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2006.11.07

ビゲローコレクションの北斎肉筆画

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ボストン美術館の所蔵する肉筆画が日本に里帰りするということを朝日新聞の記事で知ったとき、いくつか紹介された作品の中で一番興奮したのが上の葛飾北斎作、“鳳凰図屏風”(部分)。この絵が長野県小布施にある岩松院の天井画、“八方睨みの鳳凰図”(拙ブログ05/1/18)とあまりに似ているので、いままで感じたことのないような鑑賞欲が生じた。

だから、会場では早くこの絵のところへ行こうと目の前の作品を楽しみながらも、顔は先へ々と進んでいる。第二章“浮世の華”のコーナーにあった。岩松院のような正方形の画面に描かれた大きな鳳凰を想像していたが、この鳳凰は意外にも小ぶりで、羽根を横に広げる形で高さ36センチほどの八曲屏風におさまっていた。鋭い目つきや胴体や翼を鮮やかな朱、緑、青で彩られた装飾的な文様で描くところは“八方睨みの鳳凰”と全く一緒。華麗な鳳凰に相応しく、地は金泥にし、さらに四角に細かく切った金箔を画面いっぱいに散らしている。

この屏風を毎日見ていた注文者はさぞかし楽しいひと時を過ごしたことだろう。これは北斎がふたたび肉筆画を描きはじめた75歳のころの作品で、13年後これをもとにスケールアップして描いたのが岩松院の天井画。ゴージャスで生き生きとした鳳凰の絵を2点も見られたのは一生の思い出である。

会場最後のところに話題の絵が飾ってある。それは真ん中の提灯絵、“龍虎”と“龍蛇”。文化年間(1804~18)に制作された提灯絵が保存のためはがされ、平らに延ばされていたのをボストン美術館のスタッフが苦労を重ね、提灯として復元したのだという。力強い描線で表現された猛々しい龍と虎が互いに怯まず向かい合っている。龍の足の上には雷が赤く光り、龍と虎の大スペクタクルバトルをみるようだ。展覧会のために復元されたのだから、ボストン美に感謝しなければならない。

北斎が90歳で亡くなる年(1849)に描かれた下の“李白観瀑図”(部分)の前では思わず立ち止まった。後ろ向きの李白が眺める滝は画面のてっぺんから垂直にまっすぐ落ちている。滝の壮大な景観を表すため、滝を異常とも思えるほど長く描き、子供を背中におぶった李白は小さくする。この対比表現は普通の絵師はなかなか思いつかない。視覚の魔術師、北斎ならでは画面構成である。そして、後ろ向きの人物表現は北斎の得意とするところ。米国フリーア美術館が所蔵する“富士と笛吹童子”(拙ブログ06/3/22)は北斎の絵では今、最も観たい絵。国内では北斎の肉筆画専門館、北斎館(小布施)へ行けば“雪中筍狩”、“富嶽と徐福”といった名品が観られる。

今回この3点のほかに、朱が印象深い“朱鐘馗図幟”や85歳のときに描いた“唐獅子図”がある。北斎の肉筆画の傑作を美人画を含め7点も見れたのは大きな幸せ。ボストン美術館に感謝々である。

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コメント

はじめまして。
「浮世絵展」はじめて眼にして、作品の迫力。緻密さ。華麗さ・・
どれも素晴らしいものばかりでした。

<鳳凰屏風><提灯図><李白観瀑水図>などなど・・
これらの作品をこの眼で見た感動。
貴重な時間が持てた幸せを改めて感じました。

投稿: お里 | 2006.12.10 13:41

to あ里さん
はじめまして。書き込み有難うございます。はじめて
の浮世絵展がボストン美所蔵の肉筆の名品とは巡り合わ
せがいいですね。師宣、歌麿、北斎のコンディション
のいい肉筆画は日本でもそう沢山はありません。

北斎の鳳凰図が気に入られたなら、長野県小布施の
岩松院の天井に描かれた鳳凰にもきっと感激されると
おもいます。

今回は肉筆浮世絵でしたが、来年1/3からは原宿の
太田記念美術館でパリ・ギメ美術館の所蔵名品展
(版画と肉筆画)がはじまります。ギメの浮世絵も有名
ですから、開幕を心待ちにしているところです。

投稿: いづつや | 2006.12.10 17:55

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先に太田記念美術館に行って、英泉の美人を鑑賞してきたから、 入場制限があってもガマンして並ぶ心つもりができて、よかった。 並んで大勢の中で見るのは、苦手なのに、最終日に来ているのだから。 15分ぐらい並んで、ようやく中にはいることができた。 [続きを読む]

受信: 2006.12.12 12:57

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