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2006.09.27

出光美の風神雷神図屏風展

292宗達が描いた国宝、右の“風神雷神図屏風”(10/1まで)を4年ぶりにみた。

琳派の作品はその雅な装飾美や様式化されたデザインの美しさに魅了され、気持ちが高揚することが多いが、この風神雷神図はじっとみているとなぜか元気がでてくる。

出光美術館は京博といい関係ができてるのか、宗達の“風神雷神図”をよく展示する。宗達の原画とこれを模写した光琳と抱一の作品が一緒に並べられるのは60数年ぶりとのこと。3つのなかで、一番見る機会が多いのが光琳の風神雷神(拙ブログ06/4/15)。

酒井抱一のははじめてみた。出光美が所蔵するこの絵はどういうわけか展覧会にでてこない。扇絵の風神雷神図(太田記念美)はみたことはあるが、屏風にはとんと縁がなかった。抱一の弟子、鈴木其一にも絹地の襖に描いた風神雷神図(東京富士美)があるが、これは名古屋市博物館であった琳派展(94年)に光琳の絵と共にでていた。で、今回は入館すると、まずお目当ての抱一の風神雷神をみた。

右の緑の体をした風神は見慣れている光琳と較べると、ぐっとくるものがない。肝心の顔がどうもという感じ。光琳のほうがずっとエネルギッシュ。それに力強い鬼を表す筋肉の描写が弱く、ふくらはぎも太くない。また、手に持っている風袋の形が平板。宗達、光琳のほうが風がいっぱいつまった袋のように見える。抱一のいいところは髪の毛。これは光琳より迫力がある。左の雷神については、足の裏が異常に大きいのが気になるが、光琳の雷神とあまり変わりない。

3つの風神雷神図を見比べてみると、宗達の描く鬼の体が一番自然で、真ん中に間をとり配置する構成には安定感がある。と同時に、絵の中から今にも飛び出してくるような動きが感じられる。これはいくつかの視点で風神雷神をとらえているため、手足や体全体が立体的に見えるからである。風神の左肩の盛り上がりが大きく、足首は細く、ふくらはぎも弾力がありそうで太い。

この絵の中で、一番惹きつけられるのが雷神の勇ましいポーズ。光琳、抱一とのちがいは両腕が長くみえること。3回くらい比較してみたが、光琳、抱一の場合、ひじを上にあげた右腕のほうが大きく、それに較べるとまっすぐ伸びた左腕が短い。とくに抱一のアンバランスさが目立つ。宗達の雷神が光琳、抱一よりのびのびして、躍動感があるように感じられるのはこうした描き方のせいかもしれない。

色使いでいえば、目映いばかりの金地にぴたっときまった風神の緑と雷神の白のコントラストが見事。雷神は伝統的に赤で着色するのに、宗達は金地には白が映えると感じ、白の雷神を生み出した。色やデザインには敏感な扇絵師の感性は実に天真爛漫でシャープ。

3人の絵師が豊かな想像力と技の限りを使って描いた“風神雷神図屏風”を一緒に見られるのはめったにないこと。満足度200%の展覧会であった。

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コメント

いづつやさん、こんばんは。

いづつやさんも行っていらしゃったのですね。
本当にこの今、3人の風神雷神が集合しているなんて、
奇跡ですよね。
美しいものは、受け継がれていくのだと、思ったのでした。
TBさせていただきました。

投稿: あべまつ | 2006.09.27 21:37

こんばんは。
TBありがとうございます。

確かに抱一の作品って出光には
ほとんど展示されませんね~
不思議です。

投稿: Tak | 2006.09.27 22:38

いづつやさん、雪月花です。ごぶさたしておりました。
いづつやさん、ごめんなさい。出光美術館の記事をトラックバックしたつもりが、別の記事をトラックバックしてしまいました。申し訳ございません。お手数ですが「美へのまなざし‥」という記事のTBを削除ください‥失礼いたしました。
わたしも、一緒に一度かもしれない出光美術館の試みに感謝しています。かれらの先達への熱い思いが伝わってくるようでした。かれらの無意識的な「琳派の継承」は、琳派ならではですね。


投稿: 雪月花 | 2006.09.28 09:01

to あべまつさん
琳派の文化記号というと“風神雷神図”と“紅白梅図”ですね。琳派狂い
ですから、この企画は有難いです。風神雷神図のほか期待通り、抱一の
優品“八ツ橋図”や“紅白梅図”もでてましたから、言うことありません。また、
大好きな光琳の“大黒天図”にニコニコ顔です。

投稿: いづつや | 2006.09.28 10:31

to Takさん
抱一の風神雷神図は光琳の模写ですから、琳派展で声がかかるのはやはり
光琳の方でしょうね。好みからいえば、光琳の方がいいですね。

投稿: いづつや | 2006.09.28 14:54

to 雪月花さん
宗達の“風神雷神図”は傑作ですね。雷神の顔がとても気に
入ってます。怒っているようにもみえますが、むしろ“ケッ、
ケッ、ケ”と笑ってるような気がします。

こんなユーモラスな絵を描くのですから、宗達という絵師の
画才は底知れないですね。どんな顔をしてたのでしょうね?
興味がつきません。

投稿: いづつや | 2006.09.28 15:34

いづつやさん、TBを送りなおしました。あわてんぼですみませんでした。
ふふ、そうですね、わたしも宗達の神さまがいちばん好きです。キャプションには三つの絵の中でいちばん「神」に近い、とありましたけれども、どうも高山寺の「鳥獣戯画」に通じるユーモアがあふれていると思えてなりません(笑
わたしにとりましても宗達は大きすぎてつかみどころがありません。光琳は恋人です~ ^^

投稿: 雪月花 | 2006.09.28 20:12

to 雪月花さん
TB有難うございます。宗達は粋な町衆の求めていることを常に意識してた
絵師ですから、狩野派のようなブランド絵師集団とは距離をおいて、自由に
絵を制作してたのでしょうね。

光悦とコラボして平安の王朝ルネサンスをなしとげますが、ユーモラスな
雷神像は雪月花さんがご指摘の“鳥獣戯画”の画風を受け継いでいるかもし
れませんね。

源氏物語や伊勢物語を題材にしたり、おもしろい風神雷神図を生み出したり
と宗達の幅広い才能に感服します。天才はいつの時代でも多才ですね。

投稿: いづつや | 2006.09.29 00:00

いづつやさん、こんばんは
光琳の「風神雷神」は一度東博で見たことがありましたが、宗達、抱一は初めてでしたので、その絵の魅力を堪能しました。
時代、場所は変わっても「美」の創造性や精神が受け継がれた琳派ですが、今回はそういったムーブメントの特異性を強く感じました。

投稿: アイレ | 2006.09.29 22:14

to アイレさん
三つの風神雷神を見比べますと、画面構成は基本的に同じでも、少しずつ
フォルムや色使いが異なりますから、そこに絵師の個性がでているのでしょ
うね。いい悪いではなくて、見る側の好みで、評価が分かれるのは仕方がない
ですね。

好みからいうと、やはり宗達のオリジナルに一番親しみを覚えます。雷神の
笑っているような顔と歌舞伎役者のような派手なしぐさに魅せられます。
雷神が大きく見え、上にとびあがるような感じです。そして、風神は光琳、
抱一と較べると足の甲や裏がはっきりしてますので、右のほうからビュー
と飛んできたように見えます。

はじめてみた抱一の風神雷神は細部の描写がさらさらという感じでした。
お殿様の出ですから、鬼の荒々しさやエネルギッシュな感じを形より、シャープ
な赤や黄金、緑で表現したかったのかも知れませんね。髪の毛なんかはっと
します。これも抱一流の琳派ですね、

投稿: いづつや | 2006.09.30 13:53

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