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2006.09.28

前田青邨展

483現在、岐阜県美術館で開かれている“前田青邨展”(10/9まで)に2度出かけた。

青邨の生誕120年を記念するこの大回顧展の情報は中国地方にある美術館のHPをチェックしていたとき、偶然入ってきた。

で、開催中だった島根県立美術館(7/22~8/27)に電話して、次の巡回先を聞くと、岐阜県美(9/5~10/9)、そして浜松市立美(10/21~11/23)とのこと。東京には残念ながらやってこない。ずっと前から回顧展を心待ちにしていたので、期待で胸を膨らませながら、岐阜県美を訪れた。

出品数は80点あまり。初期から晩年にかけて名作がズラリ揃っている。そのうち34点は前期と後期のいずれかしか展示されないので、2回足を運ぶことになった。前期の目玉が大倉集古館が所蔵する代表作、“洞窟の頼朝”(9/18で終了)。後期にはこれまで観る機会がなかった右の“唐獅子”(三の丸尚蔵館)がでてくる。“唐獅子”は長年追っかけている絵。事前に浜松市美の主な作品を確認したところ、この絵は出品されないとのことだったから、後期もはずせない。

岐阜県美へ行くのははじめて。会場に入ってから、退場するまでわくわくしっぱなしだった。手元の画集に載っている代表作がここにある、あそこにもあるという感じである。前田青邨の絵は歴史画(拙ブログ06/2/8)、古典画(05/1/31)、人物画、花鳥画(06/4/12)が中心(ご参考の3点は今回は出ていない)。中国やイタリアの街や京都の名所を描いたのはあるが、風景画は少ない。

今回初見の作品では、水墨主体の絵にいいのがいくつもあった。口ばしを大きく開ける姿がリアルな“鵜”、鯉が飛び跳ねたり、体を左右に動かすところを生き生きと描いた“鯉三題”、中津川出身の青邨にとっては得意な画題である“鵜飼”の三幅対。古典画では、“竹取物語”(京近美)に期待してたのだが、意外にも心に響かなかった。理由はかぐや姫を取り巻く天女たちが多すぎて、また衣装や手にもっている蓮の色が強いため、薄い白装束に身をつつんだかぐや姫が画面の中に埋没しているのである。これは図版ではつかめない。

出口のところに飾ってある2点は優美な花鳥画で、絵のなかに惹き込まれそうになる。04年、東近美であった琳派展にもでていた名画、“水辺春暖”(大松美術館)と若冲の“動植綵絵・梅花小禽図”を思い出させるような画面構成の“紅白梅”。近代日本画でこれほど美しい花鳥画にお目にかかったことがない。

2回目の訪問のお目当ては右の“唐獅子”。上が右隻で、下が左隻。期待以上の見事な絵。200%感動した。この絵のために再度、岐阜まで足を運んだ甲斐があった。右の雄獅子の親子のポーズ、そして、左の子獅子の愛嬌あるしぐさが心をうつ。顔を横に向け、四足をぐっとふんばる雄獅子の体は金色。一番びっくりするのが頭の毛と尻尾の緑。“わー”とおもわず声がでそうになるほどの鮮やかな緑である。画面に近づくと、金粉が体全体に散らされている。

左の前足をピンと立てて前方を見据えている雌獅子の体はプラチナ一色で、首のまわりと尾っぽは深い群青色。気品のある堂々とした姿に見蕩れてしまう。本当にいい絵を見た。この感動は一生の思い出になる。

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コメント

この“唐獅子”面白いですね。斬新です。実物を見てみたい物です。
こうして知らないものを紹介されて興味が広がって行くのは、うれしいことです。ありがとうございます。

リンゴの季節です。新林檎が次々出てきてうれしいことです。

投稿: seedsbook | 2006.09.29 14:40

to seedsbookさん。
この漫画のようなコミカルな唐獅子を観たくて、また、岐阜に行きました。
この絵は宮内庁三の丸尚蔵館が所蔵しており、特別の展覧会にしかでてこな
いのです。

昭和10年(1935)、昭和天皇即位を記念し、岩崎小弥太(三菱財閥の総帥)
からの献上品として制作されたものです。三菱財閥からの依頼ですから、
50歳だった青邨は精魂をこめてこの唐獅子を描きました。最高級の岩絵の具、
金粉、プラチナを使っているため、色が輝いてます。

毎日、弘前で買った、林檎“津軽”を食べてます。収穫の多かった青森美術
旅行でした。

投稿: いづつや | 2006.09.29 17:56

いづつやさん、こんばんは
浜松の展覧会に行ってきました。
いづつやさんが感動した「唐獅子」は残念ながら浜松には来ないようで…
三の丸尚蔵館に出るのを気長に待ちたいと思います。

武者絵から可愛らしい動物の絵と様々なジャンルがありましたが、一点を見つめる画中の登場人物たちが緊密なドラマを構築しているようです。一部入れ替えがあるのが恨めしいですが、後期も行けるように頑張りたいと思います。

投稿: アイレ | 2006.10.31 21:46

to アイレさん
浜松展は応挙・芦雪展の後期の帰り、浜松で途中
下車して観てくることにしてます。狙いは“石棺”
です。東近美の平常展を待つという手もあるの
ですが、青邨は今回の回顧展で済みマークをつけ
たいので、再々度出かけます。隣の方からは
呆れられそうですが。

伴大納言絵巻の影響が見られる歴史風俗画や肖像画、
晩年の静物画、琳派風の花鳥画、どれをとっても
一級の出来栄えです。大きな画家ですね。

投稿: いづつや | 2006.10.31 23:33

私にとって、青邨は殆ど知らない画家でした
この展覧会は名品ぞろいでしたね 感激してしまいました
私は、天井画を間近で見られ木目の使い方を観る機会をもて嬉しかったです

投稿: えみ丸 | 2006.11.20 19:58

to えみ丸さん。
今日、奈良からの帰りに浜松で途中下車し、前田青邨展を
見てきました。お目当ての“石棺”をばっちり見ました。
他にも岐阜展にでなかったのが7点くらいあったので、
機嫌がいいです。

青邨は近代日本画家ではTHE 巨匠です。これほどの
名画がまた集まるのは十年先でしょうね。長いことこの
画家の作品を追っかけてきましたが、これで済みマーク
がつきました。

投稿: いづつや | 2006.11.21 22:00

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