラスの玉堂作品を所蔵しているのだから相当の目利き。玉堂の絵をもっているのは木村氏のように個人の趣味人が圧倒的に多い。
玉堂は絵を描いたり、詩を作ったり、琴を自分で製作して弾くなど多芸に秀でた文人だが、50歳までは備前池田家の鴨方支藩に仕える武士だったというから驚き。陰湿ないじめにあって、つい脱藩したくなったのだろうか?備前を出てからは風流人として会津から長崎まで各地を遊歴したという。独学で学んだ絵を買ってくれるパトロンがその土地にいたようだ。
玉堂が描いたのは水墨山水画のみ。いろんなタイプの絵がある。掛軸、小品の画帖、一幅の画面のなかに円形や矩形の独立した山水画を組み合わせたもの、書と扇面画を貼り付けた屏風など。また、書もある。水墨画を描いた気分になるにはこの玉堂の絵を模写するのが一番いいかもしれない。中くらいの太さの黒いサインペンと細い竹ペンを使うと、あまり時間をかけずに木々や山が描けそうである。
池大雅や与謝蕪村の流れをくむ文人画だが、玉堂の絵はかなり前衛的。目の前にある自然をみて心で感じとった風景をのびのびと墨の濃淡・強弱だけで描いており、実景の山河を描いた絵ではない。自分の描きたいような形で描くのだから、西洋の表現主義と同じ絵画表現である。
右の“山紅於染図”はお気に入りの絵。題名の“紅色で染めるよりも山の紅葉はなお赤い”をつい4日前、函館の香雪園にあった紅葉で実感した。目の前の赤に感動しっぱなしだった。応挙や芦雪の山水画には朱色はでてこない。地の白に山肌と木の枝のうすい墨と紅葉の朱と黄色の点々が見事に溶け合い、静寂な美しさを醸し出している。ほかでは構図がいい“山雨染衣図”、“山中結廬図”、彩色画の“山水図”などに魅了された。
この展覧会は“東雲篩雪図”を観るため、もう一回出かけることにしている。そのとき、またとらさんと会うかもしれない。
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コメント
今度の新日曜美術館で浦上玉堂を取り上げるそうですね。
NHKが陰陽説をどのように取り上げるのか興味を持っています。
投稿: とら | 2006.11.13 22:55
こんにちは。
山紅於染図のような光景が実際にあったのですね。
さぞ美しかったことでしょうね。
投稿: 一村雨 | 2006.11.13 23:53
to とらさん
TBがなかなかとんでくれません。陰陽説のことは
次回行ったときにふれようと思います。新日曜美術
館でどんな解説になるか?浦上玉堂をとりあげる
のははじめてですね。写意は画家の頭の中だけにあ
りますから、これを読み解くのは難しいですね。
投稿: いづつや | 2006.11.14 08:08
to 一村雨さん
北海道旅行で期待してなかった紅葉が函館で
みれました。公園にあった紅葉の紅色に大感激し
ました。まさに玉堂の言葉通りです。自然のなか
にある草花の色の美しさをあらためて発見し
ました。
東雲篩雪図はこれまで3回みたのですが、また
でかけます。ほかにも重文がでますので、とても
楽しみです
投稿: いづつや | 2006.11.14 08:22
拙いブログTBさせて下さい。
新日曜美術館で浦上玉堂を初めて知りました。
鑑賞力がありませんが、不思議な感想を持ちました。
投稿: 会津マッチャン | 2006.11.21 17:20
to 会津マッチャンさん
ご無沙汰してます。新日曜美術館の浦上玉堂展を
私も見ました。広島にいたとき、岡山県美で玉堂の
作品をいくつかみました。玉堂の山水画にはこの
番組でふれなかった面白いことがありますので、千葉
県美へもう一回でかけたときに少しふれたいと思っ
てます。
投稿: いづつや | 2006.11.21 22:15