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2006.08.15

酒井抱一の四季花鳥図屏風

456ホテルオークラが主催する恒例の“秘蔵の名品 アートコレクション展”(8/3~24)を開幕日に観た。

“秘蔵の名品”ですぐ連想するのは今年2月、東京美術倶楽部で開催されたビッグな展覧会。このときは“知られざる名作を集めて”というサブタイトルがついており、画家の代表作が集められた画集にも載っていない名品が沢山展示してあった。

作家が制作する名品は有名なブランド美術館だけに存在するのではなく、美術商や専門家、その道の通の人たちだけが知っている隠れた名品もあるのである。当たり前のことだが、美術品は市場で取引される商品でもあるので、目の肥えた画廊経営者、美術商、コレクターたちのあいだにでまわる名画のほうが多いかもしれない。

今年のテーマは“花鳥風月”。日本画が中心のようにみえるが、さにあらず。洋画のいい静物画や風景画が集まっている。惹きつけられたのはマネの“芍薬の花束”(村内美術館)、キスリングの大きな絵、“花”(鎌倉大谷記念美)、ブラマンクの“花”(個人蔵)。村内美は家具屋の2階にあるようなことをTakさんやtoshi館長に教えてもらったが、質の高い絵がありそうなので、一度訪問してみたくなった。

風景画はモネのいいのが2点ある。昨年、出かけた山形美で感動した吉野石膏コレクションの“テームズ河のチャリングクロス駅”とアサヒビール大山崎山荘美が所蔵する自慢の“睡蓮”(7点)の1点。モネ好きの多い日本には名品が沢山あるが、この2点はそのなかでも上位クラスの作品。大山崎山荘美所蔵では2位にランクづけしている“睡蓮”(1位は拙ブログ05/10/26)は今日からはじまった東近美の“モダン・パラダイス展”に出品されている大原美の“睡蓮”と響き合うだろう。

日本の洋画家の作品にもぐっとくるのがいくつかある。梅原龍三郎の“ばら”2点と“百合”。山梨県美蔵の“ばら”は大きな絵。青い花瓶に挿された赤や黄色のばらがのびのびとしたタッチで描かれている。背景が赤なのにばらの赤が沈んでない。この赤に感動した。日本橋三越ではじめて梅原の薔薇の絵をみたが、またまた縁があった。岡鹿之助の“花と廃墟”(群馬県美)、“燈台”(ポーラ美)にも魅せられる。

日本画で花鳥風月の絵を展示するとなると、主催者は気が抜けない。下手な作品をもってくると12回もやっている展覧会の価値が下がる。流石、ここのキュレーターの企画力は高く、名品が揃っている。プライスコレクション展を多少意識したのか、江戸絵画のオールスターを集めた。応挙、若冲、芦雪、抱一、そして渡辺崋山、北斎もある。

お気に入りは右の抱一作、“四季花鳥図屏風”と若冲の“乗興舟”。“乗興舟”は大倉集古館でちょっと前まででていた。再度の登場。これは京博、大倉集古館、千葉市美が所蔵している。味わい深いこの拓版画を大変気に入っており、京博がつくった小冊子(乗興舟、ベストオブアートNo2)をときおり観て楽しんでいる。

抱一の“四季花鳥図屏風”(左隻、京都、陽明文庫)は花鳥画の傑作。2年前の日本橋三越の琳派展にも出品された。今年は抱一の名画を見る機会が多い。三の丸尚蔵館で“花鳥十二ヶ月図”の12幅に痺れまくったばかりだが、時をおかず今度は“四季花鳥図屏風”である。これは屏風絵なので、やはり見ごたえがある。

金地に鮮やかな色で描かれた花や鳥は観てて心地がいい。余白をたっぷりとり、見る者の目が自然と画面中央の正面を向いている雉子と折れ曲がった群青の水流に集まるようにした画面構成が秀逸である。まわりをおみなえしに囲まれ、こちらを見ている雉子の装飾的で美しい羽根にも目を奪われる。

この展覧会は後期にとても見たい絵がでてくるのでもう一回行くことにしている。

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コメント

こんばんは。
私もこの展覧会行ってきました。
抱一の屏風絵は「綺麗」でした。
綺麗というのは状態が非常に良い良いということです。
贅沢な顔料や金をふんだんに使っている為なのでしょうか。

村内美術館は一見の価値あります。是非。

投稿: Tak | 2006.08.16 01:32

to Takさん
抱一の屏風では“夏秋草図”とこの“四季花鳥図”がいいですね。抱一は
光琳から100年経ってますから、装飾一辺倒ではないですね。草花を
写実的に描いたりして、日本人の自然を愛する心を刺激してくれます。
綺麗で洒落た絵ですね。高価な絵の具なので発色や耐久性がいいので
しょうね。

殿様にならないで絵描きになった抱一、卸問屋の主にならないで絵に
没頭した若冲。二人の絵は究極の旦那芸ですね。

村内美術館に出かけてみます。

投稿: いづつや | 2006.08.16 10:53

こんにちは。
以前、いづつやさんがこの抱一の作品を
花鳥画三大傑作と紹介されているのを読んで
矢も盾もたまらず、この展覧会に出かけました。
さすがに見応え充分でした。

抱一にしろ、若冲にしろ、モネにしろ、立て続けに
あちこちの美術展で関連がある作品を見ることができて、
嬉しいです。

投稿: 一村雨 | 2006.08.16 18:20

to 一村雨さん
TB,書き込み有難うございます。3度目のアートコレクション展ですが、
いつも期待値を上回ります。ですから、毎年押えておく展覧会になりそう
です。“花鳥風月”というタイトルがついてたので、今年は日本画にウェートが
あるのかなと思いましたが、キスリングやモネのいい絵があり、バランスが
とれてましたね。

今年は酒井抱一の当たり年ですね。日本にある代表作中の代表作が連続して
出てきました。三の丸で“花鳥十二ヶ月図”、ここで“四季花鳥図”、そして
東博平常展の“夏秋草図”。予想もしなかった理想的なコラボレーションです。

“四季花鳥図”は装飾性と写実がうまく融合した名品ですね。鳥のポーズで
横とか斜めに飛んだり歩く姿は見慣れていますが、手前のほうに頭をまっすぐ
向けているのはあまり見ません。これは抱一の技ですね。雉子をこういう風に
配置し、その前に琳派の定番である様式化した流水を描き、奥行きをつくって
ます。つくづく、上手いなと思います。

投稿: いづつや | 2006.08.17 13:57

いづつやさん、こんにちは
とても良い展覧会の情報をありがとうございました。
最近、江戸中期の絵画に興味がありますが、抱一の名画を見ることができ、大変満足しました。
「四季花鳥図屏風」は金地も落ち着いたものでしたし、何より空間の使い方が本当に素晴らしく、しばし屏風の前で立ちつくしていました。
三の丸尚蔵館の「花鳥十二ヶ月図」も非常に印象に残っているだけに、今後チェックしたい画家の一人となりました。

投稿: アイレ | 2006.08.17 17:33

toアイレさん
江戸琳派の酒井抱一が描く花鳥画はほんとうにいいですね。アイレさんが
おっしゃるように空間のつくりかたが巧みなので、すっと画面の中に入れ
ます。

四季の変化を一つの屏風で表現するのは簡単なようで難しいですよね。鳥の
ポーズ、木々の枝ぶり、花の咲き様を装飾的に描写し、そして観る者が
四季の情趣を味わえるように全体を構成するのですら、かなり高い画技が
要求されますね。これを見事にやり遂げる抱一はすごい絵師です。

投稿: いづつや | 2006.08.17 19:34

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