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2006.11.29

東博平常展の名品

567東近美同様、東博の平常展を観るのが家のまわりの散歩のような感覚になっているが、今回みた作品のなかに他館の特別展でみた作品と共振するものがあり、いつもより倍楽しかった。

観る順番は決まっている。本館2Fの国宝室からスタートし、仏教、宮廷の美術、水墨画、屏風と襖絵、江戸絵画、浮世絵と見たあと、1Fに降り、近代美術のところへ行く。そして、最後に東洋館の2Fの中国絵画をみる。

今回観たのは展示替えのあった国宝室から水墨画コーナーにある作品と近代美術、中国絵画。はじめはさほど目に力の入る絵に出くわさなかったが、近代美術と中国絵画ではテンションが上がった。

まず、度肝を抜かれたのは近代美術のところに飾ってあったものすごく大きな孔雀の絵。描いたのは花鳥画を得意とした明治時代の画家、今尾景年(京都生まれ、竹内栖鳳より10歳年上)。奈良で応挙の孔雀図を見たばかりなので、羽根の描き方に目がすぐ反応する。首のまわりの緑に短いゴールド線を丁寧に引き紋様をつくっているところや青のグラデーションは応挙風である。この絵の場合、細部の描写より、大きな画面に描かれている二羽の孔雀の存在そのものに圧倒される。こういう規格外の大きさをもつ絵も刺激があっていい。

この絵以上に感激したのが隣にある吉川霊華の“離騒”。明治神宮の“小堀鞆音展”にでてた仏画の模写作品に見とれたばかりなのに、再度美しい描線に200%魅了された。“離騒”は中国戦国時代、楚の屈原のつくった長詩で、憂き目にあうという意味。楚の朝廷から逐われた失意の屈原が河神に会う場面が描かれている。水の流れやうずまきの動きのある表現、神々しいほどのオーラを放つ2匹の龍に息を呑んだ。はじめてみるこの絵は吉川の代表作と解説があったが、即納得である。仏画の模写がこの傑作に遭遇する前兆であったのか。ここの平常展ではときどき大収穫がある。

ほかは2年以内に見たことのある大観の“五柳先生”、古径の“出湯”、青邨の“燕山之巻”。この中では“出湯”がお気に入り。洋画では、前々から観たかった安井曽太郎の肖像画、“深井英五氏像”があった。また、鈴木長吉の“岩上双虎置物”(鋳造)も目を楽しませてくれる。これらの作品の展示は12/17まで。

東洋館で追っかけていた絵に2点出会った。右の清朝時代の画家が描いた“墨竹図屏風”と“離合山水図”(重文、明時代)。奈良県美に出ていた応挙の長谷川等伯作“松林図”を連想させる“雨竹風竹図屏風”(重文)と“墨竹図屏風”は画風がよく似ている。応挙の絵は林立する竹を墨の濃淡で描き分け、奥行きのある空間をつくっているのに対し、“墨竹図”のほうは竹に近づき、笹を濃い墨を使い勢いのある筆致で描き、竹のもっている強い力をしっかり表現している。尚、この“明清画展”(後期)は12/27まで。

パスポートの有効期限が切れる前に無料でいい絵をいくつもみた。上機嫌で館をあとした。

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コメント

僕は昨日仏像の展覧会ついでに観てきましたがやはりいづつやさんおっしゃる近代絵画のコーナーは圧倒されましたね!
あれだけのものを所有しているのだから国立博物館はやはり歴史と伝統がある。
国宝のコーナーは何でしたっけ、お経でしたよね、無知な僕は何でこれが国宝って思いました/苦笑
表慶館の明治建築も楽しめました。
それというのも混雑がいやで、しかも招待券だったのでさっさと仏像の展覧会見終えてしまったからなのですがー。
いづつやさんは神奈川にお住まいでしたっけ、埼玉方面の美術がでてこないですね。

投稿: oki | 2006.11.29 22:35

to okiさん
大きな孔雀図でしたね。びっくりしました。そして、
見事な“離騒”にKOされました。okiさんのおっし
ゃるように東博はやはり大きな美術館ですね。名品
を色々見せてくれます。

明日は横浜から埼玉の川越まで遠征します。遠山美
術館の“江戸絵画展”に追っかけ作品が出てくるもの
ですから。ちょっとワクワクしてます。そのあと、
板橋区立美に寄ってこれも期待の“群馬県美コレク
ション展”をみることにしてます。

投稿: いづつや | 2006.11.29 22:55

いづつやさん、こんばんは。

僕も東博の平常展を観るのがルーティーンワークとなっている人間の一人ですが、平常展のいづつやさんの回り方と僕の回り方(最後は東洋館の中国絵画でしめるところまで)が全く同じなので思わずコメントを書いてしまいました。

また遠山記念館の『江戸絵画へのいざない』展と板橋区立美術館の『戸方庵井上コレクション名品展』の情報ありがとうございます。すっかり見落としていました。この二つの展覧会については今週末にでも見てこようと思っています。

投稿: いぬまゆ | 2006.11.30 20:10

to いぬまゆさん
東博の美術品を同じ順序でみてるというのは奇遇
ですね。遠山記念館と板橋区立美術館の展覧会は
期待値以上でした。詳しくは明日、明後日のブログ
をご覧になって下さい。

投稿: いづつや | 2006.11.30 23:43

今尾景年の邸宅は現在お料理屋さんになっています。
普請道楽の人だったので細部に見所があり、坪庭も素敵です。
場所は中京区の逓信病院の前です。
「ここで描いてはったんや」と思うと、嬉しくなります。

私は今回「男衾三郎絵詞」に会えてすごく嬉しかったです。
15年くらい待ってました。
表慶館も撮影に気合が入りました。
片山東熊の現存する建築は、これで一応全部中に入ったことになります。

投稿: 遊行七恵 | 2006.12.01 09:24

to 遊行七恵さん
今尾景年の父親は友禅師だったそうですね。今は料理屋
になっているのですか。七恵さんは相変わらず、なん
でもよくご存知ですね!今尾の作品は一度松岡美蔵の
錦鶏の絵をみて、感激したことがあるのですが、今回の
孔雀図にはスーパーびっくりでした。

“男衾三郎絵詞”は弓矢を放つシーンが連続する場面が
気に入ってます。建築については、ぼちぼちなのですが、
七恵さんは相当見られてますね。3週間前、小樽へ行った
とき、辰野金吾が設計した日本銀行小樽支店を見てきま
した。

投稿: いづつや | 2006.12.01 16:00

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