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2006.11.06

ボストン美蔵 肉筆浮世絵展

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期待のボストン美術館所蔵の肉筆浮世絵展(12/10まで、江戸東博)がようやく東京にやってきた。80点の肉筆画は予想以上にコンデションがよく、細やかな描写とあでやかな彩色で描かれた美人像に200%感動した。

ボストン美術館の所蔵する日本美術品はもう完璧に超一級。仏画、雪舟、狩野派、尾形光琳、曽我蕭白、伊藤若冲、浮世絵版画、そして今回日本初公開のビゲローの肉筆浮世絵コレクション。これまで国内では評価の高い出光美術館やMOAの所蔵品や大谷コレクションで肉筆画へ目を慣らしてきて、それなりの参照図ができたので、これらと較べながら輝く名品と向き合った。

肉筆の風俗画や美人画で、一番先に目が行くのはやはり菱川師宣と勝川春章の作品。師宣は2点あり、上の“芝居町・遊里図屏風”(右隻部分)にびっくりした。これほど質のいい風俗画は国内でもなかなか見れない。現在、東博の平常展に飾られている“歌舞伎図屏風”(重文、10/31~12/6)と較べても遜色ないのではなかろうか。華やかな空気を演出する金地と金雲、座敷や松の緑、そして暖簾や屋根の上に貯められた火消し用の水のうす青に目を奪われ、右隻の遠くからでもよくみえる大きな柄の衣装を着て楽しげに踊る女たちに釘付けになる。

今年は千葉県の鋸南町の菱川師宣記念館(拙ブログ7/5)を訪ねたからかもしれないが、師宣のいい絵に縁がある。“浦上玉堂展”を開催中の千葉市美術館でも、“隅田川・上野風俗図屏風”(12/3まで)を観た。

美人画のお気に入りは勝川春章。肉筆美人画では一番の名手といわれる春章の名品は出光、MOA(拙ブログ06/1/20)に通い、ひとつ々つぶしてきた。9月には念願の“婦女風俗十二ヶ月図”(重文、MOA)と対面した。そして、ボストン美にある真ん中の“春遊柳蔭図屏風”(左隻部分)である。これは出光、MOAでみた最上級の美人像を全部集めてきたような見事な絵。艶やかな女の顔はあくまでも白く、色鮮やかで繊細な模様の着物が目を惹く。こんな名品が海の向こうに渡っていたとは。。唖然としてみていた。

葛飾北斎の“鏡面美人図”はそのS字曲線のような後ろ立ち姿が色っぽい。北斎が描く美人像はMOAの“二美人図”(重文)のように面長が多いが、鏡に映ってるのはぽっちゃり顔。好みとしてはこちらの方がいい。北斎の女と喜多川歌麿が描いた下の“遊女と禿図”にでてくる遊女の顔がちょっと似ている。着物の柄に波の文様を使っているためだろうか、首から胸にかけてや足元のまわりは柔らかい曲線を幾重にも引いている。美人画家の最高峰、歌麿が描いた版画のなかでは、“婦人相学十躰 ポッピンを吹く娘”(東博)がこのふっくらした顔の遊女と似たようなイメージ。

ほかにも鈴木春信の“隅田河畔春遊図”、西川祐信の“四季風俗図巻”、歌川豊春の“向島行楽図”、宮川長春の“吉原風俗図屏風”など心をゆすぶる絵が何点もある。本当にいい美人画をみせてもらった。昨年の北斎展同様、大きな満足が得られる驚愕の浮世絵展だった。

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コメント

この肉筆画は近来まれに見る名品ぞろいでしたね。
本当にいい展覧会でした。
それにしてもいづつやさん、絵の選択が素敵です。
「おおっ!」という感じでした。
神戸では図録も売り切れましてね、連日大人気でした。
ハリボテもキレイにできていて、嬉しかったです。

投稿: 遊行七恵 | 2006.11.07 23:38

to 遊行七恵さん
ボストン美術館、有難うという感じです。本当に素晴ら
しい肉筆画でした。師宣、春章の名品を観れたのが嬉しく
てたまりません。今回の図録はよく色がでてて出色の
できですね。毎日、ながめてます。

投稿: いづつや | 2006.11.08 05:08

いづつやさん、こんばんは
私も行ってきました!!!
内容が濃ければ、点数の少なさは何にも気にならない展覧会の
良い典型だと思いました。
とにかく状態の良さ(特に色!!!)は目を見張るものでした。
こんなに良質なコレクションがまだ海外にあるんですね~
ボストン美術館の日本美術コレクションの全貌はどのようなもの
なのでしょう?(蕭白の「雲竜図」もありますし)
もっと色々な作品が日本に里帰りしてくるのを望んでやみません。

投稿: アイレ | 2006.11.10 22:20

to アイレさん
北海道旅行のため返事が遅れて、すいません。この展覧会、
びっくりするような絵が何点もあり大満足でした。一度
にこれほど沢山ぐっとくる美人画を観るのははじめてです。

版画では歌麿、肉筆では春章にぞっこんなのですが、大き
な春章の屏風が見れて最高の気分でした。また、師宣の
風俗画の鮮やかな色に完全にOKされました。今回、歌麿
のいい美人画を観れましたので、次のターゲットは同じ
肉筆画の最高傑作、ワシントンフリーア美術館にある大作
美人群像画です。

太田記念美術館では来年はじめ“ギメ美術館浮世絵名品展”
(1/3~2/25)がありますね。ギメは歌麿の版画美人
画をいくつも所蔵してますから、どれを見せてくれるのか
すごく期待してます。

投稿: いづつや | 2006.11.12 11:31

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