« 民藝運動の巨匠展 | トップページ | 書の国宝 墨蹟展 »

2006.07.20

棟方志功の道標の柵

439特定の芸術家にあまり偏らないで、いろいろなタイプの画家、陶芸家、彫刻家、版画家をとりあげようと心がけているのだが、好きな作家はどうしても回数が多くなる。

お気に入りの板画家、棟方志功の作品は鎌倉にある棟方板画館を定期的に訪問している度、紹介することにしている。不思議なものでこちらの気持ちが作家に集中していると向こうからも近づいてきてくれる。

棟方の場合、今年は5月に横浜そごうで“棟方志功と柳宗悦展”といういい回顧展があった。これはブログするタイミングを失したが、現在、日本民藝館で行われている特別展にでている絵については昨日ふれた。

7/1からはじまった棟方板画館の06年後期展(12/17まで)にもいい絵があった。今回のテーマは“清風妙韻ー心を描く風景画”。代表作のひとつ、“富嶽頌”は過去数回みた。これは詩人、草野心平とコラボした詩画集“富士山”として出版された。棟方の感性がとらえた様々な富士の情景のなかで、はじめてみたときから脳裏に焼きついているのが“赤富士”。“嗚呼ーあの絵か!”と同じ感想をもつ方も多いかもしれない。

風景画では“東海道五十三次板画柵”と同様、日本人の琴線にふれるものがある。この“富嶽頌”と一緒にでているのが“東海道五十三次”の別ヴァージョン“追開棟方板画東海道妙黛屏風”。“東海道五十三次”は彩色の縦画と墨の横画が交互にでてくる構成になっているが、この絵は縦も横も墨一色。このなかの“御油”や“大扉”がいい感じ。

今回のお気に入りは肉筆画2点と彩色の版画1点。棟方は墨や絵の具で描く肉筆画を“倭画”と呼んでいる。この倭画について、横浜そごうの回顧展に柳宗悦の意外なコメントがでていた。柳はこう言う。“棟方の倭画はとても出来不出来がひどいのです。悪い方が多い位ですが、よいものになると又神品です”。これまで見た肉筆画はいい印象のほうが多かったので“へえー、不出来なのもあるのか!”とそこにでている倭画をじっくりみると、流石、柳の眼力は鋭く、確かにぱっとしないのもあった。ここにある“御鷹図屏風”と大作“清風妙韻図”は神品とまではいかないが、上位にはいる出来栄えである。

右は一番の収穫であった彩色板画、“道標の柵”。これは弘前市民会館大ホールの緞帳の原画らしい。棟方の素晴らしい色彩感覚が存分に発揮された名作である。カラリスト好きなのでこういう絵に会うと天にも昇る気持ちになる。4人の女性の体は白の顔と足以外は墨一色。背景は右から赤、緑、橙色、紫。この背景の色と花で弘前の四季を表している。右の桜の春から夏、秋、冬と続く。

棟方が女性を描くときは一つのパターンがあり、普通に立っている女性と逆立ちをしているように頭が下にくる女性を交互に配置する。最初は頭が下にある女性をつかまえるのに苦労するが、目が慣れてくると“ああー、ここにいるいる”と人物の輪郭がわかってくる。また、手が相対的に大きく、八つ手の葉っぱのように描かれているのも特徴のひとつ。弘前城の別名、“鷹揚城”にちなみ、真ん中には鷹が2羽いる。鮮やかな色彩の輝き、躍動する女性像に惹きつけられ、しばし眺めていた。

ここに来るといつもいい気分になる。次回の展示は来年になるが、また期待して出かけよう。

        ■■■■■棟方志功の展覧会情報■■■■■
10/5~17   幻の棟方志功展(大原美術館所蔵)   大丸東京店

|

« 民藝運動の巨匠展 | トップページ | 書の国宝 墨蹟展 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 棟方志功の道標の柵:

« 民藝運動の巨匠展 | トップページ | 書の国宝 墨蹟展 »