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2006.07.28

若冲の白 vs 抱一の赤

447伊藤若冲と酒井抱一の絵をまた観たくなり、三の丸尚蔵館に足を運んだ。

現在ここで開催中の“花鳥展の4期”(7/8~8/6)は特別。ほかの期より感激度が格段に大きいのである。若冲の“旭日鳳凰図絵”、“動植綵絵”、抱一の“花鳥十二ヶ月図”(拙ブログ06/7/8)の豪華3点セットを一回だけの鑑賞で終わらせるのはもったいない。

次にこれらを観れるのはかなり先になるだろうから、もう一度観ておこう、そして感動を体中に浸み込ませようという思いが日に日につのっていた。

まず、“旭日鳳凰図”。今回も画面の隅から隅までじっくりみた。若冲には鶏の絵が多いので、鶏が最も好きだったのかなと考えがちだが、そんなことはないと思う。鳳凰は空想上の鳥だし、鶴を実際にみる機会は少ないので、どこにでもいる鶏が観察するのに都合がよかっただけかもしれない。若冲が描いていて一番気分がハイになったのは鳳凰ではないだろうか。

“旭日鳳凰図”の画面は“動植綵絵”より一回り大きい。鳳凰の姿態や色のイメージは中国画の“百鳥図”から得たのであろうが、若冲はこれにファンタジックで優雅な香りを加え、近寄りがたいほど気高い鳳凰に昇華させている。右の鳳凰の片足を上げ、両翼を大きく広げたポーズに見蕩れてしまう。何色もある羽根が女王の着る衣装のようにとても豪華に見えるのに、ケバケバしさが感じられないのは白(=胡粉)の使い方が上手いから。

日本画で美しく見えるかどうかは白をどう使うかにかかっている。この画面では白が出てこないところを探すほうが難しいくらい。それほど、白い線、白面が多い。首の後ろの青、黄色で描かれた羽根はちゃんと白で縁どられている。同じことは広げた左右の茶色の羽根にもいえる。先っぽに鮮やかな赤と青の毛をもつ茶色の尾羽根の中央にも白のシダ文がある。白は画面に装飾的な雰囲気や奥行きや空間の広がりをつくりだす波文だけでなく、上方の太陽をかこむ雲を表す茶色線の下にも引かれている。左の鳳凰の腹の辺りが地の土色とかぶって、はっきり輪郭が捉えられないのは、白の見せ方が弱いためである。

“旭日鳳凰”だけでなく、“動植綵絵”でも“老松白鳳図”のように、“どおー、私の白の美しさに参った!”と言われてるような気がする絵が何点もある。鶏のとさかみたいに鮮やかな赤が印象深い作品もあるが、その赤も白によって輝きを増している。若冲は胡粉の魅力にとりつかれた絵師ではないだろうか。

若冲の白に対して、抱一の得意とする色は赤。今回出品された“花鳥十二ヶ月図”にその技が冴えわたっている。右は4月“牡丹に蝶図”、5月“燕子花に鷭図”、6月“立葵紫陽花に蜻蛉図”。牡丹と立葵の赤が鮮やかである。この“花鳥十二ヶ月図”は4、5点ある同名の絵のなかで最初に描かれたもので、絵の完成度は一番高い。12点のうち赤が出てくるのは9点あるのにたいして、プライス氏所蔵のものは5点、出光美術館のは3点しかない。

三の丸尚蔵館の花鳥図のなかで、構図、色の組み合わせで赤がとくに美しく感じられるのは1月の白梅の枝に囲まれるように描かれた赤い椿、3月の桜の木にとまる雉子の赤い頬、4月の大きな牡丹、10月の鈴なりになった赤い柿の実。三の丸、プライス氏、出光の11月はどれも白鷺が描かれているのに、小さな赤の点々があるのは三の丸だけ。赤には観る者の視線をひきつける魅力があることを抱一は知っていて、効果的に赤を使っているのである。

酒井抱一の作品に関する情報をひとつ。ホテルオークラで開催される“アートコレクション展”(8/3~8/24)に抱一の花鳥画の傑作、“四季花鳥図屏風”(京都、陽明文庫)が出品される、これは今回の“花鳥十二ヶ月図”、“四季花鳥図巻”(東博、拙ブログ05/9/15)とともに花鳥画三大傑作といわれている。04年、日本橋三越であった琳派展にも出た。ご参考までに。

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コメント

こんばんわ、お久しぶりです。
三の丸には2回脚を運びましたが、記事を読みながら又行きたくなりました。

投稿: seedsbook | 2006.08.12 05:25

to seedsbookさん
三の丸尚蔵館では今日から5期がスタートしました。最後の動植綵絵6点と
円山応挙の孔雀図の最高傑作、“牡丹孔雀図”が観れます。嬉しいですね。
日本画でこれだけ質の高い作品が揃うのはまたとない機会ですから、目に力
が入ります。

投稿: いづつや | 2006.08.12 18:00

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