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2006.11.18

小堀鞆音の武者絵

244明治神宮文化館で開催中の“小堀鞆音と近代日本画の系譜展”(12/3まで)をみた。

小堀鞆音(こぼりともと)は近代日本画の巨匠、安田靫彦(やすだゆきひこ)の師匠で、歴史画を得意とした画家である。

同世代の画家では横山大観がいる(大観より4歳年上)。作品は山種美術館や東近美でたまに展示されることはあるが、こうした特別展でもない限り、ほとんど縁がない画家といっていい。

出かける気になったのは、小堀の作品への興味というよりは、安田や小林古径、前田青邨、鏑木清方といった好きな画家の未見の絵がでてくるのではという期待があったから。ところが、安田らの絵より、まさに主役の作品に200%魅了されてしまった。そして、つい先だって東近美の平常展でみた安田の“黄瀬川陣”や前田青邨の代表作、“洞窟の頼朝”などは小堀鞆音の影響を強く受けて制作されたものだということを発見した。

小堀の歴史画は3つの期間に分けられ、全部で49点展示される。今回みたのは、そのうちの半分。以前見た山種美所蔵の“那須宗隆射扇図”は、構図が面白い絵というくらいの記憶しかなかったのに、右の“武士”(部分、東芸大美)の前では大変感動した。これは縦224cm、横113cmの大作。こんなすごい武者絵があったのか!という感じである。

この武将は“保元物語”に登場する弓術に優れた悲劇の英雄、鎮西八郎源為朝(1139~77)。鎧や兜の精緻な描写や青の地にくっきりと目立つ大柄な紋様に目を奪われる。そして、足を大きく広げ、左前方を見つめる迫真の姿が胸を打つ。これまで、前田青邨の歴史画に出てくる武将たちは皆鼻がでかいのはどうしてかなと不思議に思っていたが、その謎が解けた。この“武士”が参照画だった!

歴史画というのは制作するのに時間がかかる。小堀の時代考証は徹底していたそうだ。描こうとする人物が身につける衣装の色や紋様、兜、鎧、刀、弓などの形や意匠、屋敷の場面に必要な調度品、そして合戦の舞台となる建物や背景にある海や山の風景など知っておかなければいけないことが沢山ある。だが、有職故実に忠実すぎると、絵としての魅力がなくなる。合戦の真っ最中の武者を描く場合、絵に勢いがないと見る者を感動させない。だから、画家は視線の集まるところでは対象の形や色を誇張したりデフォルメして描く。これにより力強さや迫真性がグッとでてくる。

小堀の“武士”も豊国や写楽が描く役者絵と同様、強いインパクトをもっている。武者絵の傑作ではなかろうか。ほかでは、大きな屏風絵“忠孝之図”、“田村将軍並菅公図”に魅了された。画家に対する評価はやはり作品をある程度こなさなければ定まらない。小堀鞆音をMy好きな画家に早速登録した。

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コメント

おお、いづつやさんもいかれましたか。
小堀の「武士」は僕が観たときは展示されていなかったのですよ、小堀桂一郎もカタログでこの画家の最高傑作と述べていますがいづつやさんの感動が伝わってくるようです!
展示目録を観ると、実にいろいろなところから作品を集めた展覧会ですね。明治神宮気合が入っていますね!
ところで宝物殿のチケットも渡されたと思いますがいかれましたか?
歴代天皇の肖像画とか面白いですよ。
ただ、宝物展示室から歩かされますねー。

投稿: oki | 2006.11.18 22:32

to okiさん
“武士”に驚きました。中くらいの期待の展覧会で
したが、この絵で小堀鞆音を見直しました。安田や前田が
心酔するのですから、画才は相当高いですね。

もう一回でかけます。宝物殿は時間がなかったので、
パスしましたが、次回はまわってみます。

投稿: いづつや | 2006.11.18 22:57

はじめまして・・・なのかな?
小堀さまのこの武者絵、実に面白いですよね。
鼻のデカさと、唇の表現は、なんだか、歌舞伎の見得にもにているし、錦絵ふうだったり・・。
 そういう目でみるせいか、この方、普段の走り書きやラクガキは、かなり浮世絵風にデフォルメされているんじゃないか・・なんて思っています。普段、マンガ描いている人など、ちょちょっと描いたらマンガそのものですが、ちゃんと写生やデッサン描いていると、目立たないけど、ふとした加減で劇画チックになっちゃいますよね。手クセになっているとか・・。何故かそんな風合いを感じて、この絵の表情が好きです。
 

投稿: 乱読おばさん | 2006.11.21 11:07

to 乱読おばさんさん
はじめまして。書き込み有難うございます。小堀鞆音の
“武士”には参りました。大きな絵で、おおーこれは
すごい!という感じでした。

すぐに前田青邨の“大きな鼻”はこの絵が先行例だった
のかと直感しました。仰るように歌舞伎の見得にも似
てますね。写楽や豊国の役者絵がこの武者絵に導いてく
れたのかなと思ってます。これからもよろしくお願い
します。

投稿: いづつや | 2006.11.21 22:09

はじめまして。
家の整理をしてたら大きな古い掛け軸が出てきました。
私は美術品や絵画に全くうといのでおしえて下さい。
軸の箱には、小堀ともと 徳川家康勝利の図 油断大敵 と書いてました。
私はど素人ながら迫力があり緻密な武者絵だと思ったんですが、これはどういう価値の物かサッパリわかりません。
教えて下さい。

投稿: ゆうこ | 2011.03.27 18:34

to ゆうこさん
はじめまして。書き込みありがとうござい
ます。

小堀鞆音の掛け軸がでてきたというのはすごい
ですね。私は骨董屋の主人でもなく鑑定士でも
ないので、その掛け軸の相場について断定的な
ことはいえませんが、小堀鞆音の本物という
ことであれば、高い評価がつくと思います。

小堀鞆音の作品は回顧展でいくつかみましたが、
緻密な描写には比類がありません。一度専門家
にみてもらうか、あるいはテレビ東京の人気番組
‘なんでも鑑定団’に電話し、しかるべき人を紹介
してもらうというのもひとつの手ですね。
番組のスタッフがひとはだぬいでくれる可能性
はあると思いますが。

投稿: いづつや | 2011.03.28 13:10

返信遅くなって済みません。大変参考になりました。私がもってる小堀ともとさんの掛け軸は私の曾祖父か祖父が書いて貰った物だと思います。ただ私は身内と疎遠で聞く事ができません。箱の中に領収証らしき物が入っていて本人と思われるサインと金百参拾円と書いてました。安いのか高いのか私には全くわかりません。私がもっていても全く意味がなくずっと押し入れの中にあっても仕方ないので、お好きな方で欲しい方がいて値がつく物であれば、適正価格で買って欲しいです。教えて頂いた様にしたいですが、とりあえず近所の骨董屋さんに見て貰います。色々見ず知らずの私に教えて頂いてありがとうございました。

投稿: ゆうこ | 2011.03.31 00:42

to ゆうこさん
希望されるかたちでうまく買い手がみ
つかるといいですね。
これからもよろしくお願いします。

投稿: いづつや | 2011.03.31 09:44

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