興福寺の国宝特別公開
応挙と芦雪の回顧展を開催している奈良県立美術館から歩いて10分もかからない興福寺で、都合よく国宝の特別公開(11/13まで)をしていたので、駆け足で観てまわった。
興福寺は何度か訪れたが、五重塔をバックに写真を撮ったり、国宝館で彫刻の名品を見るのが定番コースで、南円堂や北円堂、三重塔の中へは入ったことがない。
毎年、秋に(春はない?)ある特別公開で、今年は北円堂、三重塔の番。日本画の展覧会と特別公開がタイミングよく重なったのは幸運であった。まず、北円堂へ向かった。04年にあった“興福寺国宝展”(東芸大美)で“無著”、“世親”はみたが、“木造弥勒如来座像”は残念ながら出品されなかった。
八角円堂の形をした北円堂のほうが南円堂より建てられたのは先らしい。真ん中にある“弥勒如来”は運慶の晩年の代表作。そのまわりを、後ろの“無著”、“世親”、横の2体の脇侍菩薩、そして四方にいる“四天王立像”が囲む。展覧会の会場で、単体の“無著”、“世親”を観たときはすごく大きく感じられたのだが、この定位置ではなんだか小さく見える。邪鬼を踏みつけ、手を上にあげたり、胸のところで横に曲げたりして大げさなポーズをとっている“四天王”でも同じような印象を受ける。目は厳しいが、ふくふくしい丸顔をした安定感のある“弥勒如来”を観たので、次の目標は南円堂の“木造不空羂索観音菩薩座像”。
国宝館はまさに国宝の仏像のオンパレード。国宝ばかりあるので、重文や普通の仏像に割く時間がおのずと短くなる。久しぶりの対面となったのが右の“阿修羅像”。小さな顔だが、目、鼻、口、ひとつ々の形がよく、そしてバランスがいい。限りなく美しい仏像である。この美しい顔をみると、いつも若くして亡くなった女優、夏目雅子を思い出す。圧倒的な存在感で迫ってくるのが“千手観音菩薩立像”。かなり前にみたので、その大きさを忘れていた。いくつもの手が体から出ているというのは造形的にも見栄えがするが、これによって光がまわりに放射されるように錯覚する。
今年は“板彫十二神将”がすべて展示されたというので目をかっと開いてみた。首を大きく横に傾け、相手を射すくめるような鋭い目つきに惹きつけられる。また、体をひねり、一歩前に踏み出すような足の運びなど動きのあるフォルムはみてて飽きない。一枚の板からダイナミックな動きとユーモラスさを感じさせるフォルムを彫りだし、神将に命を吹き込む高い技術にただただ感服するばかり。
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コメント
いづつやさん、こんにちは。
私は、今回の特別公開で、興福寺やっと全部拝観することが
出来ました。
国宝館、本当に国宝ばかりで、「何だこちらは重文か」など
ぜいたくな気分に陥ります。
仏の前には国宝とか重文とか、関係ないので、
そんな不遜な気分になったことを反省しました。
投稿: 一村雨 | 2006.10.28 05:45
to 一村雨さん
興福寺を全部みられたということは、毎年計画的に奈良
に行かれているということですね。私のほうは今年た
またま運よく北円堂と三重塔の中に入れましたが、南円
堂はいつになるか分かりません。
国宝館で“板彫十二神将”が全部みれたのも大きな収穫
でした。寺院には国宝館はつきものですが、ここのは数
が多くて、日本美術を代表する傑作揃いなので満ち足り
た気分になります。
投稿: いづつや | 2006.10.28 23:21