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2006.07.24

土田麦僊の島の女

443東近美の平常展はおおよそ2ヶ月毎に作品が入れ替わる。

洋画はこの間、ずっと飾られているが、近代日本画は出っ放しもあるが、一部の作品は前期だけ、あるいは後期だけしか展示されない。

観賞の軸足は日本画のほうにあるので、いつも2回出向く。で、一年のスパンでみるとここへは毎月行っていることになる。都内の美術館でこれほど頻繁に訪問するのは東近美と東博だけ。これがもう2年も続いている。ここの平常展がいいのは名画を静かにゆったりみられること。展示される作品の質は折り紙つき。

今回の展示(7/30まで)で魅了された作品をあげると。今村紫紅の“時宗”、“後三年絵巻模写”、速水御舟の“写生図巻”、小倉遊亀の“浴女その二”、鏑木清方の“明治風俗12ヶ月・5月~8月”(現在は7、8月)、小林古径の“唐蜀黍”(とうもろこし)、平福百穂の“荒磯”、右の土田麦僊の“島の女”、棟方志功の“柳緑華紅頌”、東山魁夷の“残照”、山口蓬春の“榻上の花”など。

はじめての作品で画家の高い画技にびっくりさせられたのが今村紫紅と速水御舟。“後三年絵巻”の原画は東博でみたことがあるが、女の首がゴロンと転がっていたり、女たちが城の門めざして必死に逃げるところなど凄惨で緊迫する場面を見事に模写している。かれいやはぜなどの魚や黄色の蛾や蝉を精緻に描写した御舟の写生帖をみていると、円山応挙の写生画が目の前をよぎった。いつみても思うことだが、御舟の技はやはり群を抜いている。

ひさしぶりに見たのが右の“島の女”(部分)。名古屋で97年に開催された“土田麦僊展”以来のご対面である。これは麦僊が八丈島を旅行したときに見た現地の風景を絵にしたもの。髪を櫛ですく上半身裸の女の顔がとても気に入っている。両目の間が標準よりは広くあいた垂れ目と小さなおちょぼ口がなんとも可愛い。人物や木の葉や枝の輪郭線が淡い墨線でゆったり描かれた平明な画面からは、タヒチの女を描いたゴーギャンの絵のように南洋の雰囲気が伝わってくる。

のびのびとして開放的なイメージは淡い色調、簡潔な造形とともに、壁のほうをみている後ろ向きの女と手前の女、2本の木をそれぞれ対角に配して表現された奥行き感や空間のとりかたから生まれている。対象の配置や複数の視点の重ねあわせにより、空間の広がりをつくっていくのが日本画の一番の特徴である。

洋画では、お気に入りの香月泰男の“水鏡”、安井曽太郎の“奥入瀬の渓流”、瑛九の“れいめい”、松本竣介の“Y市の橋”、岡本太郎の“燃える人”があった。これらはもう何回も見ているが、飽きるということがない。それどころか、また見入ってしまう。名画の証である。

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コメント

東美は訊ねたい所の一つでしたが、今回どうにも時間が取れず残念でした。
閉館時間ごろ前を通ったのが更に悔しい思いです。

投稿: seedsbook | 2006.07.25 00:08

こんにちは。はじめまして。
少し前から、楽しみに読ませていただいております。
麦僊の「島の女」。大らかで素敵な絵ですね。
近代美術館ではあのコーナーに展示される日本画が
いちばん好きです。
今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: 一村雨 | 2006.07.25 07:53

こんにちは
先日奈良の松伯に名古屋の名都美術館の名品が来たので見てきました。
清方の妖艶な女がいたり、古径・安彦・青邨らのみごとな花々が壁に咲いておりました。

麦僊の女たちは丸顔でぽちゃっとしていて、彼の好みが見えるような気がします。この島の女や湯女や妓生などなど。
麦僊の女たちには健全な官能性があるような気がします。
売り買いされる女でもなんとなく丈夫そうな感じが。

投稿: 遊行七恵 | 2006.07.25 10:50

to seedsbookさん
東近美の平常展をみるのは楽しいです。日本画は毎回違った絵が登場
するのですが、洋画は定番の名画が決まってでてきます。岸田劉生の“麗子
肖像”や安井曽太郎の“金蓉”とか。で、ここの図録に載ってる作品はもう
だいだい見終わりました。

ところが、日本画は次から次と新しいのが出てくるのです。一体何点ここは
所蔵してるのか見当がつきません。図録にある名画はほとんど済みマークが
ついてるのですが、これ以外にも魅せられる作品がいっぱいでてくるので、
いつも大きな満足が得られます。

seedsbookさんは今回残念ながら訪問されなかったようですが、お気に入
りの作品になるかわかりませんが、ここで定期的に取り上げますので楽しん
でください。東近美のことならお任せください。

投稿: いづつや | 2006.07.25 17:40

to 一村雨さん
はじめまして。書き込み有難うございます。“島の女”のあのまるぽちゃの
顔をみるとほっとします。麦僊が描く女性で一番親近感を覚えるのがこの
島の女です。垂れ目でアンパンのような顔にほんわかなります。
これからも宜しくお願いします。

投稿: いづつや | 2006.07.25 17:55

to 遊行七恵さん
名都美にはいい絵があるそうですね。名古屋にいるとき、一度大観展を観
に行ったことがあります。松柏美に出品されたのですか。また、読まさ
せてもらいます。

東近美は麦僊の代表作を結構持ってますね。前回の“舞妓林泉図”に続き、
今回は“島の女”がでました。それと“湯女”。この湯女は見ごたえがあ
りますね。七恵さんがおっしゃるようにこの女性がもっている官能性はこち
らが一瞬緊張するようなものでなく、顔がぽっと赤くなるような健康的な
ものですね。久しぶりにみた“島の女”に顔がゆるみました。

投稿: いづつや | 2006.07.25 18:18

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