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2006.09.25

工藤甲人の夢と覚醒

281青森県立美術館の常設展示で全く予想だにしなかった絵と遭遇した。

右の絵がそれで、題名は“夢と覚醒”。描いた画家は弘前市出身の工藤甲人(1915~)。

洋画のようにみえるが、これは日本画。近代日本画のなかには時々、通常イメージする風景画や人物画とはかけ離れた西洋画ぽい画風のものがある。

これはその極めつけのような作品。図録“昭和の日本画100選”(1989年、朝日新聞社)でこの不思議な絵を見て以来、いつか本物に会いたいと願っていたが、思わぬ所でそれが実現した。

常日頃から観たいと思っている作品がいつ、どこの美術館に出品されるということが事前にわかっている場合は、わくわくした気持ちでその絵と対面するのだが、突然狙いの絵が前に現れるとちょっとパニクる。そして、すぐ嬉しさがこみ上げてくる。“ええー、工藤甲人の一番の傑作がここにあるの!?”。

個人の所蔵となっているのが、ここに展示されているのは、寄贈されたか寄託の作品なのであろう。美術館が新設されたおかげでこの名画が多くの人の目にふれるようになったというわけである。日本画は洋画とちがっていつも展示されないので、開館記念という特別な展示機会にめぐりあったというのは大変ツイている。こういうときは、ミューズに感謝々。

この絵が発するイメージは普段見慣れている日本画ではない。一番近いのは鳥や森をモティーフにして、神秘的な力をもった自然を描いたマックス・エルンストの世界。また、グロッぽさと怪奇な描写で見る者を驚かせるヒエロニムス・ボスの絵画表現に通じるものがある。真ん中で枯れ木の中からこちらを見ている半身の女性の顔は青白く、まともに目をあわせられない。こうした木の一部を使い、覚醒を表現したのはボスから霊感をうけたためかもしれない。ボスの絵には似たような場面がでてくる。

その上には眠る女の胸像があり、左に虹がかかり、2羽の蝶が舞っている。この絵は全部が々シュルレアリスムのような強烈な夢の世界ではなく、遠景の描き方には日本画の特徴である装飾性や象徴的な表現による幻想的でみずみずしい感じがみられる。こんなに美しくてシュールな日本画と会えたことは大きな喜びである。

工藤甲人の絵を見る機会は少ないが、所蔵する美術館の情報をいくつか。横浜美術館の“地の手と目”と京近美の“黒いとばり”はよく似た絵。東近美には“霧”がある。

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