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2006.08.19

若冲のここが好き! その三 進化するカラリスト

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絵の見方は人それぞれ。形を楽しみたい人。色を感じたい人。全体の構図の妙に関心がある人。絵画を観るときは、面白い形よりは色の輝きや素晴らしい色の組み合わせに大きな感動をおぼえるので、若冲の彩色画での関心はもっぱら花や鳥の色彩表現にある。

今回の“動植綵絵”では200%色を感じ、色に遊ぶことができた。一番びっくりするのが、高価な絵の具を使っているためか、色が濃密で鮮烈なこと。これまで書いたように、三の丸へ何度も通ったのは白の美しさを感じるため。いくつもの模様を使って表した鶏、鳳凰、孔雀、鶴、鸚鵡の白い羽根がなんといっても一番印象に残る。また、ふぐ刺しのような菊の花びらも忘れられない。そして、ミニマルアートを観ているような白の薔薇や牡丹、黄色や赤の小さな点々と白の線が綺麗な梅の花にも酔いしれる。白のほかには鶏のとさかや南天、紅葉、牡丹の赤が目に焼きつく。

“老松”の名がついた鶏や鸚鵡のような場合とか、背景に何も描かない“群鶏図”では、周りから浮き上がる白の美しさや濃彩で描写された羽根の競演を満喫できるのだが、作品のなかには、色と色が重なったりして、対象の形がはっきりしないのもある。上の“紫陽花双鶏図”(部分)はその一例。鶏の面白いポーズに目はいくが、雌鶏の茶色の羽根が岩の褐色とかぶり、尾っぽの先がどうなっているのかよくわからない。また、雄が跳ね上げたお尻の黒も青の紫陽花との関係で、印象はそれほど強くない。

日本画では対象は陰影をつけず平面的に描写されるので、地の色とか、まわりの色との組み合わせがよくないと、観る者は絵のイメージがつかみにくくなる。ほかにも、どうして余計な葉っぱで鶏を隠すのか?ごちゃごちゃするだけなのにと感じてしまう絵がある。こんな色彩を若冲はなんとも思わなかったのだろうか?察するに、一つ々の花びらのフォルムや鶏の羽根模様を細密に描写することに熱心なあまり、色と形を与えた細部に陶酔しきって、画面全体の色のバランス感覚がなくなったのでないか。若冲にはそのあたりを指摘してくれる師匠がいないのである。

真ん中の絵は若冲のカラリストとしての天分が見事に表れた“菜虫譜図巻”(部分)。この絵は1790年、若冲75歳のとき、制作された。円山応挙が大乗寺の障壁画を描いていたころ、若冲はカラフルな静物画を描いていたのである(拙ブログ4/7)。赤、橙、えんじ色、うす緑、うす青など柔らかい色調は互いにケンカすることなく、響きあっている。水墨画が主流の中、こんな色の組み合わせを考えつくなんて、若冲はまさに本物のカラリスト。

下の絵はずっと追っかけているが、まだお目にかかっていない多色摺りの“花鳥版画・雪竹に錦鶏図”(平木浮世絵財団)。版画にも手を染めた若冲は56歳のころ、蒔絵などの工芸品の模様に使われそうな花鳥画を描いている。構図も素晴らしいが、背景の黒、雪に華麗に映える錦鶏の色面が心を打つ。この絵に会えるのを心待ちにしている。

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