三井記念美の楽茶碗展
今、ビッグなやきもの展があちこちで開かれている。西の京都が華麗な京焼なら、東の東京は赤と黒の芸術、楽茶碗。
三井記念美術館の開館一周年記念特別展、“楽茶碗展”(11/12まで)にも名だたる名碗が集まっている。
この展覧会は9/16から約3ヶ月のロングラン興行だが、右の長次郎作、“黒楽茶碗 銘大黒”(重文)は開幕から2週間と10/24~11/12にしか展示されないため、鑑賞のタイミングを後半の展示まで遅らせていた。
430年の伝統を誇る楽焼の作品をこんなに沢山観たのは過去にない。全部で85点ある。三井はやきものコレクションで有名なので、美術館やコレクターは協力を惜しまないのであろう、これぞ黒楽茶碗、、赤楽茶碗というのがずらっと飾ってある。初代長次郎から15代吉左衛門までの作品を通して鑑賞する機会は滅多にない。出品作のいくつかは五島美術館の“茶の湯 名碗展”(02年、05年)でもお目にかかっているので、今回は総まとめの気持ちでじっくり観た。
数では長次郎と三代道入(俗称ノンコウ)の作品が多い。長次郎は黒楽が10点、赤楽が4点。お気に入りは右の黒楽茶碗“銘大黒”、“銘俊寛”、“銘面影”、赤楽茶碗“銘無一物”。“銘大黒”は五島美では展示替えで観れなかった茶碗。千利休が所持してたもので、長次郎の黒楽茶碗では一番の名碗と言われている。腰の丸みがなんともいい。晦渋な味わいを見せる黒楽茶碗には見た目の美しさだけでなく、作者長次郎の深い精神性が感じられる。
10点ある三代道入では“黒楽茶碗 銘升”と“赤楽茶碗 銘鵺(ぬえ)”にぐっとくる。二つとも3度目の対面。いつも“銘升”の胴にみられる黒釉を掛けはずしでできた素地の黄色み部分に釘付けになる。また、“銘鵺”の刷毛で塗ったような黒の斑文が強く印象に残る。ノンコウの茶碗は光沢があり、形も四角の升のように造形的な面白さがあるので、思わず手に持ってみたくなる。胴に黄色や黒をつかってアクセントつけるのをみると、ノンコウの感性はかなりシャープ。
展示の最後に15代の作品が4点あった。15代楽吉左衛門にぞっこんなので気分は最高。丁度1年前くらいに、智美術館でみた個展の感動(拙ブログ05/10/2)が蘇ってきた。楽家歴代の作品に加え、本阿弥光悦の“黒楽茶碗 銘村雲”がある。1点だけでもこれは嬉しい展示。光悦独特の筒形の腰にすこし丸みのあるこの名品にまた心を打たれた。
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