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2006.11.12

神奈川県近美葉山館の山口蓬春展

543現在、葉山にある神奈川県立近代美術館で“山口蓬春展ー 伝統とモダンの融合ー”(12/24まで)が開かれている。

待ちに待った回顧展で、初期の頃から晩年までの代表作80点を存分に楽しんだ。

山口蓬春(1893~1971)の描く日本画が魅力的なのは従来の日本画とは違い、西洋画のようなモダンな香りがするから。だが、最初からそういう画風の絵を描いていたのではなく、代表作、“山湖”(拙ブログ05/1/26)のような傑作が生まれるのは第二次大戦後のこと。

若い頃の作品は日本画の伝統的な画題である歴史的な人物画、山水画、花鳥画などが多い。この画家の高い画才がみてとれるのは大和絵の伝統をきっちり継承している“春秋遊宴”や江戸琳派の酒井抱一が現代に蘇ったのではないかと思わせる見事な屏風“扇面流し”。“扇面流し”を04年の琳派展(東近美)ではじめてみたときは、その装飾性豊かで華やかな画面に目を奪われた。また、墨の濃淡とたらしこみで描かれた大作、“竹林の図”が心を打つ。左右の隻の下位部分に川があり、竹林と竹林の間は大きく空間をとり、そして濃い竹とうすい竹を重ね奥行きをつくる画面構成からは静謐な自然の情趣が深々と伝わってくる。

これが戦後になると作風はがらっと変る。ホドラーやフランス近代絵画の旗手、マティス,ブラックらの影響をうけて明るくて強い色調になり、造形も単純化されてくる。蓬春がめざしたモダニズムから生まれたのが“山湖”であり“紫陽花”(拙ブログ06/6/22)。また、見所のひとつである静物画はいずれも対象の色が澄んでいて、そのリアルな質感表現に驚かされる。

お気に入りは代表作のひとつとされる“榻上の花“(東近美)、“枇杷”、西瓜とレモンが描かれた“オランダ皿の静物”、青花のお皿に入った緑と赤の林檎の“静物”。今回、色彩で最も惹きつけられたのが“花菖蒲”の深い青の花びらと右の“楓”(山種美)。“花菖蒲”の青の輝きや楓の赤、黄色の葉をみていると、蓬春が日本画の顔料本来の発色のよさを高いレベルで引き出すことに腐心していたことがよくわかる。色の濁りが全くない。“楓”は皇居新宮殿の杉戸絵の4分の1下図で、蓬春74歳のときの作品。本画は翌年完成した。画面一杯に咲き誇る楓の赤と黄色の葉に金砂子が散らされた画面は絢爛豪華。蓬春のもっている天性の色感とモダン感覚の造形にしばし酔いしれた。

これだけの作品を見たので山口蓬春の追っかけは今回で終了。満ち足りた気分で会場をあとにした。

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» 稲葉京子 [株と思索と短歌のサイト]
テレビを見ていたら「いじめをなくそう」キャンペーンを実施中とか言う。何を笑止千万 [続きを読む]

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