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2006.10.22

八王子市夢美術館の現代日本画名作展

302はじめて訪問した八王子市夢美術館で内容の濃い展覧会をみた。

市制90周年を記念した“現代日本画名作展”(12/10まで)が諏訪湖の辺にある北澤美術館の日本画コレクションを展示したものだったことは入館して気がついた。

04年、ガレのガラス作品をみるため、北澤美へ行ったとき平常展示の部屋に東山魁夷の絵が飾ってあったのはかすかに記憶している。が、ここがこれほど多くの日本画を所蔵していたとは全く知らなかった。展覧会のタイトルに“現代日本画”とあるのは、このコレクションが1960年以降に制作された作品を集めているから。

今回は記念展に相応しく、コレクションの中から優品を35人の作家に絞り、63点展示している。観終わって購入した北澤美術館の日本画図録でチェックすると、これはという作品はほとんどあった。展示の多い画家は東山魁夷が最も多く7点、3点あるのが杉山寧、高山辰雄、山口華楊、山本丘人、上村松篁、小倉遊亀。東山魁夷の作品では04年4月、兵庫県立美術館であった大回顧展にもでていた“白夜”、水面が月の光で白く輝く“月明”、木々や城、橋を緑のいろいろな諧調で描いた“緑のハイデルベルグ”に魅せられた。動物画家、山口華楊の大作、“白狐”、画面一杯に広がる緑の葉っぱのなかから黒猫がこちらを見ている“青柿”も見ごたえがある。

日本画は山種、東近美、東博へ毎月といっていいくらい通い、目を慣らし、ベンチマークができているので、作品をみての感激度はこれらの作品との比較になる。そういう目でみて、テンションが上がった作品は横山操の“赤富士”、工藤甲人の“蛍の郷”、橋本明治の右の“舞妓”。

図版をみて、いつか本物を見てみたいと思っていたのが横山操が描いた“赤富士”。こんなところにあった。富士の絵肌はなめらかではない。岩面のように凹凸がある。そして、裾野に広がる金泥の色面と赤富士の対比が心に響く。画面は鮮烈な色彩で埋め尽くされているのに、そこに流れるのは静かでひっそりとした空気。大きな力をもった絵である。“蛍の郷”は小茂田青樹の“虫魚画巻”(東近美)の作風とよく似た幻想的な作品。今年は工藤甲人とは青森県美で代表作に偶然会ったり、いろいろ縁がある。

右の“舞妓”は橋本明治のお得意のモティーフ。橋本明治は東京芸大で東山魁夷と同級生だった画家。日本画を愛する人でも、橋本様式といわれる太い描線で人物の顔や衣装を縁取る人物画は好きでないという方がいるかも知れない。こういう美人画は珍しい、別の言い方をすれば橋本独自のものだけに当然好き嫌いがはっきり分かれる。

島根県の浜田に生まれた橋本明治の回顧展が04年、島根県美であり、そのときでてた舞妓の絵に完全に嵌った。ここにある“舞妓”も心を揺すぶる。鏑木清方や伊東深水の描く柔らかい情趣を感じさせる美人画ではないが、原色に近い強い色彩を太い描線で縁取る描き方は観る者に明快で爽やかな印象を与える。凧絵や青森のねぶた祭りの絵も強烈な描線で表現されているように、晴れやかな舞台にたつ舞妓はこういう描き方だと存在感が強くでる。

美術館へ着くまで時間がかかったが、大きな満足が得られたので気分は上々。

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コメント

そうそう、僕も横山の赤富士に一番惹かれました。
美術館が大きくないので小さな作品の展示が多かったですね。
小島善太郎の特集展示もありましたね。
近代美術館から作品を借りてくるなど力の入れ方がすごいです。
この美術館のコレクションの柱になるのでしょうか。

投稿: oki | 2006.10.22 22:29

to okiさん
衝撃度の一番大きかったのが横山操の“赤富士”でした。
何度も同じ富士山をだすのも新鮮味がありませんので、今
回は割愛しました。相対的に小作品が多かったですね。

東山魁夷と山口華楊の作品にいいのが揃っているように
思います。三鷹へ急ぎましたので、小島善太郎はパスし
ました。

投稿: いづつや | 2006.10.23 10:40

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市制90周年記念 現代日本画名作展 −文化勲章受賞作家を中心に− 2006年9月29日から12月10日 八王子市夢美術館 はじめてでかつ、ちょっと遠いですが、八王子市まで行ってきました。八王子の街中を歩くのすら二度目ですが、やはり絹で栄えただけあり、小奇麗な街並みです。ともあれ、北澤美術館所蔵の名作日本画が並んでいるとのことで、訪れました。 山口華楊:「白狐」(1983)「青柿」(1978)「秋晴」(1976)。後者2点は猫が... [続きを読む]

受信: 2006.12.02 15:20

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