« 村上豊の挿絵 | トップページ | 歌川国芳の猫文字 »

2006.10.18

棟方志功の鯉図

509大丸東京店では昨日まで“幻の棟方志功展”を行っていた。

展覧会のチラシを入手したときは03年、大原美術館であった大回顧展と出品作がだいぶ重なるなと思ったが、パスする気持ちはさらさら無く、すこしでもプラスαがあればまた楽しめると足が自然に東京駅へむかう。これがファン気質というものであろうか。

青森県立美術館や棟方志功記念館で肉筆画の名品(拙ブログ9/26)を見てからまだ、1ヶ月もたってないので、棟方シリーズ3連チャンといった感じ。今回の見所は色つき画。大原総一郎の母、大原寿恵子の歌集から24首を選んで絵にした“歌集抄板画柵”が素晴らしい。03年、これを観たときは大原家が所蔵する棟方作品の質の高さに驚いた。墨の色と強い黄色、緑、紫、赤に心がゆすぶられる。色を感じたいとき、本棚からこの絵を引っ張り出して観ている。お気に入りは“立つ子”、“黄昏”、“夕坂道”、“山松静”。

肉筆画でぞっこんなのが“風神雷神図”、“みみずく図”、右の“御群鯉図”。この3点には棟方の子供のようなピュアな精神がそのまま表れている。宗達の風神雷神は棟方志功の手にかかると、こんな優雅な風神雷神に変身する。天女が天空を舞っているようである。枝に沢山とまったみみずくも可愛い。みみずくといえば目だが、大きな目の形はよくみるとワンパターンではない。瞳がまんなかに寄っているのもいれば、全部真っ黒につぶされていたり、片目の瞳が三角でもう一方が円というのもいる。今回、初見の“梟図”もあったが、みみずくの方が見てて楽しい。

右の鯉の絵を見るのはこれで3回目。大好きな絵である。絵画というのは目の前の対象をそのまま忠実に再現しなくていいのだ、ディテールが細かく描かれてなくても、鯉が水の中を泳ぎ回るイメージが伝わればいいのだということを教えてくれたのがこの絵。小さい頃、池にいる鯉をみるのが好きで、どういう風に泳ぐのかよく観察した。背景には水の色はついてないのに、この絵を見ていると、四角の池のなかをのびのびと元気よく泳ぎまわっていた赤い鯉が鮮やかに蘇ってくる。

棟方の絵をみるといつも元気になる。次の棟方作品はどこにしようかと思案中。秩父にある“やまとーあーとみゅーじあむ”へ行くとまた初見の作品があるかもしれない。

|

« 村上豊の挿絵 | トップページ | 歌川国芳の猫文字 »

コメント

ああ、とっても動きのある逞しい作品ですね!
音までも聞こえてくるかも知れません。

投稿: seedsbook | 2006.10.19 14:22

to seedsbookさん
この鯉の絵は六曲一双の屏風絵です。これは左隻で
右隻とあわせて32匹の緋鯉が描かれてます。
これは大原孫三郎の還暦祝いの贈り物として、息子の
総一郎が鯉の得意な棟方に描いてもらったものです。

ゆったり進み、そしてすいっとターンする鯉が目の
前にいるようです。鯉のあの丸っこい体をよくよらえ
てますね。しかも、ぴちぴちとした愛嬌のある動き
なので、思わず口許が緩みます。ほんとうにいい屏風
です。

投稿: いづつや | 2006.10.19 16:44

いづつやさん、こんばんは。

私もこの鯉が大好きになりました。
一緒に見に行った友達と、エサここからあげたくなるわね、
と言いながら、ずいぶん長いことその前で観察していました。
いづつやさんがおっしゃるように、本当に元気を頂ける絵ばかりでした。

投稿: あべまつ | 2006.10.19 22:33

こんにちは
私はあの風神雷神図に心打たれました。
なんて軽やかなやさしい風神雷神さまたちなんでしょうね。
あの写真の笑顔からも感じられますが、棟方志功は
いつまでも子どもの心を保ち続けたのでしょうね。

ちょうど新宿でクラナハの絵を見て、考えさせられました。

投稿: 一村雨 | 2006.10.20 08:00

to あべまつさん
この緋鯉の屏風は本当にいいですね。何時間でも
見ていたい気持ちになります。大原家にはもうひと
つ、家族が実際につかっていた部屋の襖に描かれ
た鯉の絵があります。真鯉と緋鯉が全部で64匹。

03年の回顧展では、会場に部屋のセットをつくり
この襖絵を見せてました。大原総一郎が30歳の
とき30匹、34歳のとき34匹、それぞれ歳の数
だけ描かれたそうです。

こちらの鯉は屏風の鯉と較べると頭から尻尾まで
が短く、丸々太ってますので、愛嬌があります。
この絵も忘れられません。

投稿: いづつや | 2006.10.20 13:33

to 一村雨さん
7月ごろ、展覧会のチラシに03年の回顧展で感動し
た“風神雷神図”と“御群鯉図”がのっているのを
みたときは、嬉しくなりました。こんな“風神雷神”
もあったのですね。この肩の力がぬけるやさしい風神
雷神は丸っこいフォルムと豊かな色彩感覚が特徴の
肉筆美人画のひとつのヴァージョンにみえます。

会場へ入っていきなり、本命の2点ですから、面食
らっちゃいました。もっと奥まったところに飾る方が、
展示の仕方としてはよかったような気がします。

投稿: いづつや | 2006.10.20 14:49

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 棟方志功の鯉図:

« 村上豊の挿絵 | トップページ | 歌川国芳の猫文字 »