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2006.06.26

町田市立博物館の大津絵

254町田市立博物館では現在、“大津絵と戯画錦絵展”(7/2まで)を開催中(入館無料)。

大津絵があるのは日本民藝館だけかと思っていたが、ここも46点を所蔵している。大津絵と漫画“のらくら”の作者、田河水泡(1899~1989)から寄贈された幕末から明治にかけての戯画・錦絵を3年に一度公開しているという。民藝館で味をしめたユーモラスで親しみやすい大津絵がみられるなら、これはもう駆けつけるしかない。

前回あった“河井寛次郎展”で驚いたが、この博物館は嬉しいことに無料なのである。板橋区立美も所蔵品を展示するときはお金をとらない。大津絵は昨年、民藝館ではじめてまとまった形でみた。このとき作られた図録(東方出版、05年2月)をときおりニヤニヤしながらみている。6/25までやってた70周年記念展に代表的な画題のものがいくつか展示してあったので、ここの作品にすっと入っていけた。

画題は4つのグループに分けられる。“神仏”、“世俗”、“諷刺”、“花鳥その他”。17世紀の中頃誕生した大津絵は最初は仏画だった。これは鑑賞用ではなく江戸初期の一般の人々が土着の講や自宅で祀るための礼拝用である。“阿弥陀三尊来迎”は掛け軸としては粗末な仏画だが、仏の描写はなかなか複雑。光輪や衣の輪郭を濃い墨で太く勢いよく描いたり、雲を渦巻き文で表すなど手がこんでいる。この絵を描いたのは大津と山科を結ぶ東海道筋に店を構えていた名もなき絵師たち。街道を行き来する旅人へ売る土産物として、せっせと手書きで描いた。

大津絵の販売が軌道にのってくると画題も仏画から皆が喜びそうな世俗物、諷刺物へとひろがってくる。画題の好みも十人十色といいたいところだが、日本は“十人一色の国”(拙ブログ05/1/17)。売れ筋の絵に需要が集中する。人気NO1の絵が右の“鬼の念仏”。その次が“藤娘”。鬼の絵はこの“念仏”のほかに“鬼の三味線”、“鬼の行水”、“節分”などがある。“鬼の念仏”に描かれた布施を求めて歩く鬼は怖くなく、左手に奉加帳、背中に雨傘を担う姿に親しみを覚える。この絵にはポーズはほとんど同じだが、足の爪が伸びてるものとか歯の並びが少し違うとかいろいろなヴァリエーションがある。

“藤娘”は民藝館のより着物の柄、色の鮮やかさ、、藤が下へ垂れ下がる様子がずっといい。ユーモラスな絵の極め付きは“雷と太鼓”。大きな目をした雷が黒雲から身を乗り出して、波間に落とした太鼓を紐でぶらさげた錨で拾い上げようとしている。なんとも愛嬌のある雷である。面白くてたまらない。期待値以上のいい大津絵だった。町田市立博物館に感謝。

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コメント

大津絵は関西でもなかなか良いものは見られる機会が少ないです。
民藝館のは見ましたが、町田博物館にあったのですね。
今回は日程的に見られませんが、また機会があれば見に行きます。
特に、初期の大津絵はなかなか数が少ないです。

投稿: 好日 | 2006.06.27 01:43

to 好日さん
はじめまして。書き込み有難うございます。町田市立博物館には自宅から
クルマで40分くらいで着きます。ここに思ってもみなかった大津絵があり
ました。

全部が全部、質のいい大津絵とはいえませんが、中には“藤娘”のよう
に民藝館のより数段いいのがありました。大津絵はまだ展覧会で4,5回
しかみたことがありませんが、すこしずつ目が慣れてきました。また、情報が
ありましたら教えてください。これからも宜しくお願いします。

投稿: いづつや | 2006.06.27 23:51

行こうかと思ったらもう終わりなのですね、大津絵の世界。
仕方ないのでいまから町田の版画美術館で明治の浮世絵観て来ます。
町田市立博物館は大きな建物ではないですが全国美術館のカタログを無料で閲覧できますし、版画美術館もシアターと常設は無料ですね、町田市民が羨ましい。
僕のところからは小田急一本でいけますが、いづつやさん、交通の便はいかがですか?

投稿: oki | 2006.07.04 11:57

to okiさん
町田市立博物館は無料でいい作品を見せてくれますのでお気に
入りです。今回の大津絵も期待値以上のものがあり、またこ
この評価が上がりました。家からはクルマで40分くらいで着
きますから、気楽に出かけられます。

投稿: いづつや | 2006.07.04 17:22

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