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2006.07.10

マンダラ展と村上隆

431結構な頻度で出かけている展覧会の大半は期待通りの満足が得られているが、たまには下調べ不足で失敗するケースもある。

埼玉県立近代美術館で7/8から開幕した“マンダラ展”(9/24まで)は、砂絵マンダラの実演があるというので期待していた。で、僧侶による実演がはじまる午後1時にあわせて、時間調整をして入館し、展示されている絵画や彫刻をさらっとみて、さあ、お目当ての砂絵をみようとスタンバっていた。

だが、4,5人の僧侶はなかなか描きはじめない。定規とコンパスで下描きの線や円弧を引いてるだけ。どうやらこの砂絵マンダラの制作過程を全く勘違いしていた。TVでマンダラ図が鮮やかな赤や緑で形づくられていくのをみて、下絵を描かず、いきなりどんどん描いていくものと勝手に想像してたのが間違いのもと。

初日は下絵づくりで次の日から彩色していくようだ。よくみると、材料の色のついた砂はどこにもおいてない。係りの人に確認しなかったが、2日目から彩色にはいり、7/16に完成するのだろう。僧侶のまわりを取り囲んで今か々と制作が始まるのを待っていた大勢の人も状況がつかめたようで、ぽつぽつとその場から消えていった。

砂絵は観れなかったので、展示物からなにか収穫がないかともう一度みた。すると、面白いことに村上隆が“芸術起業論”で論述していた興味深い考えを裏付ける仏画に出会った。それは右の“法界語自在文殊図”(部分)。この展覧会は2部構成で最初にマンダラ世界に住む仏や神をグループ分けして、絵や彫刻でみせ、次のコーナーでネパール、チベットで描かれたマンダラ(=仏たちの住む宮殿)絵を展示している。この仏画は20世紀、ネパールで制作されたもの。この絵のどこに注目したかというと、真ん中にいる文殊菩薩の複数の顔と8本の腕。

村上隆の作品、沢山の目をもつかわいいキャラクター“メメクラゲ”がどういう風にして誕生したかが本のなかにでてくる。これがなかなか面白い。村上は水木しげるの漫画“ゲゲゲの鬼太郎”の大ファンで、とくに体中に目を持つ“百目”という妖怪キャラクターがお気に入り。家に百目ダンボールの紙に夜行塗料のついた置き物があり、複数の目が自分を睨み続けているような気がしたという体験から、村上は“多数の目を並べると人を見つめ続ける圧迫感を与えることが出来る。西洋美術の技法は三次元の世界を二次元に表現するという錯覚を生み出しているが、多くの目も錯覚を生み出せると”気づく。で、この多数の目でスーパーフラット(=超二次元的)の概念を表現したのが“メメクラゲ”。

この話しを右の絵と関連づけてみると、複数の顔や胴体からでた何本もの腕がでた大小の文殊菩薩が多数の目になっている。画面は二次元だが、たしかに遠近感があり、大きな空間のなかに自分がおり、見つめられているように錯覚する。これまで、村上隆がいうような視点でこうした仏画を見たことはなかったが、目からうろこが落ちた。

砂絵が見れず惜しいことをしたが、千手観音や文殊菩薩の絵と村上隆のスーパーフラットが結びつくという予想もしなかった鑑賞体験となった。なお、砂絵の公開制作は7/16(日)まで(10時~17時半)行われる。ご参考までに。

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コメント

こんばんは。
砂曼荼羅の件は残念でしたね(>ω<)
ちなみに同様のイベントが7/22-30の期間、文京区の護国寺でも行われます(http://www.gokokuji.or.jp/)。仏画の展示のほか、本邦初のバター彫刻なるものの公開制作もあるそうです。たぶんこちらも混雑すると思いますが。。。
埼玉のほうには月曜日に行ってきます♪

投稿: gem | 2006.07.17 00:20

リンクがお目汚しですみません。。
改行すればいいのかな??
砂曼荼羅イベント詳細↓
http://www.gokokuji.or.jp/

投稿: gem | 2006.07.17 00:22

to gemさん
曼荼羅絵の実演一度みたいと思ってるのですが、情報不足で
失敗しました。2日目に行くと見れたのですが。ご案内有難
うございます。日程調整してみます。

投稿: いづつや | 2006.07.17 13:11

いづつやさん

あなたのブログを楽しみにしているファンの一人です。

村上さんの作品についてのコメント、興味深いです。

彼の他の作品、HIROPONとMy Lonesome Cowboyについての創作秘話にもコメントしていただければ、嬉しいのですが。

女の子(黒髪=日本人?)が遊んでいる母乳の縄で将来育てる子供も、男の子(金髪=西洋人?)が投げ縄のように振り回している精液が受精して誕生する子供も、アメリカという父親の子供である日本の将来とも思えるんですが。

スーパーフラットの申し子なんでしょうか?

投稿: 鈴木純子 | 2010.10.14 09:55

to 鈴木純子さん
はじめまして。書き込みありがとうござ
います。

村上隆の大規模な回顧展が日本で開かれる
のを心待ちにしているのですが、いまだ情報
が入ってきません。今、村上はどんな作品を
つくっているのでしょうか?

My Lonesome Cowboyの制作に関することは
‘芸術起業論’にはでてきませんが、思い当
たりところがあります。

浮世絵師、歌川国芳の戯画に‘狸の川がり’&
‘狸の夕立’というのがあります。八畳敷きと
呼ばれる一物で魚をとったり、夕立に困ってい
る女性たちに自分の一物を貸してやっている絵
で、おもわず口元がゆるむ楽しい絵です。

村上隆は東芸大の日本画の出身ですからこの絵
にヒントを得て、My Lonesome Cowboywをつく
ったのではないかと勝手に想像してます。
Hiroponもこの類似品ですね。実際はどうでしょ
うか?

こういうフィギュアをつくったりや‘ゲゲゲの鬼太郎’
に登場するお化けに似せた平板化キャラクターを
増殖させ、スーパーフラットというコンセプトを表現
するのはまったく上手いやり方だと思います。

新作も入った作品にドドっと遭遇したいです。

投稿: いづつや | 2010.10.14 14:14

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