近藤浩一路展
練馬区立美術館で開催中の“近藤浩一路展”(10/15まで)をみてきた。
水墨画に興味がある人には味わい深い展覧会ではなかろうか。心が洗われるいい絵が沢山でている。
この日本画家の作品を見る機会はあまりない。多く所蔵しているのは近藤が生まれた山梨県(南部町)の県立美術館と南部町にある記念館。東近美にも代表作が3点ある。
山種美に通うと明治以降の名の通った日本画家の作品は大体鑑賞できるのだが、なぜかここで近藤浩一路の絵をみたことがない。おそらく1枚も所蔵してないのだろう。こう書くと山種が所蔵してない画家の絵ならたいしたこと無いのではと思われるかもしれないが、そんなことはなく、光と影を墨で表現した作風は新たな水墨画を切り開いたとして高く評価されている。
近藤浩一路(1884~1962)は小林古径、竹久夢二、安田靫彦、川端龍子、前田青邨とほぼ同世代の画家。最初は洋画や漫画を描いていたが、途中から日本画に転向した。彩色画もあるが、惹きつけられのはなんといっても光を表現した白が目に焼くつく水墨画の数々。
右は最高傑作といわれている“雨期”(山梨県立美)で、“昭和の日本画100選”(1989、朝日新聞社)にも選ばれた。4年前、岡山県美の“墨戯展”でこの絵とはじめて会ったときはずきんときた。腰をかがめて田植えをする3人の農夫を輝く白で形づくられた三角形の頂点に配置する画面構成は一度みたら忘れられない。墨の濃淡で自然風景や家々、寺などを描く点では伝統的な水墨画と変らないが、光そのものと反射する光の効果を白で表しているため、白がきらきらしているように見える。広々とした水田の光が強くあたった真ん中の苗の列は白が濃く、左右にいくにつれ、影ができ薄い白になっていく。この色の変化は実際に絵の前に立たないとわからない。
ほかにも白と黒の対比が印象深い作品がある。代表作のひとつ“鵜飼六題”にも感動する。この絵は東近美の平常展によくでてくるが、かがり火を表す白が限りなく美しい。“一条戻橋”、“間道(残照)”、“水郷”などにも心を打たれる。この展覧会は近藤浩一路の回顧展なのに、初期の頃、活動を共にしていた画家仲間の作品も多数展示してある。そして、図録にも載せている。こういうのも珍しい。オマケともいえる絵のなかに主役の作品を食っちゃいそうなのが1点ある。それは山種美の図録にも掲載されている平福百穂の“竹林幽棲”。お見逃し無く。
なお、この展覧会はこの後、山梨県美に巡回する(10/21~11/26)。
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コメント
いづつやさんもいかれましたか。
一階の展示室は初期の近藤と活動をともにした人々の作品がたくさん並べられていましたね、思いがけずうれしかったです。
「鵜飼六題」は近代美術館の常設によく展示されているのですか知りませんでした。
近代美術館の三階あたりに展示されるのかな。
投稿: oki | 2006.10.06 11:42
to okiさん
金沢観光旅行で返事が遅れて申し訳ありません。近藤以外の画家の作品は結構
いいのがありましたね。これは導入部としては面白い展示の仕方です。鵜飼
六題は平常展の4Fか3Fかによくでてきます。大作で、様になる水墨の画題
ですから、見ごたえがありますね。
投稿: いづつや | 2006.10.08 16:18