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2006.11.20

向源寺の十一面観音菩薩立像

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東博の“仏像展”(12/3まで)に目玉のひとつである上の国宝“十一面観音菩薩立像”(向源寺)が登場したので、また出かけた。前回(拙ブログ10/11)、半券を見せれば2回目は半額になると書いたが、これは間違いだった。どこで混線したのかわからないが。。半額ではなく、1400円(ぐるパス券で100円引き)を払って入館した。

今回はわき目も振らず、“十一面観音”のところへ直行した。この一体を観るために1400円を払ったようなものだが、滋賀県へ行かずにこんな傑作を観られるのだから安いもの。座像と較べると、立像は周りをぐるぐるまわり、いろんな角度から見られるから、こうした素晴らしい仏像だと感動が増幅する。多くの作家や美術史家が絶賛しているのが本物をみてよくわかった。これまでブロンズ、木彫の立像をいくつも見てきたが、感激度ではこれが一番。

自分の目で確かめたかったのが、両腕から台座のところまで垂れ下がる天衣と足の間の空間。一本の木を細長くくり貫くのだからすごい技である。しかも、天衣が蓮肉につながる部分を横からみると、コブラの頭のように緩く曲がっている。天衣の彫りでは薬師寺の東院堂にある“観音菩薩立像”(国宝、鋳造)や兵庫、鶴林寺の“観音菩薩”(重文、鋳造)も見事だが、こちらは手彫りだからもっと感激する。

仏像全体を眺めてうっとりするのがくびれた腰のひねり。薬師寺にある下の“月光菩薩像”(国宝、鋳造)と“十一面観音”は胸や腹の肉付きはよく似ているが、“十一面観音”のほうが腿が太くそこにかかる天衣が下のほうにあるので、よりはっきり腰のひねりが印象づけられる。この仏像は観音様のふっくらした顔および化仏が彫られた大振りな頭上面の部分と顔から下のバランスが非常によく、全体の造形は大変美しい。

また、後ろ姿もなかなかいい。背面の彫りのしっかりした衣文表現にしばし見入ったあと、目線を上のほうにやると、口を大きくあけて笑っている後頭部の化仏にちょっとドキッとする。この笑い顔はインドやクメールの仏像のイメージである。目をつむった観音様とこの大笑面の残像がいつまでも体の中に残っている。

この展覧会でみた“菩薩半跏像”と“十一面観音菩薩立像”は一生の思い出になるだろう。残るは密教彫刻の傑作、大阪、観心寺にある“如意輪観音座像”(国宝)と京都、神護寺の“五大虚空蔵菩薩座像”(国宝)。1,2年の間になんとか目におさめたいと思っている。

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コメント

>仏像全体を眺めてうっとりするのがくびれた腰のひねり。
まったくそのとおりですね。

去年インド、東南アジアから来た仏像展を見ましたが、この様な魅力がたりないものでした。

十一面観音菩薩の表情がなんとも良いですね。

投稿: seedsbook | 2006.11.21 19:36

to seedsbookさん
十一面観音立像は傑作中の傑作ですね。観音様の表情、
全体のフォルム、もう超素晴らしいです。お寺で
見るのがベストでしょうが、なかなか滋賀のほうまで
行く機会がありませんから、こうして展覧会場で対面
できれば大満足です。

今年は4月のベルニーニの大理石彫刻、そして今回の
木彫仏像の最高傑作2点と彫刻の名品に縁があります。
ミューズに感謝々です。

投稿: いづつや | 2006.11.21 22:29

TBさせていただきました。
本当に美しい後姿でした。
今回の仏像展はマニアックな感じがしました。
ともあれ、東京でいろいろな美術品に出会えるのは嬉しいです。
仏像展の2回目はせっかく行ったので、常設の方もゆっくり
見ました。写楽の作品が20枚も出ていて、迫力でした。

投稿: | 2006.11.21 23:23

to 郁さん
ご無沙汰してます。ほんとうにいい展覧会ですね。
多くのひとがこの十一面観音を褒めるのがよくわか
りました。次は観心寺の官能的な仏像です。来年
当たり実現したいとおもってます。

投稿: いづつや | 2006.11.22 08:15

いづつやさん、こんばんは~

いづつやさんがいつこの十一面観音さまをお書きになるか、楽しみにしていました。
やはり、絶世の美仏さまですよね。
湖北で見た時は、狭いお堂の中の低いところで、目の前で拝見できました。こんな悩ましい仏様を作った仏師は、戒律を守り通せたのかと、余計な心配までしてしまったのでした。
TBさせて頂きました。

投稿: あべまつ | 2006.11.22 22:11

to あべまつさん
十一面観音菩薩立像はいつか見たいと願ってた仏像
ですので、ほかは見ずにこれだけをじっくりみました。

前、後ろ、左右とどこからみても、完璧に美しいで
すね。天衣と足の間の細長い空間を手彫りでつくって
いくのですから、すごい技です。太腿に量感があり、
下半身が安定しているので、腰のひねりに視線が集中
します。

後ろの化仏の笑いに心がざわざわします。十一面観音
の意味をもっと考えてみたくなりました。

投稿: いづつや | 2006.11.23 15:09

これを観られて幸せでした やっぱり写真と本物は大違いです

左手少し前に差し伸べている姿が人を救う観音菩薩という気がしました また、これとすっかり同じ形の仏像があったとしても、木と言うことに感動があります 図録で見られる木目に会場で気付かなかったのが残念で、これからはオペラグラス持参かしらと考えました

投稿: えみ丸 | 2006.11.30 16:19

to えみ丸さん
観た人の誰もが感動する“十一面観音”を東京で見ら
れたのは本当に良かったですね。思い出の仏像展に
なりそうです。おっしゃるように木彫というのに打た
れます。自然の命、仏の慈愛がこの仏像のなかに
彫りこまれている気がします。気持ちを静め、木彫仏
と向かい合いたいと思います。

投稿: いづつや | 2006.11.30 23:38

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