歌川広重、国貞、国芳
港区立港郷土資料館で開催中の“UKIYO-E展”(12/3まで、拙ブログ11/16)にとりつかれている。
全点観たくて3回も通った。Ⅲ期(11/21~12/3)に出た作品も目を楽しませてくれた。
まず、贔屓の広重の風景画から。グッとくる構図が目を惹くのは“名所江戸百景 芝愛宕山”。“毘沙門天の使い”に扮する男が右手に持っている大きなしゃもじをどんと画面中央に描くところが面白い。“江戸名所 赤羽根水天宮”で魅せられるのは、朱色の橋が幅広く左から右斜めに描かれる一方、これと交差するように雨を表す細い線が右から左斜めに何本も引かれていること。傘をさし橋を渡る人々の姿が実にいい。
風景画と美人画をミックスした“江戸名所四季の昹 高輪月の景”はよく画集に載っている作品。右半分に座敷の楼台から日が暮れる様子を眺める3人の女、そして遠景には月をバックにした鳥の群れが小さく描かれている。対比の妙を感じるのが手前の3人と下の道を行く男女や裸の駕籠かき。こうした大小の対比により広がりのある空間が生まれている。
今回、大名の奥方の行列を描いた“行烈高輪之図”でハットするような発見があった。それは奥方の駕籠の後ろを歩くお付の女たちが身に着けている衣装の柄。緑や青、黄色の取り合わせがいいのと三角や四角の幾何学的な模様がすごくモダン。広重の作品はかなり観てきたが、こんなデザイナー感覚が現れた絵に出会ったのははじめて。
国芳の絵はあまりないが、色で圧倒されたのは三枚続の“白縫姫為朝婚姻契約之図”。この画面に登場する人物の衣装の赤が輝いている。その赤と白い桜の見事なコントラストが晴れやかな婚約の場面にぴったり。
今回の一番の収穫は右の歌川国貞の“絵兄弟忠臣蔵”(全部で11枚の組物)。発色と女の衣装の精緻な描写が素晴らしい。手前は美人画で、後ろには“仮名手本忠臣蔵”の各段の名場面が描かれている。興味をひくのは女のしぐさやポーズと背景の場面との関連性。右は十一段目の“討入り”。義士は手にもつ提灯を、炭小屋から引きずり出された吉良のほうに向けている。手前は寝巻姿の女が行灯を持って移動するところ。両者に共通するのは何か重要なことを発見したという点。これは浮世絵鑑賞のなかでは忘れられない作品になるだろう。
無料で3回もいい浮世絵を見せてもらった。感謝々である。
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