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2006.08.07

束芋のヨロヨロン展

4507/23、NHK教育で放映された“トップランナー”に出演した束芋(たばいも)の個展が開かれている原美術館にでかけた。

ここで女性現代アーティスト、束芋の“ヨロヨロン展”(8/27まで)をやっていることは知っていたが、普段なじみのない現代アートなので訪問する可能性は低かった。

が、23日の番組がとても面白く、俄然、束芋のアニメをこの目で見てみようという気になった。作家は兵庫県生まれで現在30歳。人あたりがよく、芯が強そうな小柄な女性である。京都造形芸術大学へ補欠で入学したのに、卒業制作では一番になったという。

原美術館ははじめてなので、展示会場の勝手がわからないが、2階で06年に制作された3つの作品をみることができた。1階ではデビュー作のアニメ“にっぽんの台所”
(99年)などこれまでにつくられた作品が実際よりは縮小したセットや小さなモニターで上映されていた。これらの作品はアニメによる映像インスタレーションとして公開されたので、映像だけでは束芋の表現の一部しか味わうことができないが、4分~10分のアニメ(音楽入りもある)でも十分楽しめる。

束芋が日常生活そのものをモチーフとしているので、作品のなかにすっと入っていける。でも、映像はかなり刺激的で強い毒性を含む。現代日本の見慣れたまた懐かしさを覚える日常の光景をみてほわっとしていると、コミュニケーションの無い冷え冷えとした公衆のあり様や閉塞感、またぞっとする怖さみたいなものをじわじわ見せつけられるといった感じである。

面白いのが“にっぽんの台所”、“にっぽんの湯屋(男湯)”(00年)、“にっぽんの通勤快速”(01年)。“にっぽんの台所”ではっとしたのが毒入りナレーション。ラジオ?TV?から流れる天気予報、“今日は中学生、高校生が降ってくるでしょう?!”。これは自殺を表現している。このアニメにもでてくるが束芋の作品には切断される場面が多いのでドキッとする。指をはさみで切ったり、妻が台所でたまねぎと一緒に亭主の首を包丁で切ってしまう場面とか。

女性の強さ、図太さを巧みに表現したのが、“にっぽんの湯屋”。途中から“男湯解禁”となり、隣の女湯から女性が壁をのりこえてきたり、入り口からも女性連れがどんどん入ってくる。観光地のトイレが混んでるとき、やむにやまれず女性が男性トイレを利用する場面をここでは男湯に転換して描いている。これは笑える。束芋は只者ではない。

2階の最新作、右の“真夜中の海”と“公衆便女”は秀作。映像として何時間でも見ていたいのが“真夜中の海”。波の音入りで、生き物のような波が次第に大きく荒々しくなっていく。北斎の“富嶽三十六景 神奈川沖波裏”におけるダイナミックな波の動きを連想させるような光景である。その立体的な波のてっぺんから海底に生息する髪の不気味な物体が下に滑り落ち、消えていく。真夜中の海を見たことが無いから実感できないが、暗闇になかで海をみているとここで体験するような不安と怖さが入り混じった気持ちになるのではないだろうか。

“公衆便女”でびっくりするのは便器の中に女性がプールの踏み台から飛び込むようにザブンとつっこむ場面。よくこんなことを考えついたなと唖然として眺めていた。

束芋は世界的にも注目されているアーティストらしい。発想の斬新さはグローバルレベルのような気がする。海外の作家たちとコラボした映像が流れていた。いい作家に遭遇した。これからその作品を追っかけていこうと思う。

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コメント

いづつやさん、お久しぶりです。

PCの復活おめでとうございます。なにしろ、どちらかお出かけなのかと思っていましたから。安心いたしました。

さて、束芋さんは、私も大好きなアーティストで、現在朝日新聞の夕刊に連載されている小説の挿絵を毎夕楽しみにしているところです。切り抜きをやり遂げようと、取っておいてあります。
残念ながら、夏休み中、品川までいけるか、怪しいです。
いとこも絶賛していました。今後もマークしておきたい楽しみな人ですよね。嬉しい記事でした!!

投稿: あべまつ | 2006.08.13 15:39

to あべまつさん
束芋は1年くらい前から名前だけは知っていたのですが、どう読むのかな?
男性or女性?と疑問符をそのままにしていたとき、件の番組に出会いました。
小柄な女性ですね。芸術家、芸術家してないので、親しみやすいです。
いっぺんにファンになりました。

作品も面白いですね。ですが、怖さもある可笑しさですね。首吊りの場面が
出てきたり、公衆便所で手首を切る若い女性がいたり。。この作家の頭の
なかはかなりシュールで奇想天外なことを思いつきます。この番組を見た後、
朝日の夕刊に連載されてる小説の挿絵を描いているのが束芋だということに
気づきました。熱心にみてます。長い付き合いになりそうです。

投稿: いづつや | 2006.08.14 11:30

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