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2006.10.24

奇才 長澤芦雪の魅力

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関西にある美術館は江戸絵画の展覧会で主導的な役割を果たしている。昨年の“曽我蕭白”(京博)に続き、今年は奈良県立美術館が大規模な“円山応挙・長澤芦雪展”を10/7から開催中。奈良県美は県庁のすぐ裏にある。

総出展数(80点あまり)はほぼ同じくらいの数で、前期(10/7~11/5)と後期(11/7~12/3)に分けて展示される。通期出ずっぱりの作品はなく、総入れ替え。代表作や目玉の作品がどちらか一方に偏らないように、うまくバラされているから、この展覧会へは2回、足を運ばなくてはならない。関西の人が羨ましい。

応挙は03年の大回顧展(大阪市立美)でワンラウンド消化しているので、多少は肩の力を抜いて鑑賞できる。が、芦雪については、代表作の“虎図”(無量寺、拙ブログ05/2/13)やプライスコレクションの“象と牛図屏風”、“白象図”(金閣寺、06/7/29)を観たとはいえ、過去あった回顧展には縁がなく、また代表作を収録した画集も手許にないので、目の前の作品とは前のめり状態で対面することになる。まず、数も44点と応挙より多い芦雪から。

会場を進むにつれて、体が熱くなってくる。芦雪の絵で一番惹かれるのはハットする構図と対比の面白さ。だから、最大の関心はこうした作品がいくつ観られるかであった。後期の作品は残しているが、前半は期待通りで、満足度は高い。

芦雪の頭がすごく柔軟だということに気づいたのが上の作品、“富士越鶴図”。4年前、岡山県美であった展覧会でこの絵をはじめてみたとき、その斬新な構図に驚愕した。実景とはかなり違う切り立った富士山の右中腹後方から、グライダーが編隊を組んで飛んでいるように鶴がこちらに向かってくる。鶴が飛ぶ姿をこんな風に描ける絵師は芦雪のほかにはいない。意表をつく絵画構成では、蕭白も若冲も芦雪には叶わない。今回も構図の面白さを満喫した。ぐぐっと引き込まれる構図の絵がもう1点ある。それは二本の足で地面を思いっきり踏ん張り、体を反り返らせているように見える“白梅図”。即座に、尾形光琳作、“紅白梅図屏風”の紅梅を連想した。

大小の対比や形の大きさが頭から離れない絵がある。真ん中の“百鳥図”は図版でも見たことがなかった。右隻の主役、孔雀と左隻の主役、大鷲がペアリングになっている。水面のうす青、右隻の鳥の鮮やかな赤、そして孔雀の羽根の深い青が目にとびこんでくる。一見、目に心地よい見事な花鳥画である。でも、大鷲とまわりの水鳥たちの大きさを較べてみるとかなり不自然。岩をつかんでいる大鷲の足はまわりの水鳥の足に対して、異常に大きい。この足からイメージするとこの大鷲はガリバー級の巨大さになる。大鷲の巨大さがぱっと見てそう感じられないのは限られた天地のなかに収まっているから。

大きさをドンと体感するのが下の“牛図”。これは前々から追っかけていた作品。正面からとらえた黒い牛の体は画面から横にとびだしている。プライスコレクションの“象と牛図”と同じ描き方である。画面構成にハットさせられるだけでなく、ここには色彩美がある。黒の輝きと目の青。これほどインパクトのある牛の絵は見たことがない。前期の狙いはことごとく当たった。後期は“群猿図屏風”に期待したい。

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コメント

何点かの入れ替えではなく、総入れ替えというのは
考えようによっては、かなり良心的だと思います。
ただ、遠方の人間にとっては、かなり辛いのですが。

まァ、無量寺にまで出かけずにすんだので、良しと
しようかと思ったのですが、あのふすまの次にも
小さな猫のふすまがあるとか、やはり対になったものを
見るべきなのかなぁとも思ってしまいました。

本当に蘆雪の絵、ぐぐっときました。

投稿: 一村雨 | 2006.10.24 23:29

to 一村雨さん
今回の展覧会で芦雪も一応済みマークがつきそう
で、大変喜んでます。“百鳥図”は図版でも見た
ことなかったので、感激しました。色もよく出
てますね。昨年、静岡県美にあった鷲図では足は
こんなに大きくなかったです。

また、今年、京博でみた“花鳥蟲獣図巻”はお気
に入りの絵です。これにまた会えたのもよかった
です。

無量寺の虎は愛嬌があっていいですね。この寺は
図録をつくってないので、いくつもある襖絵の記憶
が薄れてきているところだったのですが、“薔薇
図”はこの展覧会のお陰で図版を何度もみること
ができます。

投稿: いづつや | 2006.10.25 09:22

いづつやさん、奈良に行っていらしたのですね。
以前住んだことのあるところですから、奈良、とあるだけで、嬉しくなります。

この芦雪という方の絵は、何か独特な不思議な空気がありますよね。
山雪の「雪汀水禽図屏風」を思い出してしまいます。
西洋風であって、動きがあるし、大きさへのこだわりも見えてきます。

正倉院展も始まっているし、また奈良のお話を楽しみにいたします。

投稿: あべまつ | 2006.10.25 10:54

to あべまつさん
先週の18日、奈良、京都へ美術旅行しました。念願
だった芦雪の回顧展ですので、ワクワク気分で入館
しました。これまで見たのが1/4くらいあるのですが、
芦雪のようにお気に入りの絵師の場合、また名作を
楽しめるという思いのほうが強く働きます。

あっと驚くような絵を芦雪は見せてくれますね。これ
が魅力です。普通の絵描きとは異なり、芦雪は対象を
色々な視点から見ているのでしょね。だから、意表をつく
構図や大小の対比を思いつくのでしょう。後期も出かけ
ることにしてます。

投稿: いづつや | 2006.10.25 14:58

いづつやさん、こんばんは
後期も行かなければなりませんが、それだけ行く価値のある展覧会ですね!!!
バークコレクション展で初めてその名を知りましたが、今年これだけ重点的に蘆雪作品が見れたのは本当に幸運でした。
図録を読んだところ、まだ他の絵師ほど研究されていないのですね~
今後、多くの研究が成されることを望みます。
「白梅図」はきっといづつやさんがお好きになるかも?と思いましたが、やはりお気に召されたようで…

ところで、いづつやさんは2000年に千葉市美術館で開催された蘆雪展の図録とかお持ちでしょうか?
私は展覧会自体行ってませんので、図録は持っておりませんが、古本屋さんをあたっても欲しいなぁと思っています。

投稿: アイレ | 2006.10.25 20:07

to アイレさん
光琳の紅梅のような形をした“白梅図”の力強い描写
におもわずのけぞりました。これに対して画面を情趣
溢れる立体空間にみせているのが“富士越鶴図”ですね。
この絵をはじめてみたときの衝撃は今でも忘れられません。
こんな絵は頭の中に視点の引き出しがいくつもある絵師
でないと描けませんね。まさに芦雪は奇才の絵師です。

千葉市美であった回顧展の図録は持っていません。どん
な作品が出たのでしょうね?今回、芦雪のいい代表作は
ほとんど出ているような気がします。“虎図”、“牛図”、
“百鳥図”、“花鳥蟲獣図巻”、後期の“山姥図”、
“群猿図”。

もし、芦雪の絵が国宝になるのであれば、“虎図”か
“山姥図”と言われてます。是非、そうなってもらいた
いのですが。

投稿: いづつや | 2006.10.25 23:54

こんばんは
応挙と芦雪・前期を遅ればせながら楽しんできました。
トラ・うし・わんこ・すずめ・ちびっこ。
もぉ師弟揃って本当に可愛くて魅力的な連中を画布に生み出してくれましたね、嬉しくて仕方ないです。

京博の『18世紀の京都画壇』に出た芦雪の白梅図がありましたね。
後期には大倉に出た大仏殿炎上図も出ますし。
一度世に現れると、こうして絵も旅をするものですね。

後期も参ります♪

投稿: 遊行七恵 | 2006.11.07 23:33

to 遊行七恵さん
鳥や動物が揃っているのは七恵さんのおっしゃる通り
ですね。芦雪もちゃんと師匠の可愛い描き方を受け継
いでます。後期も応挙の大作3点、芦雪の大仏炎上図
など見所いっぱいですね。中旬ごろ出動します。

投稿: いづつや | 2006.11.08 05:03

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