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2006.07.15

旧朝香宮邸とルネ・ラリック

434一日にいくつかの展覧会を観るときは西洋美術、日本美術を混ぜず、今日は西洋もの、次は日本ものという風に美術館をまわっている。

今回の“エミール・ガレとドーム兄弟展”(Bunkamura)のあとに行った東京都庭園美術館の“旧朝香宮邸のアール・デコ展”(10/1まで)は理想的な流れだった。二つの展覧会の接点はアール・デコのガラス工芸作家、ルネ・ラリック。

ラリックの作品は昨年、集中的に観て、ガレと同じくらい好きになった。Bunkamuraでは最後にラリックの“バッカスの巫女たち”に出会い、気分がプラトー状態で庭園美術館に足を運んだら、ここにもラリックの名品があった。展覧会は予備知識・情報を必要以上にもたないで見ることにしているので、こうした思わぬ作品のコラボレーションに遭遇すると腹の底から喜びがこみ上げてくる。ミューズに感謝。

今回の展覧会は正面入り口の隣にある“小客室”の改修工事が完了したのを機に、アール・デコの館、旧朝香宮邸をじっくり観てもらおうと企画されたもの。建物を公開するのは3年ぶりらしい。1933年に竣工したこの旧朝香宮邸に当時、アール・デコの顔だったアンリ・ラパンとラリックが関わった。装飾家のラパンは大客室、大食堂、小客室などの内装設計や壁画を手がけ、ラリックは右の大客室のシャンデリア、大食堂にあるパイナップルとざくろが描かれた天井灯、正面玄関のガラスレリーフ扉などを制作した。

この美術館へは過去2回来たことがあるが、企画展にでている作品を見るのに夢中で、部屋の内装とか、つくりに目がいってなかった。もちろん、立派な邸宅であることは体いっぱいで感じていたが、シャンデリアなどがラリック作とはつゆ知らなかった。一番感動したのが見栄えのする玄関のガラスレリーフ扉。いつもあったのだろうが、ラリックが頭にないものだから、見過ごしていた。ラリックの提示した4種類のデザインから選ばれたのが翼のある女性像。が、宮邸の玄関に裸婦はふさわしくないので、女性は薄布で覆われたという。

部屋にラリックのガラス作品がいくつか飾ってあった。いずれも名品。1階の“花瓶、大きなダイア”、2階の“フォルモーズ、金魚文”、“バッカスの巫女たち”、“雀”、“香水瓶”。その中で心を揺すぶられたのが、光の角度で色調が変化するオパルセントガラスでつくられた“バッカスの巫女たち”と香水の香りの魅力をつたえるのにぴったりの丸い形と深い青が美しい“香水瓶・真夜中”。

2階の部屋では“ボンボニエール”という小さなキャンディーボックスにはじめてお目にかかった。ヨーロッパでは子供の誕生祝いや結婚式、復活祭などの祝い事のとき、砂糖菓子をこの箱に入れて、卓上に飾る習慣があり、明治以降、天皇家や宮家でも特注のボンボニエールをつくり、贈答品にしたという。精巧に細工された“鶴亀”、“犬張子”などの“慶びの小箱”を時間を忘れてみた。

予想だにしなかったラリックの名品が見れ、ボンボニエールという初ものまであった。大げさにいうほどではないが、ミニエポック的な展覧会になった。

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コメント

こんばんは
近代建築マニアの私には、このアールデコの館は偏愛の場です。今度撮影もOKになったのがうれしい限りです。
こちらの美術館に勤務されている方々はやや年配の上品な方が多く、宮様のお屋敷に仕えるようで、それだけでもわたしにはほんのり幸せな気分になります。

ボンボニエールは時々高島屋の展覧会に出ます。
(皇室関係の)
入り口ラリックの一部に傷がありますが、若様がうっかりキックされたとか…
なんにせよ、すばらしい建物です。

投稿: 遊行七恵 | 2006.07.15 23:03

to 遊行七恵さん
この旧朝香宮邸がアール・デコ建築であることはパンフレットをちらっとみて、
承知はしてたのですが、それほど深くみてませんでした。ルネ・ラリック作の
ガラスレリーフ扉には若様のキックでできた傷があるのですか?七恵さんは
なんでも詳しいですね。面白い逸話を聞きました。

日本にもこんな装飾美あふれるアール・デコの建築があったのに、その前を
すいすい通りすぎていたなんて。なんとも能天気でありました。

投稿: いづつや | 2006.07.16 16:07

いづつやさん、こんばんは
ちょっと前ですが、私も庭園美術館に行ってきましたのでTBさせていただきます。

最初、この美術館に行ったころは今回展示されていた小客室や香水塔もなく、ましてやウィンターガーデンのような洒落た空間も見れませんでした。まだ公開されていないお部屋が一体いくつあるのか?興味はつきません。
全室修復が終わった時、また建物オンリーの展覧会を希望します。

投稿: アイレ | 2006.08.23 00:38

こんばんは 記事を挙げたのでTBいたします。
うまくない写真ばかりなのですが。
今回の東京ツアーはアニメと建築とがメインだったような気がします。

投稿: 遊行七恵 | 2006.08.26 23:44

to アイレさん
プロバイザー変更中のため、返事が大幅に遅れて申し訳ありません。9/16再開
の予定です。

庭園美術館を建物としてじっくりみるのははじめてでしたが、とてもいい気分に
なりました。日本にもこんな素晴らしいアール・デコ建築があったのですね。
ラリックのガラス工芸品もいいのが揃ってます。ちょっと洒落てみたくなったら、
ここへ直行ですね。

投稿: いづつや | 2006.09.02 14:29

to 遊行七恵さん
現在、別のプロバイザーに切り替え中で、返事が大幅に遅れて申し訳あり
ません。9/16に再開の予定です。

またまた、楽しい東京ツアーだったようですね。最近、朝日新聞に庭園美術館
のことが紹介されてました。

投稿: いづつや | 2006.09.02 14:53

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