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2006.09.26

棟方志功の肉筆画

2477月にオープンした青森県立美術館はPR活動に相当力をいれたのではないだろうか。

新日曜美術館では司会者が展示会場にでむき、奈良美智をゲストに呼んで“シャガール展”を紹介していたし、TV東京の人気番組、“美の巨人たち”は常設展示室に飾ってある棟方が描いた肉筆画にスポットライトを当てていた。

展示内容に話題性があるとはいえ、新設の美術館としては破格の扱いである。われわれもこの二つの番組をみて青森行きを決めたのだから、TVメディアの力は大きい。

メインディッシュのシャガールの絵を堪能したあと、鮮やかな色彩を頭になかに残しながら、常設展示の部屋に急いだ。目指すは美の巨人たちが取り上げた棟方志功の肉筆画、弁財天の絵。

が、棟方コーナーの最初に展示してある肉筆画の大作、“御三尊像図”に急ぎ足をストップさせられた。立派な額装に収まった三幅対である。以前、どこかで見たような記憶がかすかにあったが、それは横において熱心にみた。画面の大半は衣装の土色と背景の赤が占め、のびのびとした墨線で体の輪郭や衣装の線をひかれた仏様の姿をみていると心が洗われる。これまでみたなかでは上位にくる肉筆画の傑作だった。

家にもどって過去の図録をチェックしたら、この絵は03年11月、Bunkamuraで開催された“棟方志功 生誕百年記念展”にでており、やっとその時の感動が蘇ってきた。3年前のことを忘れるなんて、ああー情けない!お目当ての右の弁財天は図版があるが、東京会場には出品されなかったから、これは観ていない。

この絵には“御吉祥大弁財天御妃尊像図”という長い名前がついている。TVで観たとおりの素晴らしい色彩に体がとろけそうになった。衣装の赤、黄色、緑が乱舞し、体の白の輝きはちょっと前みた“アレコ”にでてくる白い馬を彷彿させる。大首絵の美人画(拙ブログ05/11/5)にぞっこんだが、ふくよかな弁財天を全身立像で大きく描いたこの絵にも魅了される。言葉を失うくらい感動した。

翌日、朝一番で青森市内にある棟方志功記念館を訪ねた。いつか行ってみようと思っていたが、大シャガール展が誘引となり、訪問が一気に前倒しになった。ここも鎌倉にある板画美術館のように、所蔵品を3ヶ月に一回のペースで展示している。6/27~9/24の展示にはお馴染みの名作、“華厳譜”、“観音経曼荼羅”、“釈迦十大弟子”、“湧然する女者達々”があった。

嬉しかったのはここにもぐっとくる肉筆画があったこと。そのひとつが“御鷹図”。首の青、足の黄色、羽の緑が目にしみるほど鮮やか。鎌倉の板画館にも鷹のいい絵があるが、ここの鷹図のほうに軍配があがる。また、縦長の掛け軸、“大滝図”では岩や木々に落ちる水しぶきを描写した強烈な青に釘付けになった。

帰り際、館員の方から棟方志功の作品を展示している美術館のリストをいただいた。名前だけは知っている“やまとーあーとみゅーじあむ”は秩父市にあるようだ。機会があれば訪問しようと思う。

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コメント

こんばんは
今度大丸でクラレの持つ棟方の名品展がありますが、そこでも大和絵がたいへんよかったです。

それからいづつやさんは鎌倉の方なので横浜にも出られると思いますが、馬車道だったか、『勝烈庵』というとんかつ屋さんが棟方志功のお気に入りのお店で、そこにも色々志功の書画などがあります。
ステーキハウスのスエヒロはマッチが彼のデザインでしたね。

投稿: 遊行七恵 | 2006.09.27 23:03

to 遊行七恵さん
大丸東京店でもうすぐはじまる棟方展が楽しみです。市営地下鉄横浜駅
のホームで電車を待っているとき、棟方志功の美人画を使った“勝烈庵”
の広告板をよくながめてます。

スエヒロのマッチもそういえば棟方のデザインでしたね。昔はよくスエヒロの
ステーキ食べたのですが、もうながらく行ってません。七恵さんは関西の方な
のに東京のこともよくご存知ですね!感心します。

投稿: いづつや | 2006.09.28 15:10

いづつやさま、
こんにちは。青森では私の行けなかった棟方志功記念に行かれたのですね。記念館は見れなかったのですがいづつやさんもご覧になった青森美術館で棟方志功のお部屋に案内していただき、宿泊した場所にも沢山作品が飾ってありましたので、それらをじっくり拝見いたしました。
それに来年はパリ日本文化会館で「棟方志功展」があるとか。
とても楽しみです。

投稿: あかね | 2006.10.09 02:38

to あかねさん
パリに住んでおられるあかねさんが日本に帰られた際、京都から遠く離れた
青森に行かれ、県美でわれわれもみた大シャガール展と常設の棟方志功の
絵を楽しまれたというのは不思議なつながりですね。同じ感動を共有で
きるのは嬉しいかぎりです。

常設展示室にある棟方の肉筆画の大作、“弁財天”は美人画のなかでは最高
傑作です。これまで、美人画を何点もみましたが、これほど感動する絵ははじ
めてです。

日本では今、大原家が所蔵する棟方作品が大丸東京店で公開されてます(10/5
~17)。来年、パリでも棟方志功展があるのですか。すごいですね。ムナカタ
の版画は国際的に有名ですから、フランス人も沢山行かれるのではないでしょ
うか。

投稿: いづつや | 2006.10.09 23:04

いづつやさん、昨日、ようやく行ってきました。

棟方志功の大自然を間近に感じられて、本当によかったです。
板画だけじゃないって事、実感しました。
今日は、「わだはゴッホになる」の、ゴッホを森アーツのクリーブランド美術館展で観てきました。
根っこの日本の土を感じる棟方志功。力をずんともらってきました。TBありがとうございます。こちらもTBさせていただきました。

投稿: あべまつ | 2006.10.10 21:54

to あべまつさん
この展覧会は03年大原美術館でみた大回顧展にでた作品とダブルものが
いくつかあると思ってますが、棟方大好き人間としてはまたあの素晴らしい
“御群鯉図”が見られるのですから、見逃せません。13日に会ってきます。

03年に出品された大原家所蔵品の質の高さにびっくりしました。今年は
青森の記念館も訪問しましたので、棟方志功の作品を所蔵するビッグ4
(日本民藝館、大原美術館、棟方板画館、青森記念館)は全部行ったことに
なります。棟方志功、竹久夢二とは一生つきあっていくつもりです。ともに
スーパーカラリストです。

投稿: いづつや | 2006.10.10 23:22

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受信: 2006.09.27 23:00

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