ブリジストン美のグロス
ブリジストン美術館の“なつの常設展示ー印象派から21世紀へ”(9/24まで)をみた。
ここは頻繁に出かける美術館ではない。東近美の場合、近代日本画をとっかえひっかえ展示するので毎月訪問しようという思いにかられるが、ブリジストン美は西洋画の殿堂とはいえ、図録に掲載されている作品はほとんど鑑賞済みでまた何回も観たということもあり、足が遠のきがちだった。
だが、石橋財団の創設50周年を記念する大コレクション展をみて、この美術館が所蔵する絵画のレベルの高さを再認識し、今後はあまり間隔をあけないで名画を鑑賞しようというように心を改めた。
実際、館内をまわると1点々の質が高いのでいい気分になる。平常展でも内外の作家が制作した作品が120点ちかくあるのだから、良質の展覧会であることはまちがいない。ここへ通いはじめてからもう何年もたつが、My好きな絵ベスト5(順位は無し)を挙げると。
ルノワールの“すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢”、モネの“睡蓮”、セザンヌの“サント・ヴクトワール山とシャトー・ノワール”、ピカソの“腕を組んですわるサンタンバンク”、モディリアーニの“若い農夫”。これらは画集におさまるほどの名画ではないだろうか。それほどここのコレクションはすごい。
2年前からまた訪問するようになり、目にとまった作品がいくつかある。今回出品されているザオ・ウーキーの“07.06.85”(1985)、ベルナール・ビュッフェの“アナベル夫人像”(1960)、右のゲオルゲ・グロスの“プロムナード”(1926)。
ザオ・ウーキーについては、昨年ここであった回顧展(拙ブログ05/1/9)をみていっぺんにファンになった。そのとき、大変感動したのがこの絵。南宋の画家の絵のようでもあり、印象派の先駆けとなったターナーの絵のようでもある。抽象画だが、とてもいい気持ちにさせてくれる。今回、ザオ・ウーキーの絵は3点でている。絵を見た後、ここの常任理事の方とお話しする機会があったのだが、04年制作の“風景2004”はザオ・ウーキーと直接交渉して購入したとおっしゃっていた。
グロスの絵を日本の美術館でみたのはここだけ。この“プロムナード”が大変気に入っている。2月にあった“東京ーベルリン展”でみた“社会の柱石”(拙ブログ06/2/2)はインパクトのある絵だったが、この絵もなかなか面白い。都会の人々が雑踏の中を歩く様子を描いた現代の風俗画であるが、赤い服を着てこちらを見ている右から2番目の丸顔の女の目線に釘づけになる。
戯画的に表現した女の目にこれだけ力があると、この絵をさらっと見るだけではすまなくなる。言葉でなくても、絵画で社会と向き合うこともできるということを教えてくれる一枚である。
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コメント
こんばんは.
プロムナードは不思議な絵です.このまま動き出すと,みんなぶつかりますよね.ぼくも好きな絵のひとつです.
ザオ・ウーキーもイイですよね.
>南宋の画家の絵のようでもあり、印象派の先駆けとなったターナーの絵のようでもある。
抽象画だけれども,具象的に,風景的に見てしまいますよね.
ぼくの”My好きな絵ベスト5(順位は無し)@ブリヂストン美術館”は,サントビクトワール山(セザンヌ),サルタンバンク(ピカソ),睡蓮(モネ),縞ジャケット(マティス),ジョルジェット嬢(ルノワール)という感じでしょうか.
別荘にしたい美術館ですね.
投稿: おけはざま | 2006.09.19 23:40
to おけはざまさん
ザオ・ウーキーの画面には実景として風景が目の前にあるわけではありま
せんが、美しい風景を感じますよね。抽象画ですが、印象派やターナーの
描き方と本質的には同じですね。
ブリジストン美にグロスの絵があるとは思いもよりませんでした。“プロムナ
ード”はいい絵ですし、表現主義を知ることのできる貴重な作品ですね。
投稿: いづつや | 2006.09.20 10:47