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2006.07.29

長澤芦雪の白象図

4482回目のプライスコレクション展(東博、8/27まで)は最後のガラスケースがないコーナーからみた。

前回(拙ブログ7/7)じっくりみたので、展示作品のおおよそのイメージは覚えている。でも、はじめてみる絵というのは観ているようで画面全体をとらえる目が弱かったりで、2回鑑賞の効用も結構ある。

絵の表情が光のあて方でいろいろ変わるのをみると感激する。この見せ方は本当に有難い。最初に飾ってある酒井抱一の“佐野渡図屏風”では明るい光が画面にあたると金箔の地から雪が現れる。そして、暗くなるとその雪が消えていく。その隣にある鈴木其一の“柳に白鷺図”はしばらくみていると、白鷺の白い羽がまぶしいくらい輝いてくる。

其一の大きな屏風、“群鶴図”も気分が高揚する。これはワシントンのフリーア美術館にある尾形光琳の作品を模写したもの。光琳との違いは左右の流水文の描き方と鶴の羽の色。其一が腹側と背中の羽を黒とねずみ色ではっきり分けているのに対し、光琳は尾っぽの白でまるく輪郭線をとった部分は同じなのに黒を腹側の羽だけでなく、背中の三分の一くらいまで使っている。好みとしては其一の鶴のほうがいい。ねずみ色の羽のところに光があたると金地に美しく映える。不思議なのは尾っぽの白は光沢を増すのに、首のところの白はそれほどでもないこと。これはなぜ?

長澤芦雪の巨大な黒牛と白象をまた楽しんだ。牛の顎とか鼻の上には髭がある。象も牛も背中が画面からはみだしている。こうした意表をつく構図はどのようにして生まれるのだろう?展覧会に登場する作品の中には必ず、普通の頭では思いつかない視点で対象を捉えたのが1,2点ある。こういう経験を何回かすると、ほかに絵師にはない奇抜な構成力が芦雪の作品の大きな魅力となって体のなかに入っていく。もうひとつ芦雪の絵で惹くつけられるのがかわいらしさ。師匠応挙の“かわいい”描写をちゃんと受け継いでいる。黒い牛の腹のところにいる子犬のかわいいこと。

芦雪は子犬のほか猿も描いているが、かわいい子供を描いた絵が忘れられない。それは04年、京都の金閣寺でみた右の“白象遊童図”。京都市観光協会は寺院とタイアップして毎年、非公開文化財の特別公開を実施しており、バスツアーで回った金閣寺方丈にこの絵があった。子供たちが白象の頭や鼻にのったり、腹から滑り台のように下に降りたりして、楽しく遊んでいる。右のほうにいる子供は象にのる順番を待っているところ。

南紀串本町の無量寺にある“虎図”(拙ブログ05/2/13)も観てると肩の力がぬけてきて、ほんわかする絵。この猫のような虎と較べると、プライス氏が所蔵する芦雪の虎(猛虎図)は頭がやけに小さいが、かなり怖い。芦雪の描く虎はかわいい虎だけではなかった。

芦雪に興味がある方に参考情報を。現在、パウル・クレー展を行っている川村記念美術館の常設展示に屏風絵、“牧童図”が出ている。牛の背中に乗っている童や木のまわりで遊ぶ童士たちのユーモラスな表情に心が和む。

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コメント

こんにちは、今回は『親と子のギャラリー』楽しまれましたか?
昨日京博の『美のかけはし』見てきましたが(まだ記事にはしてませんが)ゾウさんが町を行く洛中洛外図がありました。
1611年頃の作品でした。びっくりしました。
芦雪も若冲も洛中洛外図の絵師も、みんなゾウさんが好きなのですね♪無論私たちも。

京都近代美でも光の展示があるか訊こうと思います。来月は富本憲吉展なのです。

投稿: 遊行七恵 | 2006.07.30 13:31

to 遊行七恵さん
PCトラブルのため、返事が大幅に遅れて申し訳ありません。七恵さんに教
えてもらった“親と子のギャラリー”を先に見て、2階に上がりました。
吉村孝敬の“唐獅子図”が可愛かったです。これを見逃すと悔いが残ると
ころでした。有難うございました。

京博の“美のかけはし展”は良さそうですね。象が登場する洛中洛外図
ですか。珍しいですね。プライスコレクション展が京近美で開催されるの
は異例のことですね。その前に富本憲吉展ですから張り切ってますね。
富本は茨城県陶芸美術館を予定してます。

投稿: いづつや | 2006.08.06 16:05

こんばんは~
暑くて眠れないので、ネットサーフィンしています。
そんな中でいづつやさんのこのページの写真を拝見して
おおっ!プライスコレクションの黒白図の象と
川村の牧童図をミックスした絵ではないかと思い、
本文を拝見しましたら、さすがはいづつやさん、
きちんと双方押さえてありましたね。ははぁ~恐れ入りました。
金閣寺の白象遊童図、チェックしておきます。

投稿: 一村雨 | 2006.08.08 02:01

to 一村雨さん
金閣寺にある芦雪の絵が制作された時期はわかりませんが、
プライス氏所蔵の“黒白図”の別ヴァージョンであることはみれば
わかります。

中国画に童を描いたいい絵がありますが、日本画ではここに出て
くる子供たちが一番かわいいかなと思ってます。左のほうが欠け
ていますが、ここにいるのも含めて全部で26人います。本当に
賑やかな絵です。

投稿: いづつや | 2006.08.08 18:16

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