« 奇才 長澤芦雪の魅力 | トップページ | 興福寺の国宝特別公開 »

2006.10.25

天才 円山応挙のスーパー写生力

521
520
522
円山応挙と長澤芦雪の代表的な作品を集めた回顧展につけられたキャッチコピーは“天才と鬼才の師弟”。応挙の天才というのは、写生という新しい描き方を画壇に持ち込み、どんな絵でも観る者を唸らせるほど上手に描いたスーパー写生力のことである。

03年の大回顧展(大阪市立美術館)でそれを見せつけられた。今回の“人物”、“花鳥”、“山水”に分けられた作品のなかにも高い腕で描かれた傑作がいくつもある。作品の数は通期で36点、前期には19点でている。応挙の大作に凄さを感じる人は後期のほうが満足度は高いかもしれない。龍の絵では一番いいと思われる“雲龍図”(重文)、高さが3.6mもある“大瀑布図”(相国寺)、孔雀図の傑作、“牡丹孔雀図”(重文、相国寺)は後期に展示される。

この3点は鑑賞済みなので、個人的には前回、展示替えで見れなかった作品が比較的多く含まれている前期への期待が高い。是非観たかった絵が花鳥画のなかに数点ある。上の“紅梅鶴図”と“薔薇文鳥図”。“紅梅鶴図”を所蔵する三井記念美術館が昨年、日本橋に移ってきたので、すぐにでもお目にかかれるとふんでいたが、予想外に姿を見せず、東京ではなくて奈良での対面となった。

感激したのは構図のとり方と白梅と紅梅の花弁の精緻な描写。花の描写は伊藤若冲の“動植綵絵”とさほど変らない。そして、目を奪われるのが左上から斜め右に伸びる紅梅の枝と左の白梅とで丹頂鶴と真鶴をとりかこむ画面構成。予想以上の素晴らしい絵だった。また、金地に緑の葉が映える“薔薇文鳥図”の静かな空間にも吸い込まれそうになる。“紅梅鶴図”のように、つがいの文鳥がとまる枝を左のほうから斜め下に垂れさせ、余白をたっぷりとっているので、奥行きのある空間に鳥と木が浮遊しているように見える。

03年のとき、興味深くみた真ん中の“七難七福図巻”をガラスケースに顔を近づけ熱心に観た。前期の展示は世の中の避けがたい“七難”の巻で、これは“天災”の一場面。地震で家が倒れ、人々は揺れる地面に這いつくばり、恐怖に慄いている。このリアルな人物表現が見事。あわてているのは人間だけでなく、左上にいる2匹の犬もでんぐり返しになり、その下の鳥もびっくりして羽根をばたばたさせている。

“難”のなかには、追いはぎに遭い、女が着物をはがされ裸で泣くところや、子供が木にくくりつけられる、また男が穴に突き落とされる場面を描いた“人災”の巻もある。追いはぎはよくみるといかにも悪党の顔。こんなワルにつかまるほど災難なことはない。

応挙は怖い場面を真に迫るほどリアルに描くが、可愛い子犬を描くのもとびっきり上手い。今回でている“狗子図”は下の1点のみ。これまで応挙の可愛い子犬の絵は10点くらいみたが、これははじめてみるヴァージョン。下の眠っている犬の無垢な姿がいい。前期の応挙に大満足。後期には見ごたえのある大作3点がでる。これも楽しみだ

|

« 奇才 長澤芦雪の魅力 | トップページ | 興福寺の国宝特別公開 »

コメント

いづつやさん、こんばんは
応挙の記事にもTBさせていただきました♪
応挙はそういえば以前東武美術館で見たような記憶がありますが、
何分大昔のことなので、今回の展覧会は収穫大でした。

「紅梅鶴図」の紅梅の描き方は本当に素晴らしかったです。
実物と見まごう描写でありながら、「絵」として確立している
ところなどは流石です。
後期のいづつやさんお勧めの3点はまだ未見なので期待が高まります。

投稿: アイレ | 2006.10.26 23:24

to アイレさん
“紅梅鶴図”は襖絵でしたので、三井家の屋敷で現在も
使われているのではないでしょうか。美しさがしみじみ
感じられる絵でしたね。

大作3点が出品される後期は贅沢な展示になりそうです。
円山応挙の“雲龍図”(重文)は日本にある龍の絵では
海北友松の“雲龍図”(重文、建仁寺)とともにベスト
の絵です。この2点と米国のフリーア美術館が所蔵する
俵屋宗達作とボストン美術館の曽我蕭白作のものがビッグ
4です。蕭白の“雲龍図”は今週月曜日にあった“ギョッ
とする江戸絵画”で辻氏が取り上げてましたね。
米国にある“雲龍図”に会えることを強く願ってます。

“牡丹孔雀図”は相国寺、三の丸尚蔵館(花鳥展の5期
に展示)、石橋美術館(4月の50周年記念展に展示)、
個人のものと4点ありますが、今回でてくる相国寺所蔵
は三の丸尚蔵館と甲乙つけがたい傑作です。これぞ応挙
の写生画と言ってもいいでしょう。

応挙はほとんど済みマークがついているのですが、見た
い絵があと2点あります。三の丸尚蔵館の所蔵する“群獣
図屏風”と前回展示替えで見逃した“保津川図屏風”です。
気長に待つつもりです。

投稿: いづつや | 2006.10.27 15:47

七難七福図巻の人災図。
今回の展示では、あまり凄惨な場面はないのですが、
図録を見ると後半はかなり血にまみれた場面とかが
出てくるのですね。
花鳥風月、美人画、山水画、絵巻物と応挙の
スーパー絵師振りを感じました。

投稿: 一村雨 | 2006.10.28 06:59

to 一村雨さん
“七難七福図巻”はじっくりみると面白いですね。
前期のなかでも巻き替えをしているのでしょうか。
“人災”の場面には、真っ赤な血がリアルに流れ
る凄惨な場面もでてきますが、これをみて岩佐又
兵衛の絵巻の血しぶきがとぶシーンを思い出しま
した。

応挙はどんな絵でも一級の質に仕上げますね。
すごい絵師です。

投稿: いづつや | 2006.10.28 23:30

はじめまして。検索中、偶然こちらに訪れました。
応挙の群獣図屏風(三の丸尚蔵館)は、11月5日まで仙台市博物館の“大江戸動物図鑑”展で公開されています。僕は知らずにこの絵に出会ったのですが、あたかも動物たちのパラダイスというふうに感じられて、初めて若冲の樹花鳥獣図屏風(静岡のやつです。念のため)を見たときと似たような感動につつまれました。他にも応挙だと木賊と兎とか若冲の白象群獣図や狙仙の猿、岸駒の虎やジャコウネコなど、かなり楽しい展覧会でした。
少々遠方ですが、機会がありましたらぜひいらしてみてはいかがでしょう。

投稿: mya | 2006.10.29 22:20

to myaさん
はじめまして。応挙の絵の貴重な情報、誠に有難う
ございます。HPをチェックしてみます。これからも
よろしくお願い致します。

投稿: いづつや | 2006.10.30 10:10

こんにちは☆いづつやさん☆ごきげんいかがですか?
大乗寺のサイトを見ていましたら、プライス氏が、大乗寺にお越しになった。とのことでした。きっと、大満足☆なっさたかな?と思います。
それとも、もっと、欲しい☆(笑)思われたでしょうか?
03年のときの記憶は、rossaも鮮明です。ほんとに、腰がくだけるほどに、びっくりした展覧会でした。圧倒的な応挙の存在感に感動いたしました。“大瀑布図”の奇才ぶりは☆どこにもないそこにしかない。と感じました。最もすごい!方☆と思いました☆

投稿: rossa | 2006.11.01 14:50

to rossaさん
こんばんは。せっせと美術館にでかけています。孫悟空
のように空を飛べれば交通費が節約できるのですが。

プライス氏も大乗寺の応挙に大感激でしょうね。一度行
ったことがあります。03年のとき出品された“大瀑布図”
をみたときの驚きは今でも鮮明に覚えてます。巨大な
掛け軸に滝を描き、これを庭に飾って、演出するのです
から、もう立派なインスタレーションですね。

頭の上にはちょんまげがついてますが、やってることは
現代アーティストと変りませんね。すごい絵師です。
後期、これがでてくるのを楽しみにしてます。

投稿: いづつや | 2006.11.01 22:28

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 天才 円山応挙のスーパー写生力:

» 応挙と芦雪(前期)−2 [青色通信]
天才と奇才の師弟 応挙と芦雪10月7日 奈良県立美術館(〜11月5日・前期展示)後期展示 11月7日〜12月3日  「応挙と芦雪」展レポの第2弾は師匠の円山応挙の絵について書きたいと思います。会場に円山四条派の系図がありましたが(図録にもあり)近代日本画家に連なるフ...... [続きを読む]

受信: 2006.10.26 23:10

« 奇才 長澤芦雪の魅力 | トップページ | 興福寺の国宝特別公開 »