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2006.09.20

広重の花鳥画

307原宿にある太田記念美術館と較べると、東博の浮世絵コーナー(本館2階)は展示スペースが広いので、ゆったりした気分で作品を鑑賞できる。

展示期間は1ヶ月弱。8/15から9/10のものを観たばかりなのに、もう9/12から10/9の作品に切り替っている。

展示数は30点くらいだが、毎月出かけると年間では300点をこえる浮世絵をみたことになる。ここには名品が沢山あるので、毎度大きな満足が得られる。

今回は注目の作品があった。重美にもなっている鈴木春信の“雨夜の宮詣(見立蟻通行明神)”。画面の外に左半分がはみ出した鳥居をバックに、左手に堤灯、右手にやぶれ傘をもつ若い娘が描かれているこの風俗美人画は春信の代表作のひとつ。浮世絵と長くつきあっているのに、どういうわけかこの絵とは縁遠く、02年山口県立萩美術館であった大規模な回顧展でも会えなかった。

で、2年前からこの平常展に出てくるのを今か々と待ち続け、今回ようやく対面することができた。着物の裾や帯が風で後ろに流れ、体をよじる娘のポーズが実にいい。この娘は当時江戸で人気の水茶屋の看板娘お仙。“お仙ちゃん、この雨のなかどこへ行くの?”とおもわず声をかけたくなる。春信ではもう2点、“五常・智”と“鏡恨”がある。

広重の作品は毎回何点か出品されるが、風景画だけではない。花鳥画や動物、魚を描いたのも登場する。前回は名所絵のほかに“魚づくし”が9点あった。伊勢海老、鮑、あじ、鯛、ひらめ、鮎など身近な魚類が画面いっぱいに大きく描かれている。魚は生き生きして愛嬌のある形をしているので、見てて楽しい。

今回の見所は月に兎と雁を組み合わせた短冊絵、“月下木賊に兎”と右の“月に雁”。どちらも大きな月に驚かされる。とくに3羽の雁の向こうにみえる月の大きいこと。短冊という画面にそくして、雁を上から下のほうへ飛ばし、その姿を月の光がくっきりと浮かび上がらせている。並みの絵師の感覚からはこんな構図はでてこない。広重の自然をみつめる穏やかな心と生き物に対する愛情がうかがえる絵である。雁が飛翔する場面を描いた作品には名品が多い。例えば、同じく広重の作品から、東都名所のなかの“高輪之明月”(拙ブログ06/2/15)や伊藤若冲の動植綵絵にある“芦雁図”(06/3/28)。

広重の名所絵では、千葉市美術館の展覧会にも展示してある“近江八景”が全点みられる。“唐崎夜雨”、“栗津晴嵐”、“矢橋帰帆”、“瀬田夕照”、“石山秋月”、“堅田落雁”、“比良暮雪”、“三井晩鐘”。発色のいい一級の近江八景シリーズをみれる機会はそうない。存分に楽しんだ。

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コメント

いづつやさま、お久しゅうございます。

PCの環境が整って、良かったですね。
やはり、丁寧な記事が読めなくなって、しばらく残念でした。

今日私も東博に行ってきました。広重はばっちりでしたね。
「月下木賊に兎」はとてもかわいらしい作でした。
中秋の名月のお月見をこちらでやったつもりで、
お月見団子を買って帰りました。
特別展の「懐月堂派の肉筆浮世絵」も圧巻でした。

投稿: あべまつ | 2006.09.20 22:20

to あべまつさん
プロバイダーを変える(今度は光ファイバー)のにこんなに時間がかかる
とは思ってもいませんでした。

東博の広重、いいのがでてますね。“月下木賊に兎”の月を見上げる兎は
笑ってますね。かわいいです。隣の部屋の懐月堂安度らの美人画もぐぐ
っときますね。ここの浮世絵展示はいつも二重丸で、本当に楽しいです。

投稿: いづつや | 2006.09.21 06:43

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» 月に雁 [徒然なるまままに]
東博は、今月も浮世絵は、発色の鮮やかな優品揃い。春信「雨夜の宮詣(見立蟻通明神)」広重「月下木賊に兎」「月に雁 」など。10/9まで。特集陳列 懐月堂派の肉筆浮世絵も。こちらは10/22まで。 [続きを読む]

受信: 2006.09.28 07:19

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