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2006.09.23

青森県立美術館のシャガール展

4777/13に開館した青森県立美術館で開催中の“シャガール展ーアレコとアメリカ亡命時代”をみてきた。

会期は明日、24日までなので滑り込みセーフのような鑑賞となったが、今は満足感でいっぱい。

7/30に放映された新日曜美術館でこの展覧会のことを知り、番組が終了したあと、隣の方と顔を見合わせ、“青森まで観に行こうか!”と即決した。

二人をこれほど興奮させた作品はバレエ“アレコ”の舞台美術として制作された大きな背景画4点。この絵はTVでみた瞬間から、96年にみた“ユダヤ劇場大壁画”(トレチャコフ美術館所蔵)のときと同様、わくわくさせるものがあった。はたして、地下2階につくられた高さ19m、4層吹き抜けの巨大なホールに展示してある“アレコ”は気持ちの昂りで体がほてってくるような絵だった。

画面は縦9m、横15mと超のつく大きさ。大きな絵というのは普通サイズの絵を見るときとは体の反応の仕方が全く異なる。大きな絵として、すぐ思い出すのがルーブルにあるヴェロネーゼ作、“カナの婚宴”。これが縦6.6m、横9.5mだから“アレコ”4点はさらに一回り大きい。

このホールに入ってしばらくは、戸惑う。4点あるうちどれから見ればいいのか?だが、これは学芸員の解説に耳を傾けていると、だんだんわかってくる。まず、1幕は“月光のアレコとゼンフィラ”。2幕“カーニヴァル”、3幕“ある夏の午後の麦畑”、最終幕は右の“サンクトペテルブルグの幻想”。どういう経緯で入手したのか知らないが、3幕以外は青森県美の所蔵。いつもはフィラデルフィア美で常設展示している3幕が美術館の開館にあたり、ここにやってきたので、シャガールがアメリカ亡命中に制作したバレエの背景画が揃って展示されることになった。

シャガールファンとしては、横浜から青森までクルマで8時間かかろうが、この貴重な鑑賞の機会を見逃すわけにはいかない。シャガールのような大巨匠の名画が海外に出かけなくてもみれるのだから、日本は本当に美術大国である。

バレエ“アレコ”の原作はプーシキンの叙事詩“ジプシー”。NYのバレエ団から依頼を受け、シャガールは4点の絵を描き、ダンサーの衣装をデザインした。時期は1942年、シャガールが55歳のころ。貴族の青年、アレコはジプシー娘、ゼンフィラと恋に落ちるが、別の男に心変わりしたゼンフィラに嫉妬し、男だけでなく、ゼンフィラまでも殺してしまう。

1幕の青い空にアレコとゼンフィラ、赤い羽根をした鶏が浮かぶ“月光のアレコとゼンフィラ”とヴァイオリンを持った熊とその上に黒い猿が描かれた2幕の“カーニヴァル”はあまりぐっとこないが、3幕と4幕は強く惹き込まれる。とくに最後の“サンクトペテルブルグの幻想”は見ごたえがある。一度観たら忘れられないほどインパクトがあるのが黄色のシャンデリアにむかって天空を駆け上がる白馬の姿。馬の白と画面下の横一杯に描かれた街並みの赤との対比が鮮烈で、色彩の魔術師、シャガールの色彩感覚にいつもながら驚かされる。

この展覧会は24日で終了するが、“アレコ”の1、2,4幕はこの大ホールで常設展示される。世界的にみても評価の高いシャガールの作品が日本の美術館にあるというのは誇らしいこと。また、何年か先、ここを訪れたい。

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コメント

いづつやさんお帰りなさい!
JR東日本でも東京からわざわざシャガール見物のツアーが出てますね、僕もシャガールファン一度は行きたいです。
で、混雑のほうはいかがでしたか、テレビで放送されるとワット人が押し寄せますからー。
だから僕は藝大美術館の「新日曜美術館」の展覧会にもいかないのです。
それはともあれ青春のシャガールはユダヤ劇場の壁画も描きましたね、興味の尽きない画家です。

投稿: oki | 2006.09.23 22:05

to okiさん
JR東日本でも展覧会ツアーを企画してたのですか。21日の平日でしたが、
沢山人が入ってました。日本にこんな立派なシャガールの絵があったのですね。
しかも超大作が。全然知りませんでした。

意外ですが、青森県にはこれまで県立の美術館がなかったそうです。建て替え
たのかと思ってましたが、新館なのです。地下に大きな展示ホールをつくって
“アレコ”3点を常設展示するのですから、すごいです。“ユダヤ劇場壁画”
を観たときと同じような感動がありました。okiさんも是非御覧になってください。

投稿: いづつや | 2006.09.24 11:14

アレコホールのシャガール、筆舌を尽くしがたい迫力ですね。あの空間に入った瞬間に、そのパワーに圧倒させました。
シャガールのアメリカ亡命時代にフォーカスした企画展ですが、その意図は成功したといっていいと思います。

投稿: 自由なランナー | 2006.09.24 13:32

to 自由なランナーさん
いきなりアレコホールですから、ちょっと戸惑いました。どこからみていい
ものやら。この4点との対面は一生の思い出になりそうです。

日本にシャガールのこんな大きな絵があるなんて素晴らしいですね。青森県は
いつごろこれを購入したのでしょうね?この絵に目をつけたこと自体すごい
ことですが。

投稿: いづつや | 2006.09.24 20:10

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» 青森県立美術館その3:シャガールとアレコ [Beautiful Noise]
 この美術館の開館記念展として「シャガール 『アレコ』とアメリカ亡命時代」が開催中です。マルク・シャガール(1887ー1985)はロシア出身のフランスの画家。エコール・ド・パリで注目されますが、1941〜48年、ナチスのユダヤ迫害を逃れて、アメリカに亡命します。本展は、シャガールのこの7年間のアメリカ亡命時代にフォーカスした展覧会です。 「シャガールは家族とともに数年間をアメリカで過ごし、ニューヨーク、シカゴといった大都会での生活を体験する。しかし、アメリカの物質文明を象徴するかのようなこれらの近... [続きを読む]

受信: 2006.09.24 13:33

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