クリーブランド美術館展のモディリアーニ
森アーツセンター(六本木ヒルズ森タワー52F)で開催中の“クリーブランド美術館展”(11/26まで)を見逃さずにすんだのはアイレさんが集められた展覧会情報のお陰。感謝々である。
森アーツセンターのHPは定点チェックしてないので、アイレさんのブログでこれを知ったときは“へえー、クリーブランド美が来るのか!迂闊だったなあー。これは有難い”と素直に喜んだ。
クリーブランド美の所蔵品を承知しているわけではないのに、気持ちがざわざわしたのはこの美術館が04年にあった“マティス展”に出品されたマティスの画集に載ってるくらいの名画、“エトルリアの壺のある室内”を所蔵してたことを覚えていたから。この絵があるのなら、ここはほかにもいい絵を持っているのではと期待してもおかしくない。その後入手したチラシに載ってるルノアールの絵をみて、ますます期待がふくらんだ。が、はじめての美術館だから安心はできない。いいのはルノアールの絵だけだったということもある。まあ、ルノワールが好きなのでこれでもいいのだが。
で、期待4割、不安6割で入館した。展覧会のサブ・タイトルは“女性美の肖像”とある。だから、出品作(絵画、彫刻)60点は女性をモデルにした作品が多い。メインディッシュはちょっとおいて前菜から。風景画では、モネの“アンティーブの庭師の家”はとびっきりいいというわけではないが、モネらしく太陽の光がまばゆいほどに輝いている。ちょっと離れて見ると心がやすまる。セザンヌの“小川”は画集にある代表作と較べるとアベレージの作品。
2点あるゴッホの“サン・レミのポプラ”、“大きなプラタナスの木”も色の調子が弱い感じ。ゴッホの絵としては可といったところ。驚いたのはここにセガンティーニの絵、“松の木”があったこと。牛や人物が出てこない風景画ははじめてお目にかかった。モダン・パラダイス展でみた大原美の“アルプスの真昼”と画面構成は異なるが、松やまわりの草木の葉を緑で一本々こまかいタッチで描く表現方法に変わりない。
テーマの女性美の競演ぶりはどうか。魅了されたのは、ラトゥールの“マリー=ヨランド・ド・フィッツ=ジェームス”、ルノワールの“ロメーヌ・ラコー”と“リンゴ売り”、右のモディリアーニの“女の肖像”、ティソの“7月、肖像画の見本”。
ラトゥールとルノワールの“ロメーヌ・ラコー”は雰囲気が似ている。“ロメーヌ・ラコー”はとても綺麗でいい肖像画なのだが、おとなしそうだなという印象が強すぎて、これをずっと見ていたいという気にならなかった。白が多く使われているからだろうか。チラシをみたときはこの絵をMy好きな女性画に登録しようとおもったのだが、これをはずし、代わって今回一番の収穫だったモディリアーニの“女の肖像”を入れることにした。
この絵に200%KOされた。理由は目と背景の茶褐色に浮き立っている肌。このモデルの目はいつもの単なる切れ目ではなく、写実的に描かれている。モディリアーニが描く像は裸婦でも肖像でも、様式化されているので、色も自然な色ではない。よく見る目の色は黒一色であったり、Bunkamuraで開催中の展覧会にでている“母と子”のような緑目。Bunkamuraでもモディリアーニの作品を12点ばかりみたが、この絵のほうがぐっとくる。緑の目をしたうりざね顔の女性には近づきたくないが、この女性なら“どう、元気?”とそばに座って話したくなる。この絵に会えただけでもこの展覧会へ足を運んだ甲斐があった。
9/20の朝日新聞に来年2月、国立新美術館で行われる“ポンピドーセンター名品展”のことが紹介されており、モディリアーニの“デディーの肖像”が使われていた。よく見ると、この絵に描かれた女性の顔が“女の肖像”と同じタイプ。開幕が楽しみになってきた。
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コメント
こんにちは。
展覧会で思いがけずも気に入る作品に出会えるとなんともうれしいですね。
モジリアニの上の肌の色は素敵です。
私も今、行こうと思っている展覧会がいくつかあるのですが、なかなかいけないでいます。
カラヴァッジオ、ファイニンガーの展覧会やグッゲンハイムコレクション、チベットの至宝展。。。。などなど。
こちらは最近雨模様で、ちょっと寒くなってきました。
投稿: seedsbook | 2006.10.04 14:55
いづつやさん、こんばんは
私の情報がお役に立ったようで、嬉しい限りです。
10月の予定もそろそろ出さないといけませんね(笑)
クリーヴランド美術館展ですが、まだ記事にしていませんが、私も行ってきました。いづつやさん一押しのモディリアーニ、
頬のばら色が生命力を表している様で私も強く印象が残っています。あとは窓辺のモネ夫人の肖像。何かを語りかけるような眼差しは今でもくっきりと憶えています。
投稿: アイレ | 2006.10.04 21:42
to seedsbookさん
これまでモディリアーニのうりざね顔の絵は記号のようにみてきましたから、
絵のなかに入っていく感じではありませんでした。ですが、目に瞳があるこの絵
には親しみを覚えました。画像ではあまり出てませんが、背景の茶褐色に
モデルの肌が映えてまして、これにぐっとくるのです。
モデイリアーニの絵ではエポック的な鑑賞体験となりました。ルノワールに会うの
が最大の目的だったのですが、帰るときはこの“女の肖像”が頭の中を占領して
ました。予想外の名画に会ったときは本当に嬉しいですね。
カラヴァッジョですか、そちらに飛んで行きたい気分です。行かれましたら、感想を
お聞かせ下さい。
投稿: いづつや | 2006.10.04 23:19
to アイレさん
アイレさんの9月の予定表にこの展覧会を見つけたときは、嬉しかったです。幅広く
サーチしているつもりでも、やはり漏れがありますから、こうしてブログで教えても
らうのは本当に有難いです。私も入手した情報は早め々にお知らせするようにして
ます。
森ビルのまわりにバナーが風にひらひら揺れてますが、そこを通りすぎるときなぜ、
ルノワールの少女のほかにモディリアーニのこの絵が使われているのかわかり
ませんでした。でも、帰るときは納得しました。クリーブランド美の自慢はこの2点なの
でしょうね。
“女の肖像”に200%魅せられました。思わぬ名画に出会い、興奮しました。
この美術館は結構いい絵を所蔵してます。マチスの代表作をもってますが、小学館
が今出版している画集シリーズ(日本人美術史家が執筆)のピカソとルノワールに
もこの美術館所蔵作品が1点づつ載ってます。ルノワールには“ロメーヌ・ラコー”
がでてます。ですから、このシリーズにモディリアーニがあったら、この絵が入って
たかもしれません。
モネの3点もなかなかですし、エルンストの面白い絵やゴーギャンの象徴派のような
女の絵もあるのですから、びっくりです。
投稿: いづつや | 2006.10.04 23:48
いづつやさん、こんにちは
クリーヴランド美術館展について、ようやく記事ができましたのでTBさせていただきます。
ちょっとヒルズの展覧会向きでないような気がしましたが…運営面ではここはいつも不満が残ります。
作品は良かったです。
モネ夫人の何か言いたげな表情、可愛らしいロメーヌのまっすぐな瞳、そしてモディリアーニの描く女性と…それぞれの表情がとても個性的です。印象に残る絵が非常に多かったと思います。
(だからこそ、運営面がもっと良かったら…と思ってしまいます。)
投稿: アイレ | 2006.10.23 18:12
to アイレさん
ここや森美術館の観客対応が冷たいのはいつも感じて
ます。もう慣れましたから、展覧会の展示内容だけに
神経を集中して、さっと帰ることにしてます。値段も
高め。
この近辺には国立新美術館とサントリー美術館が
来年オープンしますから、競争原理が働いて運営が来場
者志向になればいいのですが。
投稿: いづつや | 2006.10.23 20:25