« 菊池契月の少女 | トップページ | 丸木位里・俊の原爆の図 »

2006.06.10

石本正の裸婦

402今、ある画家の絵について、後悔の念が強くなっている。画家の名前は石本正。

“裸婦の石本”として知られるこの画家は今年86歳だが、まだ現役の日本画家としてバリバリ作品を制作している。

高島屋横浜店の美術画廊では最新作30点あまりを展示した“思い遥かにー石本正展”を先月の24日から30日までやっていた(入場無料)。この展覧会は石本正が生まれた島根県三隅町(現在浜田市)にある石正美術館の開館5周年を兼ねているので、作品は最後、ここで展示される(7/1~10/9)。

今回の絵をみて、広島に住んでいたとき、三隅町にある美術館を訪問しておけばよかったとつくづく悔やまれる。石本正の舞妓を描いた絵を昔、山種美術館でみて、頭のどこかではひっかかっていた画家だが、同じ顔や同じポーズをした舞妓、着衣の半裸婦像、裸婦を何点もみなくてもいいかなという思いがあって、駆り立てるものが涌いてこなかった。が、画家の絵を本当に理解するためには、やはりある程度の数を見なくてはダメだということをあらためて認識した。いつもいい絵画に出会えるわけではないが、気になる画家がいればそれは自分の感性に合ってることの予兆かもしれないので、思い切って時間をつくるべきだと。今回はそんな反省をさせられるいい展覧会だった。

これまで石本正の絵は両手くらいしか観てないが、それでも過去の作品とちょっと違うなという点が一、二あった。一つは立ち姿の半裸婦像の背が前より随分伸びたこと。8頭身くらいある。もう一つは若い女性の肌の陰影が濃くなり黒ずんできたこと。ウッドワン美術館でみた91年頃の作品、“白く咲く”では白い衣装を半分脱いだ女性の肌は官能的で、妖艶な裸婦というイメージが強かった。これと較べると最新作は背景が濃い茶色になり、肉付けの彩色が濃くなっているため、女性の表情が硬く、憂いの気分が感じられる。

今回、強い衝撃を受けた作品があった。右の“幡竜湖乙女の眠り”(部分)、“正座する幡竜湖娘”、“女媧幡竜湖遊泳”の3点。益田市の近くに幡竜湖というのがあり、この人魚のような乙女はこの湖から想を得たものらしい。人魚は目を閉じたままで、黒と金で装飾的に表現された頭の髪と上半身を水面に出すひねったポーズが艶かしい。指先や髪のまわりには赤い魚が泳ぎまわり、ちょっと危うい神秘的な雰囲気が漂っている。絵全体からうける印象が象徴派の画家、デルヴィルの作品、“死せるオルフェウス”と似ている。こんな絵に出くわすとは夢にも思わなかった。石本正の裸婦まだまだ進化していく。

|

« 菊池契月の少女 | トップページ | 丸木位里・俊の原爆の図 »

コメント

おはようございます。
石本正、すごく好きです。『ゆふ』という裸婦シリーズもいいです。
石本の裸婦には含羞と同時に高揚が潜み、視線の向こうで誘惑されてしまいます。
膚の湿度、触感、萌え方・・・同性ですらときめくような何かがあります。
一方で、女媧など中国神話のキャラには世紀末的な魅力があり、たまらなく好きです。
又造さんのシャープな裸婦も好きですが、石本の丸い胸の女たちにときめきます。

投稿: 遊行七恵 | 2006.06.11 10:40

to 遊行七恵さん
広島にいた頃、温泉旅行などで浜田から益田に向かって国道9号線を走っ
てるとき、石正美術館の看板をよく目にしたのですが、いつも素通りして
ました。今から思うと訪問しとけばよかったです。

石本正は精力的に裸婦の絵を描き、寄贈し続けているため、所蔵作品は
現在では1300点(本画200点、素描1100点)をこえてるそうです。
HPに魅力的な作品が紹介されてます。画家との遭遇はなかなかうまくいか
ないものですね。

投稿: いづつや | 2006.06.11 17:31

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 石本正の裸婦:

« 菊池契月の少女 | トップページ | 丸木位里・俊の原爆の図 »