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2006.07.18

三輪壽雪展

437今年開かれる陶芸展では一番期待していた萩焼の人間国宝、三輪壽雪の回顧展(東近美・工芸館、7/15~
9/24)を観た。

初日から出足がいい。流石、11代三輪休雪の“鬼萩茶碗”の人気は高い。

壽雪は現在96歳。03年、“休雪”号を長男に譲って、自ら“壽雪”と号してライフワークである“鬼萩”の新たな形を求めて、日々作陶活動を続けている。今回は初期の頃から06年に焼かれた茶碗、水差、花入、角皿などが180点あまりでている。タイトルの“萩焼の造形美 三輪壽雪の世界”がぴったりあてはまる大回顧展である。

11代休雪の代名詞となった“鬼萩”が生まれたのは20年前、壽雪75歳のころである。毛利家のために茶道具をつくる御用窯としてはじまり、300年以上の伝統をもつ三輪家の伝統を受け継ぎながら、休雪が独自の形を表現しようとしてたどりついたのが“鬼萩”。鬼萩は砂や小石を混ぜた粗い土でつくる萩焼のこと。繊細優美なものより荒削りでも力強いものが好きだった休雪にとって、この鬼萩が自分の内面を映しだせる形だったのである。両足で踏みながらつくる土づくりや水挽きでは、砂が混じっているので足の裏や手に血がにじむらしい。

白の釉薬は15歳年上の10代休雪(隠居の号、休和)が藁の灰と長石の粉を使い、開発した“休雪白”をさらに改良したもの。兄がつくった雪の柔らかさをだした白を11代は鬼萩のために奥行きのでる白にした。昔からこの縮れを起こした分厚い白をみると綿雪を連想すると同時に、小さい頃駄菓子屋にあった白砂糖が表面にもっこりついたビスケットを思い出す。鬼萩茶碗のもう一つの特徴は大きく十文字に切り込まれた割高台。この堂々とした高台が茶碗の形をより力強くみせている。

今回は20年の間に制作した鬼萩茶碗の代表作の大半がでているので、鬼萩の色や造形の色々なヴァリエーションを楽しめる。色では、雪のように純白のもの、縮れがなく、貫入が入った白一色のもの、ところどころに釉薬がかかってないむき出しの土があり、それが表現力をもっているもの、白い鬼萩が窯変でうす桃色やうす紫に染まったものなど。右の“鬼萩割高台茶碗”は今年焼かれた最新作。野趣のなかに凛とした美しさが感じられる茶碗である。縮れた柔らかい白とその間からみえる鉄地とのコントラストが見事。

今年制作された茶碗がこれを含めて7点ある。東近美の前に寄った日本橋三越の美術画廊にも06年作の茶碗が20点、水差が2点展示してあった(7/11~17)。最近のものは、高台、茶碗全体が大きくなっている。鬼萩の新しい形や色をみていると、三輪壽雪はもう自在に創作している感じ。好きな松尾芭蕉の言葉がある。
“格に入りて出ずば即ち狭し 
 格に入らざれば邪の路に入る 
 格に入りて格を出れば自在を得し”

現在の壽雪はまさに“自在を得し”の域に達している。偉大な陶芸家である。

なお、この展覧会は東近美のあと次の美術館を巡回する。
・山口県立美術館・浦上記念館(萩市):10/7~11/26
・福岡三越(福岡市):07/1/2~1/14
・松阪屋美術館(名古屋市):2/7~2/18
・茨城県陶芸美術館(笠間市):4/21~6/24

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コメント

写真の器、素晴らしいですね。
なんともこのマットで白い肌と、模様のダイナミックさ、高台の面白さが好い。
手に取ってみたい誘惑に駆られますね。

投稿: seedsbook | 2006.07.19 18:15

to seedsbookさん
体調は100%回復されましたでしょうか?日本での個展は大成功だった
ようで、とても喜んでおります。seedsbookさんの表現方法と私の文化記号
もコンセプトは似ているような気がしてます。ブログで花の写真が出てき
たりする意味がよくわかりました。ハッピーな響き合いが生まれることを
願ってます。

三輪壽雪は現在96歳です。まだ、現役ですから凄いです。今回の作品を
見てますと、作家もここまでくるともう神業に近くなります。まさに“自在を
得し”です。

初日、隣の方は壽雪の茶碗でお手前にあずかり大変感激していました。
会期中の土・日曜、祝日は午後2~4時30分まで壽雪の茶碗でお茶をいた
だけるのです。東近美も粋なことをやります。

投稿: いづつや | 2006.07.20 01:00

今日チラシを入手、今週末にも行く予定です。
白の味わいがなんともいえないようですねー。
工芸館はこれから所蔵作品展示ではなく企画展示が続きますね、面白い展覧会を期待します。

投稿: oki | 2006.07.20 22:40

to okiさん
絵画とはちがう光沢のある色が味わえるのが陶磁器の魅力ですね。
そして、形。色は絵画で、形は彫刻や焼き物でという楽しみ方を
しています。これは見ごたえのある大回顧展です。

投稿: いづつや | 2006.07.21 14:04

土曜に行ってきました。
展示カタログのインタビューに自分の茶碗は茶が飲めるような代物ではないとありますね、観賞用の茶碗。
民藝館の「用の美」とは対極的なところにある茶碗ですね。
いづつやさんは民藝の思想とこの人の茶碗とどちらの思想がお好みでしょうか?

投稿: oki | 2006.07.24 13:36

to okiさん
三輪壽雪は職人というより作家ですね。萩焼でも三輪家は自由闊達な作陶
が特徴で、壽雪の息子3人も現代アートのような作品をつくってます。

陶器はもともとは日常生活で使うものですが、その中にも美があるといった
柳宗悦の民藝の思想はまさに慧眼ですね。一方で、陶芸はこれを観賞用
作品としてつくりたいという作家の創作活動を刺激します。私は作品だけを
みていますので、濱田、河井、リーチら民藝派の作品にも、壽雪の“鬼萩”
にも魅せられてます。

投稿: いづつや | 2006.07.24 14:40

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