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2006.09.19

広重の東海道・木曾街道浮世絵展

475現在、千葉市美術館で開催されている“広重の二大街道浮世絵展”(10/9まで)は心待ちにしていた展覧会。

浮世絵鑑賞のため普段でかけている美術館は東博(浮世絵コーナー)と太田記念美術館。今回訪問した千葉市美術館もいい浮世絵をかなり所蔵している。

この広重展のお目当ては“木曾街道六捨九次”。広重の“東海道五十三次”はこれまで全点通しで楽しむ機会が何回かあった。が、“木曾街道”については、代表的な宿場の風景を描いたものを数点みただけで、全部を揃ってみたことはまだない。全点を観るチャンスがめぐってきただけでも嬉しいのに、この美術館が所蔵する“木曾街道”は世界的にみて一番質がいいということなので、目に力を入れてじっくりみた。

中山道の宿場町は東海道のように頭の中にきっちり入ってないから、はじめて知る名前と描かれた旅の情景に新鮮に反応する。中山道は五街道の一つで、途中険阻な木曽路を通るので木曾街道と呼ばれている。出発点は東海道と同じく日本橋。次が板橋、蕨、浦和、大宮。。。と続く。それから、信濃、美濃、近江と経由し、草津で東海道と合流し、京の三条大橋が終点。宿駅は全部で69ある。

風景画“木曾街道六捨九次”は広重のほかに渓斎英泉も一部を担当している。この街道ものは英泉が全部てがけるはずだったのに、英泉は24図を描いたところでジエンド。ありゃらら!これを引き継いで完成させたのが広重。だから、この絵は二人の絵師の合作というよりは、結果的に二つの画風の風景画が入り交じった変則コラボ作品となっている。

英泉はちょっと崩れた女の絵を描かせたら、右に出るものはいないくらい腕のたつ絵師だが、風景画もなかなか上手い(拙ブログ06/1/67/26)。英泉が描いた“木曾街道”で心を揺さぶられるのは“日本橋 雪之曙”、“鴻巣 吹上富士遠望”、“倉賀野 鳥川之図”、“坂本”、右の“野尻 伊奈川橋遠望”、“河渡(ごうと) 長柄川鵜飼船”。なかでも特にぐっときたのが“野尻”。これは浮世絵では前々から追っかけていた絵。期待通りの傑作だった。

アーチ型の橋の下を流れる川のフォルムがまず目にとびこんでくる。幾何学的な形で表現された水の流れは激しく落ちる滝のようだ。川の上方、水が消えかかるところと橋の間に深い藍色の山々を描き、赤く染まる夕陽を背景に雁を飛ばす構図が秀逸。この橋の絵とダブル絵がある。それはバークコレクション展にでてた曽我蕭白の“石橋図”(拙ブログ06/1/29)。

広重が描く宿場風景にも惚れ惚れする名作がいくつもある。風により大きくしなった柳と川で筏と舟をこぐ男たちの姿から日本の秋が叙情豊かに伝わってくる“洗馬”。遠景の家と人物のシルエットが印象深い“宮ノ越”。平明な画面構成で雪景色のなかを進む旅人を見事に描ききった“大井”。今、“木曾街道”を全点みれた喜びをかみしめている。

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コメント

英泉は、どうして木曾街道69次、完成できなかったので
しょうか。ひょっとしてお亡くなりになられたのでしょうか。
「野尻」、なるほど「石橋図」の橋にそっくりですね。
江戸時代の旅人気分を味わえた展覧会でした。

投稿: 一村雨 | 2006.09.20 07:31

to 一村雨さん
“木曾街道”を途中から広重が描くようになったのは英泉が亡くなったから
ではなく、板元の保永堂が廃業したためです。板元の竹内孫八との関係
が悪くなり、英泉のほうから手をひいたようです。

投稿: いづつや | 2006.09.20 11:03

こんばんは。
やっと行ってきました。
近いようで遠い千葉市美術館です。

木曾街道、初めて揃いで見ましたが
東海道より見応えありますね。
珍しく図録を買って帰りました。

投稿: Tak | 2006.10.09 00:10

to Takさん
木曾街道を全点見る機会がめぐってきて本当によかったですね。千葉市美は
館長が大物で、いろいろいい展覧会を開きますのでいつもウォッチしてます。

浮世絵専門館の情報をひとつ。10/5にオープンした“ららぽーと豊洲”のなか
に“UKIYO-e館”というのができたそうです。昔、横浜そごうのなかにあった
“平木浮世絵財団”が衣をかえてここで所蔵品を展示するようです。13日に
早速、“猫展”をみてきます。

ここは“若冲のここが好き 進化するカラリスト”で紹介した“花鳥版画”
(6点)を持っているので、いつか公開してくれるのではと期待大です。

投稿: いづつや | 2006.10.09 22:43

いづつやさん、こんばんは。私も拝見してきました。
木曾街道は全く未見だったのですが、
期待以上に美しい作品でした。

>アーチ型の橋の下を流れる川のフォルム

この作品は前衛的ですよね。
水の流れがまるで氷河のようです。
幾何学的なフォルムですね。

広重のデフォルメにも堪能しました。
TBさせていただきます。

投稿: はろるど | 2006.10.10 01:41

to はろるどさん
木曾街道のなかには心を揺すぶられる絵が何点もありますね。“野尻”の
あっと驚くような河のフォルムと上部にアーチ型の橋をもってくる構図に
釘付けになります。噂通り、この木曾街道はどの絵も発色がいいですね。
一級の浮世絵版画をみたという感じです。

次の楽しみは江戸東京博ではじまる“ボストン美所蔵肉筆画名品展”ですね。
北斎の鳳凰図を早くみたいです。

投稿: いづつや | 2006.10.10 16:31

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