« 大リーグポストシーズン | トップページ | 東博の仏像展 »

2006.10.10

日本民藝館の朝鮮民画展

500日本民藝館で現在開催中の“朝鮮民画展”(10/3~12/20)を初日にみた。

ここへ通うようになって新しい美の世界をいくつか発見した。そのひとつが大津絵や朝鮮民画。

朝鮮の民画は1階の李朝の白磁大壺や染付瓶などがある部屋の床の間に時々飾られる。まだ数点しかお目にかかってないので、まとめて沢山見せてくれないかなと願っていたら、今回、約100点どっとでた。

朝鮮民画は19世紀から20世紀にかけて、普通の人が描いた絵で、どの家にも飾られていた。描かれる画題や作風により、花鳥画、虎図、山水画、故事人物画、右の文字絵などに分類される。朝鮮を何度も訪れ、民画の美に魅せられた柳宗悦(1889~1961)は出来栄えのいいものを何点も収集した。この中には、柳の慧眼なくしては消え去っていたかもしれない優品がいくつも含まれている。

花鳥画で目を惹くのは色が鮮やかな“麒麟図”、“神亀図”、鶴と鹿の柄を刺繍した“刺繍十長生図屏風”、画面の真ん中に蓮の花を大きく描き、水面に鴛鴦、蓮のまわりに牡丹や鳥を配した“蓮花牡丹鴛鴦”。虎図は獰猛さがでている虎もいれば、子供が描いたのではないかと思われる猫みたいな虎もいる。一番ぐっとくるのは目が黄金で輝いている虎が木の枝にとまっているかささぎを威嚇している“虎かささぎ図”。

故事人物画のなかに、虎がでてくるいい絵がある。それは“山神図”という題がついている道士の体に虎が巻きつく面白い絵。道士の顔は漫画、“ちびまるこちゃん”にでてくるおじいちゃんの顔にそっくり。見てのお楽しみ。この絵は1905年、日本の浮世絵収集家が北朝鮮の山中で手に入れたもので、それが柳の晩年の1959年に日本民藝館に寄贈されたという。

今回、興味深く見たのが文字絵。全部で10点くらいある。右は“孝・悌・忠・信・禮・義”の“孝”(右)と“悌”(左)。太い墨線のなかに魚や花びら、葉っぱ、2羽の鳥を配置して文字をつくっている。絵のような文字である。よく考えると、これもダリが使うダブルイメージの一種。魚や花を絵としても楽しめるし、文字の一部も構成している。これは面白い。

浮世絵師、歌川国芳の絵にこれと発想が一緒のものがある。“なまづ”という平仮名を猫の体を組み合わせて表現したもので、ほかに“うなぎ”、“ふぐ”などが残っている。西洋画ではアンチンボルドの有名な奇画がある。例の鼻に西洋梨、ぽっぺたに桃、目の瞳に野いちごを使ったりして人の顔を描いた人物画(拙ブログ05/2/20)。

文字は読めないほうが多いが、文字のかたちを大胆にデフォルメし、墨線と花鳥を組み合わせて絵のようにした文字絵をじっくり楽しんだ。新たな美に接したときには新鮮な喜びが得られる。年に何回かはこういう体験をしてみたい。

|

« 大リーグポストシーズン | トップページ | 東博の仏像展 »

コメント

私が最初に文字絵を見たのは映画『風の丘を越えて 西便制』というパンソリ芸人を描いた作品からでした。
近代になりどんどん昔の芸が失われてゆく。
パンソリが廃れアメリカの洋楽に替わり、文字絵も誰も必要としなくなる。
せつない気持ちで見ていました。

なんでも昔は人名なども花やめでたい鶴亀で飾ったようです。

投稿: 遊行七恵 | 2006.10.11 23:58

to 遊行七恵さん
文字絵が映画にもでてくるのですか。興味深いですね。文字絵を沢山見て
わかったのですが、芹沢銈介の染物屏風に部分々の色を変えデザイン化
された平仮名や漢字が出てくるのは、朝鮮の文字絵に刺激されたのでは
ないでしょうか。

吉祥紋様で人名を表すのは面白いですね。朝鮮文化も奥が深く、刺激に
なります。

投稿: いづつや | 2006.10.12 10:24

文字絵ですか。初めて知りました。
美しいものですね。
昔の時祷書などの飾り文字も美しいけれど、この文字飾り素敵です。
自分の名前を飾って見たくなりました。

投稿: seedsbook | 2006.10.12 15:17

to seedsbookさん
文字絵にはいろいろなヴァリエーションがあります。文字の一部に魚とか花
をおくだけのものもありますが、字のイメージをそのまま残した太い墨線でなく、
輪郭を細い線でとり、そのなかを波のような曲線デザインで埋めるといった
ものもあります。

グローバルレベルでみて、この遊び心にあふれる文字絵はすごいなと思い
ます。朝鮮の美、恐るべしです。

投稿: いづつや | 2006.10.12 21:35

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 日本民藝館の朝鮮民画展:

« 大リーグポストシーズン | トップページ | 東博の仏像展 »